186 / 192
第186話
しおりを挟む待機室で待つ事、数十分。兵士の一人がやって来て、俺とニャトルさんが呼び出されたので俺達は部屋を出て会場に向かった。
「クリフ君、お互いに全力を出そうにゃ」
「はい。頑張りましょうね。それと、さっきまで不通に喋ってたのに、何で今更語尾に〝にゃ〟を付けてんるんですか?」
「気分だにゃ」
ニャトルさんは笑顔でそう言うと、対角の入り口へと向かった。それから、数分後、会場から司会の人の入場の合図があったので会場へと入場した俺は、歩いて真ん中まで移動した。
「それでは、これよりトーナメント戦第一試合、クリフ選手とニャトル選手の試合を始めたいと思います!」
司会の声が会場全体に響き渡ると、次の瞬間ドラムの音が鳴り試合が始まった。試合が始まった瞬間、ニャトルさんは獣人族の中でも素質がある者にしか出来ない獣の力を呼び覚ます【獣化】を使用し、身体能力を強化して俺へと攻撃を仕掛けてきた。
俺は咄嗟に【風魔法】を発動し、ニャトルさんを吹き飛ばし、上空へと逃げた俺は会場に向かって無数の魔法を連射した。
「なッ! 魔法を全部、避けてる!?」
言葉通り、無数の魔法が降り注いでいる会場をニャトルさんはその身体能力を活かして全てを回避。そして、俺が驚いたことで生じた一瞬に油断に凄まじい跳躍で俺の元へ飛んできたニャトルさんは、かかと落としを俺に食らわせ、衝撃の余り地面に叩きつけられた。
「ガハッ」
「にゃは、クリフ君。つーかまえたっ」
ニャトラさんは地面に叩きつけた俺の腕と足を取り、体を使って起き上がらせない様にした。俺は、必死にそこから脱出しようとしたが、力では全く抜け出す事が出来ないと判断した俺は、転移魔法で離れた場所へと移動した。
「にゃ? あの体制から転移魔法を使うなんて、クリフ君。本当に魔法が得意なんだね」
「ええ、近くに魔法の腕が最強クラスの人が居たので参考に色々としていましたのでね」
俺はそう言って、会場の地面を【土魔法】で弄り四方からニャトラさんへ攻撃を仕掛けた。しかし、それらを軽く避けたニャトラさんに向かって【氷魔法】で作った剣で詰め寄った。
「ほほう。ルードが言ってた通り、剣術もそこそこ上手く扱うんだにゃ」
「えぇ、こちらも近くに良い師がいましたのでね。両方を幼少期から鍛えられてきましたからねッ」
魔法と剣術、二つの力でニャトラさんへと攻撃を仕掛けて行く俺にニャトラさんは段々動きが鈍くなっていき、一瞬の隙を作り出す事が出来た俺は、すかさずそこに攻撃を当ててニャトラに膝をつかせることが出来た。
「にゃは~、今のは効いたよ。それに、そろそろ【獣化】の効果が切れちゃうにゃ、今回は私の負けだにゃ」
ニャトラさんは膝を付きながら負けの宣言をすると、司会の人が大きな声で「第一試合、勝者はクリフ選手です!」と言うと大きな歓声と拍手が起こった。
俺はそれに応えるように手を振って、ニャトルさんと一緒に会場を去って行った。そして、ニャトルさんは負けたのでここから先は観客席で見ておくねと言って別れ、俺はガルドさん達が待つ待合室へと戻る事にした。
「おめでとうクリフ君」
「いい試合だったな、クリフ」
部屋に戻って来ると、姉さんが抱き着き、ガルドさんはニコっと笑ってお祝いの言葉を掛けてくれた。その後ろから、ルードさんが近づいてきて「よく、ニャトル相手に魔法で押しきれたな、彼奴は四天王の中でも魔法の察知には長けてる者だったんだぞ」と言われた。
「ええ、ですのであの戦闘の最中は察知されても良いくらいに大量の魔法を同時に発動させてたんですよ。見えてた魔法以上にで」
「……成程、それでニャトルの動きを鈍らせたのか、凄い発想だな、それ少し間違えればクリフが魔力切れで倒れる事になってたんじゃないのか?」
「そうですね。まあ、でもそんな簡単に倒れる程、魔力は少なくないですから安心してください」
俺がそう言うと、ルードさんは「あれだけ使っておいて、まだ余裕あるって凄いな」とあきれた様子で言った。
36
お気に入りに追加
6,401
あなたにおすすめの小説

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる