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第181話
しおりを挟む大会までの三日間、自由に過ごす事にしている俺達は、翌日それぞれのやりたい事をする為に朝早くから別行動を行っていた。
「ふぅ~、ずっと馬車で移動してたから体がなまってないか確認がてら魔物討伐に来て正解だったな」
皆と別行動していた俺は、体が訛っていないか確認する為に王都の冒険者ギルドへと行き討伐依頼を受けて街の外へと出て居た。その結果、何となく以前より動きが鈍っている感覚がした俺は、残り2日間で戻そうと意気込んで討伐対象を探しながら運動をした。
その後、討伐対象をギルドへ持ち帰った俺は報告し、報酬を受け取って近くの定食屋へと入り、食事をしているとガルドさんが店の中に入って来たので手を振って自分の席に呼んだ。
「ガルドさんも丁度お昼だったんですね」
「あぁ、色々と見て回ってたら腹が減ってな、丁度いい所に店があると思って入ったらクリフが居たんだよ」
「そうでしたか、ガルドさんここの肉料理がめちゃくちゃ美味しくておススメですよ」
「おっ、そうなのか? なら、クリフと同じ奴を頼むとするか」
ガルドさんは席に座ってメニュー表を見だしたので、俺が自分が食べている定食をおススメするとガルドさんも一緒の物を注文し、一口食べると「本当に美味しいな」と言って雑談をしながら二人で食事をした。
食後の運動の為に定食屋を出た俺達は、街の外に出て魔物狩りへと向かっていた。
「レベルも元々抜かされてたが、力の差を感じるぜ……」
「まあ、でもその分ガルドさんは知識があるじゃないですか」
「そっちの方も段々怪しくなってきたから、こうしていじけてんだろ」
ガルドさんはそう言うと、襲って来たオークの足を切り飛ばし、体制を崩したオークの胸に剣を差し込み絶命させた。
「それにしても、ガルドさんも変わりましたよね。出会った時は、あんなに印象が悪かったのに今じゃ、隣に住む少し年が離れたお兄さん的な感じですよね」
「なんだそれ? まあ、自分が丸くなったのは感じるな、クリフと出会って色々と環境が変わったってのが一番の要因だろうな、まっ変わったおかげで友人も増えたし、仕事もしやすくなったからな良い事尽くしだよ」
「それは良かったですね」
笑顔で言ったガルドさんに俺はそう返して、その後も狩りを続けた。その甲斐あって、翌日には大体の感覚を取り戻す事が出来た。しかし、まだまだ微調整が必要な感じでもあったので大会の本番までは自分の戦い方を調整する期間に充てる事にした。
「クリフ君、最近ずっと外に出てるけど大会前に怪我したりしたら勿体ないよ?」
調整をする為に街の外に出かけていた俺に対して、心配した表情でアリスからそう言われた。
「大丈夫だよ。遠くには行ってないし、戦い方の調整をしてるだけだからな、大会には万全の状態で挑みたいんだ」
「それは、分かるけど、クリフ君ならそんな事しなくて勝ち進みそうだけどな~」
「そんな事は無いと思うぞ? 現に街を歩いていると強そうな人が結構いたからな」
「うん。でも、やっぱりクリフ君と戦えそうな人は居なかったと思うよ。皆もそう言ってたし」
アリスがそう言うと、一緒に聞いていたミケやルーネ達からも「あった参加者らしき人のなかだったら、クリフ君が一番強い気がするよ」と言われた。
「ふ~む、まあ大会が始まらないと分からない事だし、準備はしておいて損はないだろう」
「まあ、そうだけどね」
結局俺の言葉にアリスは折れて「怪我だけはしないようにね」と忠告だけ残して、ミケ達と宿を出て行った。アリス達が出て行った後、俺も宿を出て街の外に出て昨日の様に訓練をしていると、遠くの方から大きな音が聞こえ、同じ音が連続として聞こえ始めた。
「何だ!?」
俺はその地鳴りがした方へと飛んで向かうと、一人の大男が巨大な木を素手で殴ったり蹴ったりしていた。
「そこに居る者よ。俺の敵じゃないのだったら出てくると良い」
大男は俺の方に視線を向けて、そう言ったので俺は素直に地面に降りて大男の前に立った。
「すみません。大会に向けて訓練をしていましたら、貴方が出していた打撃音が聞こえて、不思議に思ってこちらに来たんです」
「そうか、訓練の邪魔をしたようですまなかった。俺も明日の大会に出る予定でな、最後の訓練をしていた所なんだ。ここで会ったのも何かの縁だ。一緒に訓練でもしないか? 見た所、君は武人でもあるのだろう?」
「貴方程ではありませんし、どちらかと言うと魔法使いの方が本職ではありますが、父から武術も稽古してもらっていたので多少は戦えますよ」
そう言うと、大男は「俺も軽くやるだけだから、本職の武人では無くても良いぞ」と言って構えた。大男の構えに少し圧を感じつつ、俺も同じように教えられた構えを取り「始め」という合図と共に試合を始めた。
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