上 下
164 / 192

第164話

しおりを挟む
 クラン結成から三日が経った。
 あれから、各自別れて良さげなクランハウスを見つけようと探し周り、ミケとアリスがいい感じの建物を見つけた。
 建物自体は、十何年か前の建物なのだが以外と綺麗な感じだった。二階建てで、部屋数もそれなりに有り、庭付きでもあった。鍛冶スペースとして庭を活用する事も出来る位の広いスペースのある建物で色々と高評価なのだが、一つだけ駄目な点がある。

「ちょっと、ギルドから遠いかな……」

「そ、そうだよね……」

「う~ん、でもここより遠い所にクランハウスとして買ってるクランもあるよ?」

 俺、ミケ、アリスの順で建物の感想を言った。取りあえず、他の皆にもこの建物がどうか聞いてみると「凄く良い!」とギルドから遠い点含めて高評価だった。

「別にギルドから遠くても、活躍するクランには目ぼしい依頼は、ギルドの職員が届けてくれたりするし、歩いて一時間以上掛かるとか周りの環境が最悪だ。って訳ではないから、文句はないぜ」

 ガルドさんがそう言うと、ルーネ達も「そうだね」と賛成した意見を出した。まあ、ここに住む人たちが賛成なら良いかと俺達も納得し、この建物を売っている店に行き、手続きを行った。立地的に少し、盛んな所から離れているというのも有り、安く売られていた。金額を見て、ガルドさん達も「これなら、直ぐに半分払える」と言ってくれたので、この場で俺が一括払いで建物を購入した。

「……あの金額をポンと出せる。クリフに俺は、驚くぜ」

「僕も、あんなお金普通に出せないかな……」

「私もです。まあ、クリフ君は収納スキルを持ってますからね」

「私も欲しいな~、収納スキル」

「クリフ君、金持ち……」

「凄い……」

 俺以外の皆から、そんな風に言われた俺は「お、俺だって毒竜の報酬が無かったら、こんな事しないって!」と何故か反論してしまった。そして、自分達の持ち物となった建物に戻って来た俺達は、建物の看板に〝クランハウス:導かれた者達〟という看板を立てて中に入った。

「取りあえず、綺麗な風に見えるけど埃とか凄いし、掃除から始めよう。家具は、新しく買うから既存の家具は捨てても良いよ」

 不動産の人からも「中に残ってる家具は、お好きにどうぞ」と言われたので、全て処分する事にした。
 家にあった家具は全て、裏庭に集め一気に燃やした。その際、本だけは燃やさず取っておく事にした。最初に家具を撤去した家の中は、更に広く感じた。

「さてと、今日の所はここまでにしよう。明日の朝、クランハウス前に集合な」

「「「「「は~い!」」」」」

「おう!」

 皆が返事をした後、建物から出て行き最後に鍵を閉めて皆と別れた。俺は、転移で家の地下室に帰って来た。そこには、留守番をしていたゴレ助とアーリンがトランプで遊んでいた。

「あっ、そうだ。アーリン、新しいクランハウスにも地下室があるんだが、そっちにも妖精界と繋ぐか?」

「う~ん、仮の門だけ付けておこうかしら? 念の為って事で」

「分かった。なら、クランハウスの内装が出来たらまた声を掛ける。それじゃ、俺は部屋に居るから何かあったら部屋に来てくれ」

「は~い」

 アーリンの返事を聞いた俺は、地下室から出て階段を上がって自分の部屋に向かった。部屋の中に入った俺は、窓を開けてベッドに横になった。

「ふぅ~、何も無い日々が続くってのは良いもんだな……」

 平和が一番だ、と続けて言った俺は目を瞑って、そのまま夢の世界に入った。
 夢では、久しぶりに前世の世界の夢を見た。懐かしい風景に、懐かしい友人の顔、母や祖父母との思いで、そんな夢を見た。

「――ク、クリフ!」

「ッ!」

「もう、クリフったら夕飯前にお昼寝するなんてクリフらしくないわね」

「ごめんなさい、母さん」

 突然起こされた俺は、起こしてくれた母に謝りながらベッドから起き上がった。

「あら、クリフ? 何で泣いてるの?」

「えっ?」

 母さんに指摘された俺は、手で目元を触ると若干濡れた。俺は、母に「ちょっと、怖い夢を見てたんだと思う」と答えて、一緒に部屋を出た。

(まあ、今更あっちの世界の事を思い出しても、今はこっちの世界で生きてる。それに、あっちの世界に戻りたいとは思わないしな……)

 そんな風な事を思いながら、リビングに行き今の家族と楽しく食事を食べた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

処理中です...