93 / 95
第二章
第93話 【長期休みの始まり・3】
しおりを挟む話し合いはアリスが来るまでに終えなければいけない為、手短に話し合わなければいけない。
「エリスさん、大前提の話なんですけど。エルドさんはアリスに謝罪はしたんですか?」
「ええ、それはもう何度も頭を下げたとエルド様からもお聞きしたわ。念の為、シエナ様に確認してるから謝罪はしてるわ」
「ふ~む、謝罪していてもだめですか……」
あのアリスがそこまで怒るという事は、昨日のあの発言はアリスの中で怒るポイントだったのだろう。
あの時のアリスは、俺に対しての好意というより友達を馬鹿にされた事に対して怒ってる感じがした。
それから各自、どうすれば仲を取り戻せるか案を出すが、既にエルドさんが試している事ばかりだった。
「逆にここまでしても尚、嫌われてるって事は心の底から嫌ってるんじゃないんですか?」
「エルド様は自分のちょっとした悪戯心で発した言葉で、アリスちゃんとの仲を壊した自分を一生悔やみながら生きる事になるわね」
「そうなると、商会もやばいですよね……どうすれば、仲直り出来るのかな……」
そう俺は言うが、特に良い案は思い浮かばずアリスが商会に到着したので、俺は会議室から離脱して広場へと向かった。
「今、そんな事になってるんだ。確かに商会に来た時、ちょっとビリついてたもんね」
休み期間に入ったが、レオルドは変わらず訓練に参加するみたいで少し遅れて広場にやって来た。
そして商会の様子が変だと気づいたレオルドは、俺に何があったのか聞いて来たので俺はアリスとエルドさんの事件について伝えた。
「本当は合宿の件、エルドさんに伝えてレオルドも誘おうと思ったけど、あの感じだとレオルドを誘うのは難しそうなんだよね……」
「ちょっと待って、合宿って何?」
「休みの宿題を大量に貰ったでしょ? あれをクラスの人達と一緒に解く為、合宿しようっていう話になってるんだよ。それで合宿自体はエリスさんに許可貰えたんだけど、王子のレオルドは流石に副会長のエリスさんでも独断では決められないみたいで……」
「僕もその合宿に参加したいんだけど? 僕だけ仲間外れは嫌だよ?」
レオルドは焦った様子でそう言い、エルドさんとアリスの仲を取り戻すと、ルクリア商会の人達並みにやる気に満ちた目をした。
しかし、やる気に見ちたレオルドだが、未だにアリスとの仲はそこまで進展もしてない為、話しかけようにも避けられてしまう。
「僕の考えだけどさ、アルフがアリスさんにエルドさんの事を許してあげるように言えば解決しそうだけどね」
「そんな簡単な事で仲直り本当にする?」
「この数ヵ月、近くで二人の事を見てアリスさんはアルフの事をかなり信頼してると思うんだ。それに言われたのは、アリスさんだけどアルフも一緒に言われた感じだから、アルフがエルドさんの言葉を特に気にしてないならアリスさんも許す流れになると僕は思うよ」
レオルドはそう言うと、アリスと一緒に訓練をしてるクラリスを呼び、俺はクラリスと交代でアリスの方へと向かった。
「アリス。ちょっと良いか?」
「どうしたの?」
訓練に集中していたアリスは、俺から話しかけられると顔をこちらに向けて来た。
「昨日の件でエルドさんの事、許してあげてないんでしょ?」
「……誰かに聞いたの?」
「今日、エルドさんに用があって行ったら、かなり落ち込んでいたから聞くまでも無く分かったよ」
「……お爺ちゃんが偉いのは知ってるよ。でも、言って良い事と悪い事は家族でもあるのはアルフ君も分かるよね」
アリスは、顔をムスッとした表情でそう言った。
「うん。それは分かるよ。でも、昨日のあれはエルドさんも嬉しくなってつい言葉に出ただけだと思うよ」
「ついでも、私の折角の友達のアルフ君に対して失礼な事を言ったのは事実だよ。なのにお爺ちゃんは私にだけ謝って、アルフ君には謝ってないでしょ? そこがまだ怒ってる理由だよ」
アリスが許してない理由は、エルドさんが自分に対しては謝ってるけど、俺に対しては謝ってないから許してないと言う事か。
……俺のせいだったか~、いや気にしてなかったから俺が理由とか全く考えても無かった。
「……け、今朝会った時に俺にも謝罪してくれたよ。だから、エルドさんと仲直りしてくれないか?」
俺は咄嗟にそこで、エルドさんから謝罪をされたとアリスに言った。
アリスは俺の言葉に、キョトンとした顔で見つめて来た。
「本当にお爺ちゃんはアルフ君に謝罪したの?」
「したよ。俺が嘘をつくと思う?」
「……言わない。うん、わかった。じゃあ、後でお爺ちゃんと仲直りしに行ってくるね」
アリスは俺の言葉を一瞬だけ疑ったが、直ぐに信じてくれた様で笑みを浮かべてそう言った。
それから俺はトイレだと言って広場を出て、急いでエルドさんの部屋に向かった。
487
お気に入りに追加
2,203
あなたにおすすめの小説
家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長
ハーーナ殿下
ファンタジー
貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。
しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。
これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
異世界に行ったら才能に満ち溢れていました
みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。
異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる