上 下
52 / 107
第一章

第52話 【学園生活の始まり・4】

しおりを挟む

 少しして、魔法担当の先生が訓練場へとやって来た。
 そして授業が始まって直ぐに、三人一組の班を作ってほしいと言われた。

「アリス。後一人どうする? 誰かやりたい人は……」

「ど、どうしよう……」

「うん。分かってたけど、居ないよね」

 班決めをする様に言われてから、アリスは途端に不安な表情となっていた。
 そんなアリスを見て、班決めに難航しそうだなと思っていると。
 俺達の所へ一人の女子生徒が近づいて来た。
 この人は確か同じクラスの人だったような?

「はじめまして、アルフレッド君。最後の枠余ってるなら、私が入っても良いかな?」

「俺は良いですよ。アリスはどう?」

 女子生徒の言葉に俺はそう返し、既に俺の後ろに隠れているアリスに聞いた。
 すると、アリスはちょこっとだけ顔を出すと小さく頷いた。

「良いみたいですね。えっと……」

「自己紹介がまだだったね。私は、リサ・フィネット。よろしくね!」

「アルフレッドです。よろしくお願いします」

 リサと名乗った女子生徒と俺は握手を交わし、無事にグループが決まった。

「へ~、リサは薬師が夢なんだ」

 あの後、互いに早く打ち解ける為にとリサは俺の事を〝アルフ君〟と呼び、俺は〝リサ〟と呼ぶ事にした。

「うん。お父さんとお母さんが薬師で、いつか私もお父さん達と同じ薬師になりたいと思ってるんだ。その為、学園の特別授業で薬に関して色々と教わってるんだ」

 高等部の日程として、5時間制の授業で2限目までは基本的な授業。
 3限目からは選択科目の授業が行われ、5限目終了後に更に学びたい者達は追加で授業が二限分時間があるらしい。
 リサみたいに家業を継ぎたい者や、より自分を高めたいと思う者達が利用しているが、基本的には5限目で帰宅する学生が多い。
 勿論、アリスは後者で5限目が終わると直ぐに帰宅する学生の一人みたいだ。

「薬の調合って考えただけで難しそうだけど、リサはもう何か作れるの?」

「簡単な痛み止めとか、治癒効果のある薬は作れるよ。これでも小さい頃から、お父さん達に調合について習ってたからね。経験は結構あるんだよ」

「へ~、それは凄いね」

「うん。凄い……」

 リサの話を聞いていた俺は、素直にそう褒めると一緒に聞いていたアリスも頷きながらそう言った。
 そしてそんなアリスの反応に対し、リサは驚いた顔をして反応をした。

「アリスちゃんがはじめて、反応してくれた……」

「そんなに感動する事?」

「感動するよ! これでも初等部からずっとアリスちゃんとクラスが一緒だったけど、一度も会話した事が無かったんだよ。それが、今日やっと会話が出来たんだから嬉しいに決まってるよ!」

 リサは少し興奮気味にそう言うと、アリスは再び俺の後ろへと隠れてしまった。

「三年間一緒って、それって珍しい方なの?」

「ん~どうだろ? 学園の生徒数から考えたら、かなりの低確率だと思うよ」

「あ~、確かにそれはそうかも」

 リサの話を聞いて、学園の生徒数から考えたらかなりの確率だなと納得した。
 その後、暫く話していると班分けが終わり、授業の内容を説明された。
 今日の授業は、簡単に言えば的当てのようなもので挑戦者は一人で、残り二人が的を出す役割をするみたいだ。

「最初は誰がやる? リサは魔法得意な方?」

「う~ん、微妙かな? そこまで得意って言える程でもないから、最初は嫌かも……」

「アリスは……うん。無理なんだね」

 アリスに聞こうとすると、アリスはブンブンと首を振って〝絶対に無理!〟とアピールされた。
 俺は二人が無理ならと、最初に挑戦する事にした。
 的は的出しの人が魔法を撃つなり、用意されてる的を使っても良いらしく、二人は用意された的を投げるみたいだ。

「さてと、この授業は真面目に受けておいた方が良いな」

 そう思った俺は先生の開始の合図と共に、アリス達が出す的に精確に魔法を当て続けた。
 的は全部で30個用意されていて、俺は全ての的に魔法を当てる事が出来た。
 その光景を見ていた先生は、俺の近くにやってきた。

「流石はアレンさんのお弟子さんだね」

「先生は師匠を知っているんですか?」

「知っているよ。元々、先生になる前は冒険者をしていてね。アレンさんとは何度か会った事があるんだよ。まあ、私が一方的に知ってるだけで関係値はないけど、彼の凄さは分かってるつもりだよ」

 先生は笑いながらそう言うと、去っていき先生と変わるようにしてアリス達が俺の元に寄って来た。

「アルフ君、魔法も得意なの?」

「まあ、今の訓練のメインは魔法だからね。俺の師匠は〝黒衣の魔導士アレン〟さんだよ」

「えぇ、アレンさんのお弟子さんなの!?」

 リサのその驚く声に対し、周りで授業を受けていた生徒達はピタッと時間が止まったかのように静止した。
 そして生徒達は俺の方をジッと見ていて、これは騒ぎになるかも知れないと俺は察した。

「手が止まってますよ。授業に集中しないと、成績に響くかも知れませんよ」

 しかし、騒ぎが起こる前に先生がそう言って何とか場を宥めてくれた。
 その後、順調に進み授業が終わった瞬間、騒ぎになる前に俺はアリスとリサを連れてさっさと教室に戻った。
 そして教室に戻った後は帰りの階まで息を潜め、帰宅してもよいタイミングになったら直ぐに教室を出た。
 事前に商会から迎えの馬車が来る事を伝えられていた俺は、馬車を探して見つけて直ぐに乗り込み。
 自分の発言のせいで騒ぎにアリスを巻き込む前に、帰宅する事に成功して一安心した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下
ファンタジー
 貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。  しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。  これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

処理中です...