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第一章

第47話 【おかしな弟子・3(side:アレン)】

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「アレンさんがこの時間に来るなんて珍しいですね? 今日はどういったご用件ですか?」

 情報収集をする為、俺が最初に向かったのは情報屋。
 昔から馴染みのある情報屋で、必要としている情報を持っている事が多くよく世話になっている。

「冒険者ギルドについて知っている情報を知りたい」

「冒険者ギルドのですか? また珍しい情報をお求めですね」

 情報屋はそう言うと、資料の束を取り出していくつかテーブルに置いた。
 その資料の束が全部、冒険者ギルドの物だと言われ俺はその資料を全て買った。
 一つだけでもかなりの値段がするが、それだけ今回は本気で動かないといけない。

「全部も買うって事は、もしかしてルクリア商会は冒険者ギルドから手を引くつもりですか?」

「さぁな、ただで情報を渡すわけはないだろ?」

「……全く、アレンさん昔から取引してるのにそういう所はちゃんとしてますよね」

「こっちは金払ってるのにただで教える方が馬鹿だろ?」

 俺がそう言うと、情報屋は情報の重要性に応じて金を払うと言った。
 それなら良いと俺は、エルドさんから伝えても良い情報を書いた紙を貰っていたのでそれを情報屋に渡した。
 情報屋はその紙の内容を見ると、驚いた表情でこちらを見て来た。

「本当に、あのルクリア商会が動くんですか?」

「エルドさんが冒険者ギルドに対して、我慢が出来なくなったんだよ。それで明日、会議を行う予定だ」

「それはまた凄い事になりそうですね……」

 それから俺は情報屋を出て、自分の足で更に情報集めをする事にした。
 王都の冒険者は基本的に嫌な奴が多いが、中には普通に関わりのある冒険者も中には居る。

「ルクリア商会が何か関係してるのか?」

 一人目に選んだのは、俺と同じ白金級冒険者として活動をしている冒険者。
 王都での活動歴も長く、情報も多く持っていると考え接触した。

「察しが良いな。まあ、そういう事になるな」

「マジかよ。ルクリア商会がまだ付いてるから、王都で生活してたけどルクリア商会が離れるなら、本格的に活動拠点を移動した方が良さそうだな……」

 そいつはそう言うと、最近の王都の冒険者ギルドについて知っている事を教えてくれた。
 その後、他にも知り合いの所に行き情報を集めた俺は、商会へと戻って来てエルドさんに報告をした。

「ふむ。軽く、情報屋に話もしたのだな」

「はい。向こうも興味を示したので、多分直ぐに噂が流れると思います。話した内容は、エルドさんが用意した紙以外は伝えてありません」

「ご苦労。こんな夜遅くにこんな事を頼んですまなかったな」

「いえ、エルドさんからの頼みですからね。それより、アルフの事ですが冒険者に登録するならウィストの街でさせるのはどうですか?」

 王都の隣に位置するウィストの街。
 王都の冒険者ギルドとは違って、真面に機能していて冒険者の質も良い。
 それはエルドさんも知っているだろうから、そう提案をした。

「それは儂も考えていた。この先、アルフがどうなるとしても冒険者に登録しておいて損は無いからな。アルフの登録、アレンに任せても良いか?」

「はい。分かりました。それでは、会議が終わった後にアルフを連れて登録に行ってきますね」

 その後、翌日の会議は夜遅くまで続き、夕食時間を過ぎた頃にアルフにどうなったのか一通り伝えた。

「そう言えば、アルフはウィストには来た事はあるのか?」

 会議の翌日、エルドさんから言われた通りアルフを隣街に連れて行く事になり、出発して直ぐに俺はそんな事を聞いた。

「無いですね。実家の領地はウィストの街とは反対にあるので、こっちを通ったこと自体が無いと思います。そもそも、王都から出た事もあまりないので」

「そうなのか?」

 アルフ曰く、アルフの両親は王都暮らしをしていて領地は親族に任せているらしい。
 その為、アルフは王都から出た事が殆どなく、家の中で暮らしていたと言った。

「箱入り息子って事か」

「まあ、そんな感じですね」

「家にずっと居るって楽しくなさそうだけど、辛くなかったのか?」

「妹が居たおかげで、そこまで苦痛ではありませんでした。ただ最後の一年間は、流石に辛かったですけどね」

 一年間部屋の中で謹慎生活をしていたと聞いた時は、心が壊れていないアルフを見てこいつは凄い奴だなと感じた。

「一年間の謹慎生活を〝辛かったですね〟で片付けられるのは、相当凄いな」

「もう過ぎた事ですからね。今はこうして楽しく生活出来てるので、耐えてよかったと思ってます」

 それからアルフは荷台で訓練をしたいと言ったので、俺は邪魔をしないように声を掛けずウィストの街に向かって馬を進めた。
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