上 下
22 / 95
第一章

第22話 【商会長の怒り・2】

しおりを挟む

 広場へと移動して来た俺達一行に対し、先に広場を使っていた商会の人達は驚いていた。
 まあ、自分達の商会長とその商会でも一目置かれてる師匠が同時に来たら、驚くのは分かる。

「さてと、アルフ。フェルガを呼び出せるか?」

「はい。大丈夫です。フェルガ。出て来て」

 師匠の言葉に俺は返事をして、フェルガに出て来るように念じると。
 俺達の目の前にフェルガは姿を現した。

「……フェンリルか?」

「はい。フェンリルのフェルガです。色々とありまして、俺の従魔になったんです」

「……フェンリルを従魔にした!?」

 俺の言葉を聞いたエルドさんは数秒間固まり、硬直が解けると出会って初めて聞くレベルの大きな声で叫んだ。
 そんなエルドさんの叫びに、周りで見ていた商会の人達もフェルガの姿をみて固まっていたのが解け、広場は騒がしくなった。

「周りの人達を退いてもらって見せればよかったですね」

「そうだな、いずれ知られると思って気にしなかったが初めて見たらああなるか……」

 俺と師匠は、周りの反応を見てそう反省をした。
 あの後、落ち着きを取り戻したエルドさんがその場を落ち着かせ。
 あのままあの場に居たら、話しが出来ないからとエルドさんの仕事部屋に戻って来た。

「まさか、フェンリルを従魔化させて帰ってくるとは予想もしてなかったぞ……」

「偶々、従魔にしちゃったんですよね」

 そう俺は言って、エルドさんにフェルガを従魔にした経緯を伝えた。

「成程、名付けをして従魔にしてしまったのか……普通、そんな事はありえないと思うが。実際、従魔にしておるみたいだしな」

 エルドさんは俺の話を聞くと、納得した様子でそう言った。
 それからエルドさんから、従魔を使役しているのなら冒険者ギルドで登録しないといけないと言われた。

「冒険者ギルドですか……」

「そう言えば、アルフは冒険者ギルドから追い出されたと言っておったな。あの時は、そこまで詳しい事は聞いておらんかったが何故追い出されたのか聞いても良いか?」

 初めて会った時、愚痴程度でしかエルドさんに話してなかった俺は、冒険者ギルドでされた事をエルドさんと師匠に話をした。
 登録をしようとしたら、スキル一つである事を大きな声で馬鹿にされ、その場に居た冒険者達からも馬鹿にされた事を話した。

「「……」」

 エルドさんと師匠は、俺の話を聞くと二人から怒りのオーラの様なものを感じ取った。
 そんな二人は視線を合わせると頷いた。

「アルフ。話し合いは今日はここまでにしよう。修行で疲れてるだろうし、今日は早めに休むんだぞ」

「は、はい? わ、分かりました」

 真顔で言ってくる師匠に、断れない雰囲気で圧された俺は返事をした。
 そして俺だけ仕事部屋から出て行くと。

「緊急会議を行う。至急、幹部達は儂の会議室に集まるように」

 と、放送が流れた。
 その放送を聞いた商会の人達は、何事だ? となり、急いで会議室に向かっていた。

「もしかして大事に発展しちゃうのか?」

 仕事部屋でのエルドさん達の表情は、明らかに怒っていた。
 俺は不安だなと考えながら寮の方へと移動して、部屋に戻る前にお風呂に入ろうと風呂場へと向かった。

「アルフ君。さっき幹部の人達が会議室に呼び出しされてたけど何か知ってる?」

 風呂から上がり、食堂に来ると食堂のおばちゃん達からそんな事を聞かれた。

「多分、俺が冒険者ギルドでされた事を聞いてから会議の招集の放送が鳴ったので、多分俺が原因かも知れません」

「冒険者ギルドでされた事? それって、私達も聞いても大丈夫な事かしら?」

「大丈夫ですよ。特に隠す様な事ではないので」

 そう言って俺は、食堂のおばちゃん達にエルドさん達に話した事と同じことを伝えた。
 すると俺の話を聞いたおばちゃん達は、「冒険者ギルドも落ちたわね」と冷めた表情でそう言った。

「昔はもっと良い所だったけど、最近の王都の冒険者ギルドは駄目ね~」

「王都にある冒険者ギルドだから、頭に乗ってるのよ。自分達が偉いとでも思ってるんでしょうね」

「最近、冒険者の質も落ちたと思ってたけどギルド自体の質が落ちてたのね。本当に呆れたわ」

 おばちゃん達は次々と冒険者ギルドの悪口を言うと「何かあったら力になるからね」と言ってくれた。
 その後、おばちゃん達から大盛りの食事を用意してもらった。

「ひ、久しぶりの食堂の料理だからって食べ過ぎたな……」

 最初の時点で大盛りを用意してもらった俺は、それと同じ量をもう一度食べた。
 その結果、食べ過ぎて苦しくなり部屋に戻ってきた俺は直ぐにベッドに横になった。

「フェルガも美味しそうに食べてたし、やっぱりおばちゃん達の料理は凄いな……」

 既に俺に従魔が居る事は商会の人達には伝わっていて、おばちゃん達もフェルガの存在を知っていた。
 なのでフェルガの分の料理も用意してもらい、フェルガも一緒に食事をした。

「あの者達の飯は本当に美味かったぞ!」

 食事を終えたフェルガは満足気にそう言って、沢山食べてお腹いっぱいになったのか今は異空間の中で寝ている。
 そんな俺も、少し休んだおかげで苦しさが治まって来たので寝る事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下
ファンタジー
 貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。  しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。  これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

処理中です...