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第一章

第17話 【修行開始・1】

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 フェルガと師匠の喧嘩を止めた後、ようやく今日の修行の時間となり、洞窟の外に出て修行を始めた。
 フェルガは何やら用事があるからと言って、今は居ないので暫くは喧嘩も起きる心配はなさそうだ。

「さて、修行を始めようと思うが。アルフにはこれから、俺の最も得意としている魔法の技を教える」

「はい! よろしくお願いします!」

 師匠から、俺の【水属性魔法】のレベルが4を超えたら、師匠の技を教えるという約束をしていた。
 だから俺はこの一週間、魔法の訓練時間はかなり集中して訓練を続け、目標のレベルに到達した。

「それじゃ、まずは俺が見本を見せるから見ていろ」

 師匠はそう言うと、少し俺から離れて魔法を発動させた。
 師匠の作り出した魔法は、直径50㎝程の円形の板だ。
 それを二つ、師匠は作り出すとその上にヒョイッと乗った。

「……え? えぇぇぇ!?」

 師匠は水の板に足を付けて、地上から浮いた場所に立った。

「凄いだろ? 空を飛ぶ魔法とかもあるが、属性魔法でも工夫すれば空中戦でも出来るんだ」

 それから師匠は更に水の板を空中に作ると、その板を自由自在に行き来して空中を飛び回った。

「どうだ。アルフも覚えたいだろ?」

「はいッ!」

 空を歩くなんて男の夢だ。
 それを叶える魔法を教えて貰えるなんて、俺は本当に師匠が師匠で良かった!
 それから俺は師匠から、今の技の初歩的な部分から教わり始めた。

「師匠。さっきステータスを確認したら、レベル5に上がってました」

「流石、アルフだな。ついこの間、レベル4になったのにもうレベル5か……」

 修行を終え、風呂に入りながらステータスを見ていた俺はそう言いながら、師匠にステータスを見せた。

「おっ、それよりも遂にアルフに【魔力制御】のスキルが現れたか」

「師匠に言われてから、気にするようになってようやくです。ただまだスキルレベル自体、0なのでここからもっと訓練を頑張らないといけません」

 師匠から訓練を見てもらうようになってから数日経った頃、俺は師匠から【魔力制御】のスキルについて教えて貰った。
 それからの訓練では、意識してやってきた俺はようやく【魔力制御】を習得した。

「それと最近、【経験値固定】について分かったんですが。やっぱり、俺の集中力が関係してるみたいです」

 【経験値固定】はちゃんと集中していないと、効果を発動しない。
 集中にばらつきがあると、その分経験値が溜まらず。
 逆に集中した状態を維持していると、経験値が溜まりやすくなりレベルが上がるのが早くなる。

「成程な、というと集中しやすい環境が大事って事だな」

「そうなりますね。その点で言うと、ここは最高ですね。森の奥で静かなので、訓練してる時も集中しやすい感じがします」

「それなら、ここに連れて来た甲斐があるな」

 師匠は笑ってそう言うと、俺と師匠は風呂から出て寝床へと移動した。
 朝、師匠が出掛けた後、俺はこの洞窟の中を掃除ついでに少しだけ弄った。
 【土属性魔法】の練習も兼ねてやっていたが、思いのほか楽しく。
 ついつい夢中になって、持ってきていた寝具を使いちゃんとした寝床を作っていた。

「俺の時は特に気にしてなかったが、アルフはこういう所も気にするんだな」

「寝袋を地面に敷いて寝るだけでも、別に寝れるんですけど……なんかこういう所に、自分達だけが知る秘密の基地みたいなのを作ってみたいなって、子供の頃に思ってまして」

「秘密基地か、俺も昔はそんな事も考えていたな」

 師匠は笑みを浮かべながらそう言うと、俺が作った寝床に横になった。

「この洞窟の改造に時間を使っても良さそうだな……長年使って来たけど、アルフの言った通り秘密の基地にはここは最適だからな」

「良いんですか? でも、修行に支障とかありませんか?」

「多少の息抜きは必要だろ? それにここの改造にも魔法を使うから、楽しみながら修行をすると思えばいいんだよ」

 そう言われた俺は、師匠に「ありがとうございます」とお礼を言って明日からの修行が更に楽しみになった。
 そして次の日、朝早くに師匠は朝食を取りに森の中へと行ったので、俺は洞窟に残り。
 トレーニングをする時間帯ではあったが、昨日教えて貰った魔法の方が魅力的だったので今日だけは午前中も魔法の訓練をする事にした。

「んっ? アレンは居ないのか?」

「フェルガ。戻って来たんだね。師匠ならさっき朝食を取りに森の中に行ってるよ」

 突然戻って来たフェルガに、俺は師匠は森に居ると伝えた。

「ふむ、狩りに行っておるのか。なら、直ぐに戻ってくるか」

「師匠に何か用事があったの?」

「用事を終えたから、お主達が森を出る時に付いて行くと伝えにきたんだ」

 フェルガのその言葉に俺は「えっ?」と驚き、集中が途切れて空中に浮いていた魔法が解けて散った。

「付いて行くって、王都に一緒に来るの? フェルガが?」

「そうだ。そもそも、我はアルフの従魔だ。付いて行くのはおかしくないだろ?」

「いや、まあそこを言われたら反論できないけど……フェルガは森の生活を捨てても良いの?」

「構わん。昨日はアレンと言い合いになったが、正直一人でこの森の中で暮らしていても楽しくないからな」

 少し照れた様子でフェルガが言うと、丁度師匠が森の中から出て来た。
 そんな師匠とフェルガは目が合うと、師匠はニヤッと笑みを浮かべた。

「……ふっ、やっぱり寂しかったんじゃないか」

「ッ!」

 師匠のその言葉に、フェルガは毛並みを逆立てて師匠に襲い掛かった。
 それから、師匠とフェルガは追いかけっこを始め、どうせ今止めても無駄だと思い。
 師匠が取って来たボアの処理を始めた。
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