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第一章
第14話 【秘密の訓練場・2】
しおりを挟む「アルフ。着いたぞ」
荷台で訓練をしていた俺は師匠の声が聞こえ、訓練を止めて外の景色を見た。
「ここが師匠の訓練場ですか?」
「そうだ。森の奥で近くには湖もある。寝泊りする時は、そこの洞窟の中で寝たりしてる」
師匠に連れてこられた場所は、山の麓で周りは森に囲まれている。
師匠が生活していると言った洞窟の中はかなり広く、人が生活するには十分なスペースだった。
それから師匠には、ここでの暮らしについての説明を受けた。
「それと、ここでの生活で一番大事な事だが。森で迷ったら危険な魔物が沢山生息しているから、一人で森の中に行こうなんて考えるなよ」
「はい、分かりました。今もアレンさんが居るおかげで、俺が狙われていませんもんね」
「流石、アルフだな。ちゃんと、分かってるようでよかったよ」
師匠はジッと俺の事を見つめると、嬉しそうにそう言った。
その後、師匠は俺に洞窟で待ってるように言うと、食材をとってくると言って出て行った。
「さてと、師匠が帰ってくるまで洞窟の中で留守番か……お世話になる訳だし、掃除でもして待っておくか」
そう思った俺は、洞窟の中の掃除を始めた。
掃除と言っても、元々自然の洞窟を拠点としているのでいくら頑張っても本当の意味で綺麗にはならない。
だけど、気持ちの問題だしなと思いつつ、俺は師匠が戻ってくるまで洞窟の掃除を続けた。
「……こういう時に土魔法とかあれば、ちょっとした物が作れたりするのにな」
一通り掃除を終えた俺は、椅子として丁度良い石の上に座りながらそんな事を考えた。
数多くある属性魔法の中で【土属性魔法】は、制作系にもよく使われている。
大工の中には、力はない代わりに【土属性魔法】が使えるから雇われてる人も居たりする。
「師匠は暫くの間は【水属性魔法】で行くと言っていたけど、師匠の役にも立ちたいからどうやってか覚えられないだろうか……」
そう思いつつ、俺は土をいじりながら魔力で土を動かしたり、土に向かって魔力を流したりと色々と試し始めた。
そして、土を魔力で移動させた時、俺は水属性の訓練してる時の様な感覚を感じた。
もしかしてと思いつつ、俺はその行為を師匠が帰ってくるまで続けた。
「成程な、俺の為に洞窟を住みやすくするために【土属性魔法】を習得したのか……」
師匠が戻って来たのは、大体2時間程経った頃だった。
その間、30分は洞窟の掃除で残りの時間は全て【土属性魔法】の訓練みたいなものをしていた。
その結果、師匠が戻って来る少し前に【土属性魔法】を習得した。
「はい、勝手な行動をしてしまってすみません……師匠から何も言われてないのに、勝手にスキルを習得してしまいました」
「いや、怒ってはいないぞ? 逆に俺は【土属性魔法】に関して、どうやって習得させられるのか考えていたんだ」
その後、時間も陽が沈みかけていたから夕食の準備に取り掛かった。
師匠が用意した食材は倒したばかりのボア。
一般的に食用の肉として流通しており、人気なのだが師匠が討伐してきたボアは普通のボアではなかった。
師匠が討伐してきたのはボア種の中でも美味しいとされている〝ブラック・ボア〟と呼ばれてるボアだった。
「こんなに大きなボア。初めて見ました……」
「この森はほぼ魔物しか住んでないから、こういう奴等が沢山いるんだ。だから森の中に一人で入るなって忠告をしたんだ。さてと、ついでだから解体も教えてやろう」
それから俺は師匠に解体の仕方を習いつつ、そのボアを処理をして焼き始めた。
俺も師匠も特に料理が得意と言う訳では無い為、焼いたボア肉に塩を振り一切れ口の中に入れた。
「美味しいですッ!」
「そうだろ? 新鮮な肉を食べる。これもここでの生活の醍醐味だ。味付けが塩だけなのが、ちょっと残念だけどな」
「こんな楽しい事が出来るなら、訓練だけじゃなくて料理も勉強しておけば良かったです……」
「ハハッ、確かにアルフなら直ぐに料理も上手くなりそうだな」
師匠にそう言われた俺は、ここで生活をしてる間は俺が料理をしたいと師匠に進言した。
俺がここで生活してる間に狩りをし、食材を手に入れる事は間違いなく不可能。
それなら、少しでも役に立ちたいから料理だけでもしたい。
「別に俺は構わないが、修行を手を抜いたら駄目だぞ?」
「そこは頑張ります。それに料理が出来る様になれば、エルドさんにいつか振舞う事が出来るかも知れませんから!」
「そうか、それなら頑張ってみるといい。ちなみにエルドさんの好物は、肉料理だが健康を考えて脂っこい物は食べられないから、肉を使った健康的な料理なら凄く喜ばれると思うぞ」
「分かりました。いつか作れるように頑張ります!」
その後、ボア肉を堪能した俺は師匠が魔法で用意した簡易風呂に一緒に入る事になった。
「こんな所でもお風呂に入れるなんて、正直思いませんでした」
「清潔は大事だからな。ここで病気でもしたら、街まで帰るのが面倒だから気を付けるんだぞ」
そう師匠が言い、俺はチラッと師匠の身体に視線が行った。
師匠は魔法使いであるにも関わらず、身体がかなり鍛えられていた。
「……アルフ。ジロジロ見て来てなんだ?」
「あっ、すみません。師匠って魔法使いですよね? なのにどうしてそんなに鍛えるんだろうなって」
「単に鍛えるのが趣味なだけだ。後はまあ、魔法使いも体力はあった方が良いんだ。魔法職は後衛だから体力よりも魔法の腕が重要視されるが、俺は基本的に一人で依頼を受けてるから体力も大事なんだ」
冒険者は基本的にパーティーを組み依頼を受けたりするが、師匠は一人で行動をする事を選んでる様だ。
「成程、それなら俺の訓練の仕方は間違って無いですかね?」
「朝に剣の訓練をしつつ、トレーニングもしてる事についてか? ああ、俺の考えでは間違ってない。その時間も魔法の訓練の時間にしたとしても、得られる力は差はそこまで無いからな」
師匠からそう言われた俺は、ここでも寮で暮らしてた時と同じく朝は剣術やトレーニングを基本的に行い。
魔法の訓練は午後からしようと決めた。
その後、風呂を済ませた俺と師匠は寝袋を取り出して今日はもう寝る事にした。
「あの、見張りとかって大丈夫なんですか?」
師匠と一緒に寝ようとした俺は、その事が気になって既に寝袋の中に入ってる師匠に尋ねた。
「んっ? そこは大丈夫だ。詳しい事は明日説明するから、もう寝ていいぞ」
師匠は俺の質問に対してそう言うと、再び寝袋の中に入ってしまった。
俺は少し外が気になりつつも、疲労が溜まっていた俺は直ぐに寝た。
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