上 下
10 / 95
第一章

第10話 【師匠・2】

しおりを挟む

 そうしてエルドさん達との話し合いから三日が経ち、エルドさんの仕事部屋で俺の指導者となる相手を待っていた。
 事前の話し合いでは、エルドさんは一人だけ俺の事を頼めそうな人が居ると言っていた。

「き、緊張してきた……」

 エルドさんが用意した指導者という事は、それなりに実力のある人だと思う。
 なんていったって、エルドさんはルクリア商会の会長だ。
 そんな凄い人が用意した指導者という事は、俺の予想を遥かに超えてくる人物だろう。
 そんな人の貴重な時間を俺の為に使って貰うなんて、俺はやっぱりあの時しっかりと断っておけばよかったと少し後悔した。

「そこまで緊張しなくても大丈夫だぞ?」

 あまりにも緊張している俺を心配に思って、エルドさんはそう声を掛けてくれた。
 エルドさんの心配する声と同時に、部屋の扉をノックする音が聞こえ、俺はビクッと反応した。
 そして扉が開いて外から入って来た人物に、俺は立ち上がり頭を下げて挨拶をした。

「は、初めましてアルフレッドと申します」

 190㎝はありそうな高身長に、体つきもガッシリとしていた。
 この辺では珍しい黒髪黒目で、長い髪を後ろで束ねていて、目つきはかなり鋭かった。

「ふむ……エルドさんが言ってた意味が何となく、分かったよ。こいつ才能の塊だな」

「ほほう。お主がそこまで言うとは、やはり凄い逸材のようだな」

 男性が俺の事を褒めると、エルドさんは自分の事の様に笑みを浮かべながら嬉しそうにそういった。

「俺の名はアレン・バルザール。白金級冒険者だ。よろしくな、アルフレッド」

「は、はい。よろしくお願いします。アレンさん!」

 ……って、ちょっと待てよ?
 白金級って冒険者の中で一番上のランクだよな?
 それにアレンって名前、どこかで聞き覚えが……。

「も、もしかして〝黒衣の魔導師アレン〟さんですか!?」

「……アルフレッド。初めてだから許すが、その名ではもう二度と呼ぶな?」

「す、すみませんでした! もう二度と口にしません!」

 アレンさんの二つ名を口にすると、俺は睨まれながらそう言われた。
 そ、そう言えば、本人はこの名前を気に入ってないって噂も聞いた事がある。

「アレン。そこまでにするんだ。アルフレッドが怖がってるぞ、今日から仲良くやっていかないといけないのに早速、溝を作るつもりか?」

「……すまん。その二つ名は気に入ってないんだ。呼ぶなら、アレンと呼んでくれ」

 エルドさんはアレンさんに対して注意すると、アレンさんは俺に対して謝罪をした。
 それから俺達は立ち話を続けるのも変だろうとエルドさんが言い、ソファーに座って話しをする事にした。

「あの、エルドさんとアレンさんとはもどういう繋がりなんですか? その、凄く親しい感じだったので」

「アレンは、儂がお主の前に拾った子なんだ。あの時は、アレンが死にそうになってる所を儂が助けたから、出会った時の状況は反対だけどな」

「その節は本当に感謝してます。あの時、エルドさんに拾われなければ今の俺は無いです」

 アレンさんはそう口にすると、チラッと俺の事を見てエルドさんに視線を戻した。

「エルドさんが死にそうになったと聞いて、相当焦りましたよ。何で護衛を付けてないんだって……でも、その原因が串肉だと聞いて、本当に呆れましたよ」

「歳には勝てん、昔は何本でも食えたのにの……」

 エルドさんは悲し気にそう言うと、アレンさんは俺の事をジッと見つめて来た。

「さっきも言ったけど、お前は才能の塊だな。ここまでの才能の原石は見た事がない」

「あ、ありがとうございます。その、でも俺はスキルを一つしか無くて家から追い出されたので、そんな才能の塊なんて……」

「それはお前の家が馬鹿なだけだろう。エルドさんから話は聞いてるが、お前のその唯一授かった能力は唯一無二のスキルだと俺は思う。俺はこれまで沢山のスキルを見てきたが、お前の持つスキルと似たようなスキルは見た事がない」

 アレンさんの言葉に俺は、なんだかむず痒く感じていると次の言葉に物凄く驚いた。

「それに……お前、神の加護も持ってるだろ?」

 アレンさんの言葉に俺は驚くと、隣に座っているエルドさんも「そうなのか!?」と驚いて聞いてきた。

「俺は、人の能力の一部を見抜くスキルを持ってる。それでお前を見たら、加護を持ってると分かったんだよ」

 アレンさんは続けてそう言ってきたので、俺はここが話すタイミングだなと思って、加護についてエルドさん達に話す事にした。
 話を聞いたアレンさんは首を傾げていたが、俺のステータスを見せると驚いていた。

「本当にない……隠蔽系のスキルがあるとかじゃないよな?」

「俺の持ってるスキルは、【経験値固定】と先日手に入れたばかりの【剣術】の二つだけです。他は何も持ってません」

「……マジか」

 アレンさんは俺の話を聞いた後、動揺していたので落ち着くまで俺とエルドさんは待つ事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下
ファンタジー
 貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。  しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。  これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

処理中です...