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第四章 古代の魔法編②

第46話 見出した光明

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「とりあえず!」

 俺は重苦しい空気を吹き飛ばすよう、
 殊更に勢いよく言った。

「やってもらうことは変わらない」

 俺はノエルに向かって「大丈夫だ」と断言して。

「事情を説明している暇はない。だが、俺たち三人は仲間なんだよ。ここに来たのもちょっとした目的があってね。さらに言うなら、その目的にノエルは無関係じゃないんだ」
「……え?」
「詳しいことは後ほどだ。今は時間が無い。メアリさん!」
「はい」
「さっきも言った通り、メアリさんは秘密の部屋とやらを探ってくれ。なんらかの手掛かりを得られるかもしれないし、もしかしたらロイスの言うお友達・・・とやらも見付かるかもしれない」

 メアリさんは「了解しました」と言い、足早に食道を去っていった。

 次はサタナだ。
 サタナにやってもらうことはそんなに多くない。

 いざとなれば、
 時間を凍結させることもできるが、

 凍結した時間の支配者はあくまでもサタナだ。サタナ以外の全生命体は停止し動くことが出来なくなる。

 そしていくらサタナと言えど、
 たった一人で都市全体を捜索しリリルを見つけ出すのは無理があるだろう。

 であるならば。
 臨時講師としての立場を演じながら、
 内通者を探す。
 それが最適だ。

 俺がそう告げると、
 サタナは「分かった」と了承しつつ、
 俺が落とした肖像画を拾い上げ、
 それに目を通した。

「……のう、レインよ」
「ん? どうした」
「この肖像画……見えるか、この部分」

 促されるがままに、
 俺はサタナの指差す場所を見やる。

 よく見ると、
 リリルの首元には何かがぶら下がっていた。それは、俺の目にはネックレスに見えた。

「レインよ、妾はこのアクセサリーに見覚えがあるのだが」

 だからなんだ、
 と言いたくなったが。
 何故か、サタナの唇は吊り上がっている。

「おい、なにか分かったのか?」
「ふふっ、褒めて遣わすぞ」

 いきなり褒められた。
 なんだ、どういう情緒だこれは。

「善行は巡り自分に戻る……人間はそのようなことを言うらしいが、あながち間違いではないのかもしれんな」

 俺たちのやりとりを、
 ノエルが目を点にしながら眺めていた。

 まるでついていけないのだろうが、
 釈然としていないのは俺も同じだ。

「妾は気に入ったもの、また、それに関与するものは滅多に忘れなくてな。例えばレイン、お主の魔力などがそうだ」

 俺はふと思い返す。
 ケルべズス戦の時。
 サタナは、俺とメアリさんが同じフロアに居ることをテレパシーによって言い当てたが。それは確か、魔力探知によるものだったな。

「このネックレスには小さな布袋が付いておるじゃろ?」

 俺はもう一度肖像画を見る。
 確かに、小さな布袋……のような物が見受けられた。
 
 だがそれでもだ。
 だからなんだという
 俺の疑問はなにも解決していない。

 などと思っていると、サタナはついに核心部分に触れた。

「お主がリリルに手渡した金貨」
「ああ、あれか。ま、ほんの気持ちだよ。あの子は真面目で良い子だしな。……あの子は嫌がるだろうが、全くの同情心が無かったといえばそれは嘘になる」
「ふふ、喜べレインよ。そしてそこの女もな」
 
 すると、サタナはいきなりとてつもない量の魔力を放出した。
 
 あまりにも強大すぎる魔力。
 きっと、教員たちは今頃、何事かと驚いているだろう。

「なんの真似だ、サタナ」
「妾は見ていたのじゃ。リリルが、レインから手渡された金貨をあの小さな布袋にしまい込むのをな。そして、妾には複数のスキルがある。その内の一つが魔力探知じゃ。今、妾は魔力探知のレベルを5にまで引き上げて、この魔導都市・カツシア全土を覆っている。一度触れた以上、あの金貨にはお主の魔力が付着している。例えそれがどんなに微弱なものであったとしても、妾にはその魔力を探知することが叶う! この意味が分かるか?」

 まさかこれほどまでとはな。
 都市全土を覆う魔力探知、か。
 だが……。

「もしもリリルが金貨を使っていたらどうすんるんだ? その場合、金貨は既に流通しバラバラ。特定もクソもないと思うんだが」
「結果良ければすべてよし、じゃ」
「え?」
「見つけたぞ。金貨三枚、しかと同じ場所にある。つまり、リリルは金貨を使わなかったということじゃろうな。ふん、らしいと言えばらしいがのう」

 マジか。
 まさか、こんなにあっさりと居場所を特定してしまうだなんて。

「ね、ねえ……」

 困惑した表情でノエルが首を傾げる。

「一体何が、起きてるの?」

 俺はノエルの頭にポン、
 と手を置いて笑った。

「良かったな、ノエル。どうやらリリルの居場所が特定できたらしい」
「本当!?」
「間違いない。女よ、妾を誰だと思っておるのじゃ。妾はマナクルス魔法学園二年の臨時講師を任されるほどの存在。その名も、サティちゃんじゃぞ?」

 こんな時に。
 いや、こんな時だからこそか。
 サタナの相も変らぬ様子に、
 俺は少しだけ、ホッと胸を撫で下ろした。
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