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第三章 マナクルス魔法学園編
第31話 レック・オルタの最悪な一日①
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「いつまで隠れてるんだ~? ってかそれで隠れてるつもりなのか? 抱腹絶倒って感じだな~」
レックはため息混じりに吐き捨てた。
すると、ザッ……ザッ……と何者かの足音が迫ってきた。
「まさか気付いていたとはっ! とでも言うと思いましたか? 気付かれることこそが我々の目的なのだとは、そうは思いませんか? 二人一組にされたのは確かに想定外。しかし我々が一番困るのは貴方自身が動いてしまうこと。異常事態を報告され、学園全体で事の対処に当たられては困りますから……と、そのような考えでの行動だとは考えられませんでしたか? でなければ、わざわざあんな目立つような形で妨害行為をするはずがないでしょう?」
うわあ、俺の嫌いなタイプだ。
いるんだよな~。
こういうさ、遠回しに表現するのが賢いと思い込んでいるバカ。
つーか異常事態を察知されたくないならそれこそ妨害行為なんてしないほうが良かったろうに。
「どうせ狙いはノエル・レイウスだろ~? ま~気持ちは分かるよ。俺もあの子のことは嫌いだからな~。闇魔法とか本当に最悪。見たくもないし関わりたくもないよな~」
ぴっしりと黒スーツを着込んだ白髪オールバックの男。
年齢は六十を超えているだろうか?
しわがれた声が「ほっほっほ」と呑気な笑みを漏らした。
「なんだ、利害は一致しているじゃありませんか。ならば争う理由もない。だというのに、どうして我々の邪魔をするのですか? 昨年と同じように単独行動での校外活動であれば、我々はスムーズに作戦を遂行できたというのに」
「は~?」
何言ってんだコイツ~。
出会って早々に「我々」とか言っちゃうし、やっぱバカなんだな~。
「分かりきったことを聞いてくるなよ面倒臭いな~。んなもん、俺が先生だからに決まってるだろ。生徒を危険に晒す先生がどこにいるんだよ。つーかよォ、一年に一度の超重要行事に水差すんじゃねえよ~」
去年のことがあったから、今回は二週間ズラしている……にしてはタイミングがピッタリだ。
考えるに。
カリキュラムは外部に漏れている。
つまり、内通者の可能性も考慮する必要性がある。
内通者が誰で何人いるのか分からない以上、これが最善手だっただろう。
レインの強さも考えれば、最低限の生徒の保護、とやらは成し遂げたはずだ~。
「ぶわははっ! 教職に就いていながらその思考停止度合い!! ああ、なんとも嘆かわしいですな。貴方のような愚者には、きっと我々の掲げる崇高なる理想は理解できないのでしょうね。存在している次元が……魂のレベルが違うのでしょう」
「……」
キモッ!
うわあ~。
こんなにキモいのは生まれて初めてかも。
これは間違いない、確信だ。
こいつ、ノエル・レイウスよりキモイわ。
「おっと失礼。長話しが過ぎましたね」
咳払いを一つ。
その後、男は両手をパンッ!
と叩いた。
と同時に現れるは、
金色に輝く一本のレイピア。
「召喚スキルか~、いいなあ~、レアだなぁ~」
召喚スキル――、
自分のアイテムや装備品を自由自在に呼び出すことが出来るスキルで、発現率は十億人に一人。
「レアなのはスキルのみならず! このゴールド・レイピアはアイテムとして使用することで爆発魔法を魔力消費なしで放つことのできる逸品なのですぞ! ……愛されたのです」
男は突如として泣き出した。
「我々は神様から惜しみなき寵愛を受けたのですッ! この世に生を受けたその瞬間に! 無償の愛、至上の愛、究極の愛、完璧な愛……」
「もういいよお前~。何をしでかすつもりなのかは知らないけどさ~、どうせ全部無意味だぜ。断言してやるよ。お前らの作戦は全部、水の泡になる」
「フハッ! 分かり易い負け惜しみですね。では早速、このゴールド・レイピアの錆にしてくれましょうぞっ!」
「え、金って錆びるの?」
「錆びませんッ!!」
ヒュンッ!!
ヒュヒュヒュヒュッ、
ヒュォオオッ!!
神速の剣技。
凄まじい斬撃が縦横無尽に駆け巡る。
その全てを、レックは必要最低限の動作で回避していった。
「流石はレック・オルタといったところでしょうか。ですがそれはアナタの実力ではない。このマナクルス魔法学園という環境ありきの強さ――そうではありませんか?」
「どうでもよくね~」
男の言葉は的を射ていた。
マナクルス魔法学園――。
その領地には複数のバフが付与されており、恩寵を受けられるのは在籍する生徒と教職員のみ。ただし、状況と条件次第ではあるが。
「確かにどうでもよいですな。どうせ貴方はここで死ぬのだから!!」
ボォオオンッ!!
突如として生じた爆発がレックの頭部をモロに捉えた。
「言ったでしょう? このゴールド・レイピアは魔力消費なしで爆発魔法を繰り出せるのだと。遠近両用の優れモノ、それがこのゴールド・レイピアなのですよ! これにて勝負あり、ですか。なんとも呆気ない結末でしたが――」
「ん~? 何言ってるんだよお前~」
男はビクリと肩を震わせながら、
シュバッ! と振り向いた。
その額と頬からは、焦りのあまり、脂汗が噴き出していた。
レックはため息混じりに吐き捨てた。
すると、ザッ……ザッ……と何者かの足音が迫ってきた。
「まさか気付いていたとはっ! とでも言うと思いましたか? 気付かれることこそが我々の目的なのだとは、そうは思いませんか? 二人一組にされたのは確かに想定外。しかし我々が一番困るのは貴方自身が動いてしまうこと。異常事態を報告され、学園全体で事の対処に当たられては困りますから……と、そのような考えでの行動だとは考えられませんでしたか? でなければ、わざわざあんな目立つような形で妨害行為をするはずがないでしょう?」
うわあ、俺の嫌いなタイプだ。
いるんだよな~。
こういうさ、遠回しに表現するのが賢いと思い込んでいるバカ。
つーか異常事態を察知されたくないならそれこそ妨害行為なんてしないほうが良かったろうに。
「どうせ狙いはノエル・レイウスだろ~? ま~気持ちは分かるよ。俺もあの子のことは嫌いだからな~。闇魔法とか本当に最悪。見たくもないし関わりたくもないよな~」
ぴっしりと黒スーツを着込んだ白髪オールバックの男。
年齢は六十を超えているだろうか?
しわがれた声が「ほっほっほ」と呑気な笑みを漏らした。
「なんだ、利害は一致しているじゃありませんか。ならば争う理由もない。だというのに、どうして我々の邪魔をするのですか? 昨年と同じように単独行動での校外活動であれば、我々はスムーズに作戦を遂行できたというのに」
「は~?」
何言ってんだコイツ~。
出会って早々に「我々」とか言っちゃうし、やっぱバカなんだな~。
「分かりきったことを聞いてくるなよ面倒臭いな~。んなもん、俺が先生だからに決まってるだろ。生徒を危険に晒す先生がどこにいるんだよ。つーかよォ、一年に一度の超重要行事に水差すんじゃねえよ~」
去年のことがあったから、今回は二週間ズラしている……にしてはタイミングがピッタリだ。
考えるに。
カリキュラムは外部に漏れている。
つまり、内通者の可能性も考慮する必要性がある。
内通者が誰で何人いるのか分からない以上、これが最善手だっただろう。
レインの強さも考えれば、最低限の生徒の保護、とやらは成し遂げたはずだ~。
「ぶわははっ! 教職に就いていながらその思考停止度合い!! ああ、なんとも嘆かわしいですな。貴方のような愚者には、きっと我々の掲げる崇高なる理想は理解できないのでしょうね。存在している次元が……魂のレベルが違うのでしょう」
「……」
キモッ!
うわあ~。
こんなにキモいのは生まれて初めてかも。
これは間違いない、確信だ。
こいつ、ノエル・レイウスよりキモイわ。
「おっと失礼。長話しが過ぎましたね」
咳払いを一つ。
その後、男は両手をパンッ!
と叩いた。
と同時に現れるは、
金色に輝く一本のレイピア。
「召喚スキルか~、いいなあ~、レアだなぁ~」
召喚スキル――、
自分のアイテムや装備品を自由自在に呼び出すことが出来るスキルで、発現率は十億人に一人。
「レアなのはスキルのみならず! このゴールド・レイピアはアイテムとして使用することで爆発魔法を魔力消費なしで放つことのできる逸品なのですぞ! ……愛されたのです」
男は突如として泣き出した。
「我々は神様から惜しみなき寵愛を受けたのですッ! この世に生を受けたその瞬間に! 無償の愛、至上の愛、究極の愛、完璧な愛……」
「もういいよお前~。何をしでかすつもりなのかは知らないけどさ~、どうせ全部無意味だぜ。断言してやるよ。お前らの作戦は全部、水の泡になる」
「フハッ! 分かり易い負け惜しみですね。では早速、このゴールド・レイピアの錆にしてくれましょうぞっ!」
「え、金って錆びるの?」
「錆びませんッ!!」
ヒュンッ!!
ヒュヒュヒュヒュッ、
ヒュォオオッ!!
神速の剣技。
凄まじい斬撃が縦横無尽に駆け巡る。
その全てを、レックは必要最低限の動作で回避していった。
「流石はレック・オルタといったところでしょうか。ですがそれはアナタの実力ではない。このマナクルス魔法学園という環境ありきの強さ――そうではありませんか?」
「どうでもよくね~」
男の言葉は的を射ていた。
マナクルス魔法学園――。
その領地には複数のバフが付与されており、恩寵を受けられるのは在籍する生徒と教職員のみ。ただし、状況と条件次第ではあるが。
「確かにどうでもよいですな。どうせ貴方はここで死ぬのだから!!」
ボォオオンッ!!
突如として生じた爆発がレックの頭部をモロに捉えた。
「言ったでしょう? このゴールド・レイピアは魔力消費なしで爆発魔法を繰り出せるのだと。遠近両用の優れモノ、それがこのゴールド・レイピアなのですよ! これにて勝負あり、ですか。なんとも呆気ない結末でしたが――」
「ん~? 何言ってるんだよお前~」
男はビクリと肩を震わせながら、
シュバッ! と振り向いた。
その額と頬からは、焦りのあまり、脂汗が噴き出していた。
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