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懐古

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期末テストの勉強会準備が始まった。とはいえ、既に過去問は持っているために場所の確保をすれば勉強会としての体裁は整う。しかし、もう1つ課題が出そうだが、アズサ・ユキ組は気づいているだろうか。

「参加者は何人になりそうや?」

「20人は越えるかな…この前補講を食らった子は噂を聞いてくるらしいから。」

「教室のキャパ超えたらどうする?それと、教える側が限界ちゃうかな。」

教える役のマサキ・カオリ・俺は基本的に聞かれたやつに対してマンツーマンで教えている。国語、英語はなんとかなっても、数学は手が足りないだろう。これはこうだ、だけで終わらないからな。

「そうやね。この前より増えるとちょっと厳しいな。」

と、答えたのはマサキだ。しかし、自分の勉強もあるし進んで教えるのを手伝いたいというヤツもそうはいないか。アズサは心当たりを探しているのだろう。考え込んでいる。ユキはこちらを見ている。

「ケイタが教えればなんとかなる。」

確かに英語はそこまで長々と教えるものでもないから、乗り切れるだろう。

「ま、今回はそれでもいいぞ。長期的にはやり方自体考えたほうがいいな。」

今回は生徒会の相手とか色々あったし、準備の時間があまり取れていないから仕方ない部分もある。だが、現状に甘んじてはいけない。どこかでイノベーションを起こさないとそこで成長は止まるのだ。

ユキは気づいていたけど、俺をアテにして何も言わなかった感じだな。横着なヤツめ。

勉強会は前回と同じように、基本的には自習、わからないところを各教科担当に聞くスタイルで実施された。人数は日によって変動はあったが、20人前後と言ったところだ。俺が数学も見ることでマサキの負担も分散できた。

最終日だけ、サッカー部の奴らがなだれ込んできた。タクミから情報を聞いて過去問を取りに来たらしい。タクミ自身も来ていた。

「部活は休みやったやろ?勉強会も来ればよかったのに。」

タクミはちらっとアズサの方を見る。

「いや、勉強にならんから…」

純情さんめ。

無事に勉強会は終了し、期末試験に突入。テストのときの緊張感って好きだったなぁとか、徹夜とかしたなぁとか、感傷に浸りつつ試験を受けた。試験の日は昼まで。午後からは部活もなく、校内は閑散としている。俺は何となく、図書館に向かった。

図書館を過去に利用したことはほとんどない。今こうして見てみると、図書室ではなく、図書館で、当然ながらに蔵書数も多く、様々な本がある。ビジネスの実用書はさすがにないが、経営学や経済学の教科書的な分厚い本は並んでいた。高校生でこれを読もうというやつはほとんどいないと思われるが。

多いのはやはり参考書、古事記や日本書紀などの歴史上にも登場しそうな書籍の解説本など、受験に何らか関係があるものが主だ。自習するスペースもあり、天窓から日が差す中で勉強ができる。現役の時に使いたかった。自習をしているのは3年生だろうか。少し同学年よりは大人びている。

その中の1人と目が合った。全く面識はないはずだが、こちらに近づいてくる。

「八代くん、やっけ?部活紹介見たで。それと、生徒会の松並くんとかも褒めとったわ。どんな子かと思ったら見た目は普通の子やなぁ。」

一応小声だが、フレンドリーに話しかけてきた。ちなみに、とても可愛らしい女性だ。

「どうも、はじめまして。八代です。あなたは?」

とりあえず丁寧に話しておこう。

「私は池田ミナ。ミナでいいよ。」

「ミナさんですね。よろしくお願いします。ところで、何かご用ですか?」

ミナは驚いたように話す。

「八代くんは私相手でも緊張しないんやね。同級生の男の子でも結構緊張する子が多いんやけどなぁ。女慣れしてる?」

「ミナさん綺麗ですもんね。そりゃ緊張しますよ。そう見せないようにしているだけです。元々ポーカーフェイスですから。」

「ははっ!こんな取ってつけたような言い方されたのは初めてだわ!キミ、やっぱ面白いね。松並が一目置く分けだ。」

「…特にご用がなければ、他の方の勉強の邪魔になりそうなので行きますね。」

「用、ね。えっと、用はあるよ。私と付き合ってみないか。」

突然何を言い出すんだこの人は。

「からかうなら別の人にしてください。では。」

そう言って、足早にその場を立ち去る。過去にもこんなことは起こってないし、からかわれたんだろう。せっかく過去を振り返って懐かしい気分になっていたのが台無しだ。

今日はもう大人しく帰って明日の試験に備えよう。
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