16 / 91
誘導
しおりを挟む
遠足の日だ。めちゃくちゃ楽しみで仕方がない。前回の記憶はほんとに残っていない。適当にやり過ごしたのだろう。こんなキラキラした青春の1ページを味わえるイベントは数少ないんだ。今を目一杯楽しみたいと思う。考え方が完全にオッサンだな。
自転車での登校途中にリナとはじめて遭遇した。過去には何度も会っていたのでようやく遭遇したという感じだ。俺はリナの後ろから並びかけ、自転車のスピードを落として声をかける。
「おはよう、リナ。今日は楽しみやな!」
「おはよう。同じ方向やったんやね。」
「みたいやな。」
「そんなに遠足楽しみやったん?」
「だって、遠足なんて久しぶりやし、高校1年生の遠足はあと秋にしかないんやぞ?楽しまない方が損やろ。」
俺は目をキラキラさせながら、リナに遠足の大切さを説く。
「そりゃそうやけど...ところでケイタくん、あんたアズサのことどう思ってるん?」
突然切り込んできたな。俺は平然と答える。
「可愛いとは思うよ。でも、恋愛対象じゃない。」
「なかなかあんな子おらんと思うけど、きっぱり断るのね。じゃあ、ユキが好きなん?」
なんでユキ?あいつはなんかまた違う感じはするが…
「いや、あいつはもっと対象じゃないな。」
「ふ~ん。じゃあアズサにあんまり優しくせんといてあげてな。」
「よそよそしくなるんも嫌やし、友達の範囲ではOKやろ。それなりに距離感は見てるつもりやけど。」
リナはため息をつく。
「まぁ、一定以上は入らせてない感じはあるわね。アズサもまた面倒なのを…」
大丈夫だ。俺がフェードアウトすれば、アズサはタクミと付き合う。この答えは口にできないため、沈黙で返す。
ほどなくして学校についた。気まずい空気になったため、その後俺たちは終始無言だ。教室にたどり着き、クラスメイトに挨拶をして席につく。
さて、遠足を楽しむために気分を切り替えないとな。あとは、ヨウスケの希望もどこかで叶えてやりたい。
行きはバスのチャーターになる。400人が一斉に電車で移動すると邪魔になるからだろうな。帰りは現地解散だ。それなら現地集合でも良さそうだが、みんなと移動するのがいいよな。
一クラス1台のバスに詰め込まれ出発する。一時間ほどで着くため、特にガイドはなしだ。
左右2列の座席に真ん中の予備シートを使い、一班ごとに座る。窓際から俺、ヨウスケ、タクミ、アズサ、リナの順番で座っている。俺はヨウスケと自由時間に行きたいところを話していた。タクミとアズサも楽しそうに話してるな。朝、リナとアズサで話してたから、少し心配だったが大丈夫そうだ。
たったの一時間だ。和気あいあいとした雰囲気のまま、京都に着いた。清水寺に寄ったあと、二条城に向かい、昼食後からは班ごとにあらかじめ決められたスポットのうち最低3ヶ所を回るというルールになっている。半自由行動みたいな感じだな。途中で寄り道、買い物はOKだ。
さて、まずは清水寺からだ。
清水寺も随分久しぶりだ。子供たちが楽しめるスポットでもないから、京都からは足が遠のいていた。…子供たち?まぁいいか。
仁王門から中に入り、有名な清水の舞台に向かう。暑くなる前の過ごしやすい季節ということもあるし、他の学校の生徒とかもいっぱいいる。修学旅行のところも結構あるんだろうな。あまり時間がなくじっくり見れないのが残念だが、三重塔は通りすがりにみるぐらいだ。
清水の舞台は人でごった返していた。これだけ多ければ、ちょっとはぐれてヨウスケとリナを2人にできるかなと様子を窺う。班で固まって動いているが、アズサはこちらに寄ってきているし、うまく会話しながら誘導してやるか。ヨウスケに目配せをし、俺はアズサとタクミに話しかける。
「ほら、アズサ、タクミ。もう下覗き込んで見たか?やっぱ結構高いぞ!」
「いや、こえぇよ!ほんとたけぇわ!」
「ほんと!でもいい眺めやねぇ!」
「そうやな。桜とか紅葉の季節もキレイやけど、この新緑の季節もキレイやな。」
普通に会話を盛り上げている間にヨウスケはうまく2人になれたな。もうちょい粘るか。
「清水の舞台から飛び降りるって言葉があるけど、実際に江戸時代には結構ここから飛んだ人がいるらしいぞ。」
「え!マジで!?なんでこんなキレイなところで自殺すんの?」
「いや、自殺じゃなくて、願掛けなんだと。運悪く死んでも極楽浄土に行けて、生き残ったら願いが叶うみたいな話なんやって。そこから覚悟を持って何かをするって言う意味の言葉になったらしいな。」
アズサとタクミは感心したように頷く。
「へー。よぅ知っとるな!ってか、桜とか紅葉とかって何回も来てんのか?」
「ま、まぁ、親が結構好きやからな。」
実際には親と来たことなんてない。誰と来たっけなぁ。亀の甲より年の功と言うやつだ。雑学知識でも知ってりゃ色々役に立つ。さて、十分時間は稼げただろう。
「そろそろ後ろに譲ってやらんとな。って、ヨウスケとリナがおらんな。」
「あー、これだけ人が多いとしゃーないね。とりあえず降りて行ったら合流できるでしょ。」
ヨウスケが満足したかどうかはわからんが、とりあえずミッションコンプリートだ。
自転車での登校途中にリナとはじめて遭遇した。過去には何度も会っていたのでようやく遭遇したという感じだ。俺はリナの後ろから並びかけ、自転車のスピードを落として声をかける。
「おはよう、リナ。今日は楽しみやな!」
「おはよう。同じ方向やったんやね。」
「みたいやな。」
「そんなに遠足楽しみやったん?」
「だって、遠足なんて久しぶりやし、高校1年生の遠足はあと秋にしかないんやぞ?楽しまない方が損やろ。」
俺は目をキラキラさせながら、リナに遠足の大切さを説く。
「そりゃそうやけど...ところでケイタくん、あんたアズサのことどう思ってるん?」
突然切り込んできたな。俺は平然と答える。
「可愛いとは思うよ。でも、恋愛対象じゃない。」
「なかなかあんな子おらんと思うけど、きっぱり断るのね。じゃあ、ユキが好きなん?」
なんでユキ?あいつはなんかまた違う感じはするが…
「いや、あいつはもっと対象じゃないな。」
「ふ~ん。じゃあアズサにあんまり優しくせんといてあげてな。」
「よそよそしくなるんも嫌やし、友達の範囲ではOKやろ。それなりに距離感は見てるつもりやけど。」
リナはため息をつく。
「まぁ、一定以上は入らせてない感じはあるわね。アズサもまた面倒なのを…」
大丈夫だ。俺がフェードアウトすれば、アズサはタクミと付き合う。この答えは口にできないため、沈黙で返す。
ほどなくして学校についた。気まずい空気になったため、その後俺たちは終始無言だ。教室にたどり着き、クラスメイトに挨拶をして席につく。
さて、遠足を楽しむために気分を切り替えないとな。あとは、ヨウスケの希望もどこかで叶えてやりたい。
行きはバスのチャーターになる。400人が一斉に電車で移動すると邪魔になるからだろうな。帰りは現地解散だ。それなら現地集合でも良さそうだが、みんなと移動するのがいいよな。
一クラス1台のバスに詰め込まれ出発する。一時間ほどで着くため、特にガイドはなしだ。
左右2列の座席に真ん中の予備シートを使い、一班ごとに座る。窓際から俺、ヨウスケ、タクミ、アズサ、リナの順番で座っている。俺はヨウスケと自由時間に行きたいところを話していた。タクミとアズサも楽しそうに話してるな。朝、リナとアズサで話してたから、少し心配だったが大丈夫そうだ。
たったの一時間だ。和気あいあいとした雰囲気のまま、京都に着いた。清水寺に寄ったあと、二条城に向かい、昼食後からは班ごとにあらかじめ決められたスポットのうち最低3ヶ所を回るというルールになっている。半自由行動みたいな感じだな。途中で寄り道、買い物はOKだ。
さて、まずは清水寺からだ。
清水寺も随分久しぶりだ。子供たちが楽しめるスポットでもないから、京都からは足が遠のいていた。…子供たち?まぁいいか。
仁王門から中に入り、有名な清水の舞台に向かう。暑くなる前の過ごしやすい季節ということもあるし、他の学校の生徒とかもいっぱいいる。修学旅行のところも結構あるんだろうな。あまり時間がなくじっくり見れないのが残念だが、三重塔は通りすがりにみるぐらいだ。
清水の舞台は人でごった返していた。これだけ多ければ、ちょっとはぐれてヨウスケとリナを2人にできるかなと様子を窺う。班で固まって動いているが、アズサはこちらに寄ってきているし、うまく会話しながら誘導してやるか。ヨウスケに目配せをし、俺はアズサとタクミに話しかける。
「ほら、アズサ、タクミ。もう下覗き込んで見たか?やっぱ結構高いぞ!」
「いや、こえぇよ!ほんとたけぇわ!」
「ほんと!でもいい眺めやねぇ!」
「そうやな。桜とか紅葉の季節もキレイやけど、この新緑の季節もキレイやな。」
普通に会話を盛り上げている間にヨウスケはうまく2人になれたな。もうちょい粘るか。
「清水の舞台から飛び降りるって言葉があるけど、実際に江戸時代には結構ここから飛んだ人がいるらしいぞ。」
「え!マジで!?なんでこんなキレイなところで自殺すんの?」
「いや、自殺じゃなくて、願掛けなんだと。運悪く死んでも極楽浄土に行けて、生き残ったら願いが叶うみたいな話なんやって。そこから覚悟を持って何かをするって言う意味の言葉になったらしいな。」
アズサとタクミは感心したように頷く。
「へー。よぅ知っとるな!ってか、桜とか紅葉とかって何回も来てんのか?」
「ま、まぁ、親が結構好きやからな。」
実際には親と来たことなんてない。誰と来たっけなぁ。亀の甲より年の功と言うやつだ。雑学知識でも知ってりゃ色々役に立つ。さて、十分時間は稼げただろう。
「そろそろ後ろに譲ってやらんとな。って、ヨウスケとリナがおらんな。」
「あー、これだけ人が多いとしゃーないね。とりあえず降りて行ったら合流できるでしょ。」
ヨウスケが満足したかどうかはわからんが、とりあえずミッションコンプリートだ。
2
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
思い出を売った女
志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。
それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。
浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。
浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。
全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。
ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。
あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。
R15は保険です
他サイトでも公開しています
表紙は写真ACより引用しました
九龍城砦奇譚
菰野るり
ライト文芸
舞台は返還前の香港九龍城。
極彩色の洗濯物なびかせながら
飛行機が啓徳空港へ降りてゆく。
何でも屋のジョニーに育てられたアンディは10才。国籍も名字もない。
少年と少女の出逢いと青春を
西洋と東洋の入り混じる香港を舞台に
雑多な異国の風俗や景色
時代の波と絡めながら描く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる