初期値モブの私が外堀を埋められて主人公になる話

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モブ、丑三つ時に青春を見る

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『ねえ私たち夏休みも遊ぼうねって言って、全然遊んでないじゃん』
 と唐突にグループラインを飛ばしてきたのは夢で、私と、恐らく五央も、「先日の話を聞いていたんか」と一瞬ドキリとした。夢にはそういう変な察しの良さと言うか、勘の良さみたいなものがある。
『そう言って一番忙しいの夢じゃん、俺はサッカー部の練習があっても夕方までだし、ない日もあるし、大抵の日は暇だよ』
 とはひーわ。このクソ暑いのにサッカー部は炎天下のグラウンドで走り回っているのだろう。夏休み前の時点で窓から覗いたグラウンドには陽炎が揺らめいていて、「うっ」と見た目の暑さで奇声をあげてしまったというのに、ひーわも颯も、サッカー部は本当に偉いと思う。後何故かサッカー部の殆どは全く日焼けをしている気配がないのだけど、それは体質……なんていうわけでもなく、日焼け止めをはじめ、練習後に冷えた化粧水でのクールダウンなど、スキンケアをしっかりしているらしい。普通に凄くない? と話を聞いたとき、私と夢は己のいい加減さを恥じた(ただそれを機に心を入れ替えたとか、そんなことは別にない。そんな直ぐに人間は美意識をあげるなんてことは出来ないのである)。
『五央は帰省したりする? 後ひかるのバイト?』
 あ、そっか、私たちみんな親の実家もこの辺だし、と思っていたけど、五央の実家は別にエマの家じゃないのか。いや五央の親の実家はエマの家だけど……あ、でも亡くなったお母さんの実家が冴羽家なだけで、五央のお父さんの家はまた日本の別の場所にある可能性もあるか。難しい。
 一方私のアルバイトといえば、夏休みは大学生さんたちが暇をしているから「代わって~」とお願いしたら誰かしらは代わってくれるだろう。そもそも週一五時間程度しか入っていないので、休まずともひーわとタイミングを合わせるのは容易な気がする。
 というか。

 わざわざ夢が自ら連絡してきたということは、何か行き詰まっているのだろうか。
 
 本当は桜森なんかに居るレベルでなく、めちゃくちゃピアノの弾ける夢は、音大入試を突破するべく、長期休みは八時間くらいピアノを弾いたりしているらしい。授業中の集中力からはにわかに信じ難いが、夢曰く「ピアノ弾くのは、めっちゃ改札前で立ち話する感じ」らしい。「足痛いしもっと話すならいっそスタバ入るか? でももう帰った方が良い時間だしなあ~。あっ、そうそうあの話も聞いてよ!」みたいな感じよ、と言っていたのだが、その気持ち、わかるような、わからないような。
 ちなみにエマもピアノがかなり弾けて、昔はコンクールなんかも出ていたようなのでこのことを尋ねてみたら、「私はその域までは好きになれないし暮らしに出来ないわ。普通に進学して良かった~」と言っていたので、夢はレアなのかもしれない。

『ちなみに俺はずっと日本に居る予定だから、多分この中で一番暇だと思うけど。夢は何したいとかあるの?』
 と気付けば五央からのメッセージと、
『プール! 或いは海!』とひーわからのメッセージが来ていた。ひーわ、お前は本当に太陽が大好きなのね。
 でも夢はどうやらそういう気分ではなかったらしい。
『私、夜中にめっちゃサイクリングしたいんだよね!』
 とのメッセージと、目をキラキラさせた、何かの漫画のキャラクターのスタンプが送られてきた。
 文面、というか主にスタンプのテンションこそ高そうだが、夜中にサイクリング、を唐突にポジティブな気持ちでやりたがるだろうか。こうなってくると勿論乗ってあげたいが、私には大いなる問題がある。自転車、乗れない訳じゃないけど……乗れない訳じゃない、っていうレベルなのだ。わかってくれ。
 一人で夜中に人も車も少ない、平らな道を通って近所のコンビニに行くくらいはなんとかなる。でも朝、人の多い駅まで自転車を使うのはちょっと憚られる、多分十人くらいに「邪魔だな」って舌打ちされる。……ごめん、十人は盛ったけど、たまに自転車に乗ると十中八九一度くらいは誰かに舌打ちされるのは事実だ。乗れないわけではないけど、サイクリングってどうなんだろう。私のフラフラ運転でも大丈夫なんだろうか。そして夢の言う『めっちゃ』は「サイクリング欲がめっちゃ高い」のか「めっちゃ長い距離をサイクリングしたいのか」、それによっても話が変わってくるだろう。うー。

『あの、ちょっと一回今、通話出来る?』
 そう送ってから私は、最早反射で両手を合わせて冷や汗を流すうさぎのスタンプを押した。



「ひかる、自転車乗れなかったんだ……」
 顔は見えないけどいかにも口をあんぐり、という風な感じで夢が言う。笑いも茶化しもなく心底驚いているのが悔しい。
「別に乗れない訳じゃないのよ」
「はいはい」
 今適当にあしらったの五央とひーわどっちだ? 両方か? 我が家のWi-Fiのせいか誰かの回線のせいか、ほんの少し声がガサガサして、男連中は特に、どっちがどっちか聞き取りにくいタイミングがあるのだ。命拾いしたなお前ら。
「んーとじゃあね、五央、私の電動ママチャリに乗って、後ろにひかる乗っけたげてよ」
「は?」
「五央ならいっつもチャリ通だし、それに電動だから全然しんどくないと思うよ。私だって妹乗っけて駅まで爆走したことあるけど、なんとかなったから」
 今自転車二人乗りって駄目なんじゃなかったっけ? と思ったけど、でもほんのちょっと憧れもある。夜中なら日中にやるより迷惑をかける可能性も少ないし、人生一度きりのワル、としたら見逃してくれたりしないだろうか。
「私はただ後ろに乗って、夜の綺麗な街を眺めてれば良いってことだよね?」
「そう。楽しそうでしょ?」
「うん。かなり。想像しただけでウキウキしてきた」
「ねえ、二人はどうかな?」
 そう伺うように言う夢が、珍しく少し弱気な声色で、やっぱり少し元気がないようだ、と五央とひーわも気付いたのだろう。それでなのか二人とも、
「まあいいか」
「いいよー」
 とそれぞれなんなら普段より明るい声色で肯定した。

 それから天気予報とカレンダーと睨めっこして日取りを決めて、結果五央の家にお泊まり会をすることにして、終電帰りの人も居なくなった夜中の二時くらいに出発しよう、と決まった。
「五央って一人暮らしでしょ、私たち行って良いの?」
 と夢が不安そうに聞く。逆に一人だから良いんじゃないの? 親が居たりしたら、いくらジェンダー論あれこれ言われるようになった世の中とは言え、男女四人のお泊まり会はほぼ絶対に無理だろう。
「別に良いけど、なんで?」
 五央もそう思ったのだろう、不思議そうに夢に尋ねる。
「うーん、ほら、高校生で一人暮らしって珍しいから、溜まり場にされちゃったりするの嫌かなあって。あとご両親とか、それこそその従姉妹さんちのこととか、大丈夫かなあって」
「お前ら溜まれるほど暇じゃないじゃん、し、別に溜まりに来てもこっちは良いし。親はまあ、こんなに男女が~って考えすぎるのって日本だからじゃない? そもそも前の学校は同性カップルだって居たし」
「そっかー……そっか」
 と夢は何かを噛み締めるように言う。
「やっぱりめちゃくちゃサイクリングしてえー!」
 珍しくわざとらしい口の悪さで、夢が叫ぶもんだから、ただでさえ安定しない音声通話がとんでもなくガビガビして、私は苦笑しながら思わず耳を塞いだ。

「あ、丑三つ時サイクリング、絶対忘れないように今手帳に書いといてね! 特にひーわ!」
 丑三つ時サイクリングってその通りなんだけど、肝試しみたいになってるけど大丈夫?
 そんなことを思いながら、でも私はちゃんと言われた通り「丑三つ時サイクリング」と手帳に大きく書いて、さらにその日を大きな丸印で囲んだ。



 そうして手帳を丸で大きく囲んだ日の夕方、無事みんなで日延神社前に集合する。
 意外にも一番遅刻してきたのは夢で、でも「ごっめーん」と汗だくで現れた姿を見て納得が行く。
「夢、家から自転車で来たの?」
「そうだよ! グーグルマップは四十分って言ってたのに、一時間くらいかかったんだけど!」
 半ばキレながら言う夢に、電動とはいえお疲れ様……と手を合わす。すると夢は、
「死んでない死んでない! 一時間サイクリングくらいでくたばらない! でもシャワーは一回借りたい」
 と相変わらずの大声でツッコんでくれた。うん、これだけ元気なら、丑三つ時サイクリングも大丈夫だろう。
「シャワー全然良いけど、あんまりうちに食糧とかないから、先に一回そこのスーパーとかコンビニ寄って買い物させて」
 そう五央が言うと、「はーい!」と夢は元気すぎるくらいの大声で、まるで幼稚園児みたいな良いお返事をした。そこでやっぱり、何かおかしい、と私とひーわは顔を見合わせる。あの日からずっと、から元気って感じなのだ。今日で何か解決したら良いけど。そう思いながら私たちは内容なんてないような(親父ギャグではない)会話をしながら、スーパーとコンビニで夕飯の食材やおやつを買い漁るのだった。

「こういう時の夕飯はやっぱりカレーだよね」
 というひーわの一声で、献立が決まる。正直、私は毎日自分のお弁当を作ってはいるけど、しっかりと夕飯を作った経験はあまりないし、夢に至っては基本的に指に怪我でもしたら大問題なので、包丁を持たせたくない。だから誰でも作れるカレーっていうのは、ちょっとホッとする。まあ五央は一人暮らしだし、ある程度料理出来るだろうけど。と思っていたら、
「カレーって付け合わせに困るよね、お、豚肉もまあまあ安いけど、鶏めっちゃ安いじゃん。ポークカレーだけどチキンカツカレーにしちゃう?」
 とひーわがニコニコしながらお肉の乗ったトレーを吟味しだす。
「もしかして、ひーわ、料理結構出来たりする?」
 と五央。
「結構かはわかんないけどうち、夕飯作るの当番制だから、俺も週一くらいは作ってるよ」
 神だ。ひーわが居れば食事問題は安泰だ。今日はお前について行くぞ、ひーわ。
 
 かくして夕飯の献立は、チキンカツカレー、スパニッシュオムレツ、サラダ、そしてデザートに各々好きなアイス、と献立が決まった。正直、うちのカレーより豪華かも知れない。食べ盛りの高校生男子が居ないこともあるけど、我が家はカレーならその他は基本サラダだけだし、カレーの日に揚げ物があるとしたらそれはお惣菜コーナーのものだ。
 そういえばひーわは長男で、弟とか居るんだっけ。下も中学生男子なら、そりゃあガッツリ品数も必要だろう。
 五央も一応お母さんは違うけど、弟が居る長男。夢は四姉妹の三番目だから一応下に妹が居る。私だけ末っ子かあ、となんだか急に口をとんがらせたい気持ちになった。兄と私なら兄の方がしっかりしてるけど、この四人の中じゃ割と私もしっかりしてると思うんだけどな。うーん、こういうところがもう末っ子気質なんだろうか。どう思う? なんてみんなに聞いたら馬鹿にされることは間違いない。そうだ、今度エマに聞こう。エマは一人っ子だし。



 食後のアイスを各々食べながら、今日の行程について話し合う。
 私はサクレのレモン。夢はパピコのチョココーヒーを一人で二本食べ。ひーわは爽のバニラで、五央はパルム。キャラが出てる。
「こっから夢んちの方面に、川沿い通って向かってくのが良いかなって思うんだけどどうだろう。場所にもよるけど結構サイクリングしてる人とかランナーが多いみたいで、案外道が舗装されてるっぽいんだよね。何より車が来ない」
 と五央がスマホをスッと出す。それは画像検索の画面で、幾つかの緑に囲まれた道の写真が並んでいて、リンク先はブログや地域のサイトのようだった。
「夢、マップ見て来たってことは多分大通りから来たでしょ? だから行きとは違う道だし、明日また一時間かけて帰るの無謀だから一回自転車置いて、帰りはひーわの後ろに乗ろう」
「え」
 と夢は固まるが、まあ一理ある、と私も思う。明日また一時間かけて一人いやいや自転車で帰宅したら、今日仮に晴れやかな気持ちになったとしてもなんかまたげんなりしてしまいそうである。
「夢、私より小さいし軽いし、別にひーわだって毎日炎天下走りまくってるんだから、二人乗りくらい大丈夫じゃない?」
 実際私と夢の身長は十センチくらいは違う。つまり体重も……そう考えると急に五央に申し訳なくなるけど、それはこの際置いておこう。最悪走れば良いし。
「あんまり大声では言えないけど、サッカー部でチャリ二ケツしたりしてるし……じゃんけん負けたら俺よりデカいやつら後ろに乗せて漕いだりしてるから、正直夢くらいなら別に……だな」
 とひーわが少しバツが悪そうに頭を掻く。
 サッカー部、本当にファミレスで馬鹿騒ぎしたり、自転車二人乗り常習犯だったり、いつか全員まとめて生徒指導室に放り込まれそうだ。でもそれすらも楽しい思い出にしそうなバイタリティがあるから、ちょっとだけ羨ましい。私は絶対にやらないし、そんな目に遭いたくないけど。
「っていう訳だから、最初は夢の自転車に俺とひかる、俺の通学自転車に夢、俺のサブ自転車にひーわ。で、帰りは俺の通学自転車に俺とひかる、俺のサブにひーわと夢。どう?」
 そこでふと、私はあることに思い至る。
「五央さん!」
「はい、どーぞ、ひかるさん」
「五央のサブチャリってマウンテンバイクじゃないの」
 前に部屋にあるのを見せてもらったお高いらしいカッコいい自転車、てっきりあれを貸し出すのかと思っていたのだけど。
「あのバイク貸すわけないだろ。ひーわに貸すのは、まあ後で見たらわかるんだけど、ちょっと傷付いて凹んでたりするんだよね。一回車に当てられて、保険で新しいの買ったの。それが今の通学自転車。でもぶつけられた方も一応修理出してみたら治ったから、捨てるのも勿体無いし、この部屋、自転車二台分駐輪スペース振り分けられてたし、取り敢えず置いてる、ってやつ」
 なるほど。五央、身体一つに対して自転車三台もあるのか。事故のせいとはいえ、シンプル意味不明である。
 夢も同じことを思ったのか、
「五央、自転車は基本的に一人一台しか運転出来ないんだよ」
 と二本目のパピコを咥えたまま眉間に皺を寄せる。
 それに乗るようにひーわが「そもそも……」と言いかけて、ほんのごく一瞬の間の後、「アイスやば、底の方溶けてる! 俺固いのが好きなんだけど」と大声で嘆く。
 それで五央は自分のパルムもバニラの部分が溶けかけていることに気付いたようで、「やっべ!」と慌ててかき込む。
 私のサクレはかき氷だから溶けても美味しいし、そもそももう上に乗っていたレモンを食べるだけという状態だったので、余裕綽々顔で二人を眺める。話しながらもアイスを着実に食べ終えようとしていた夢も一緒だ。

 ひーわが言いかけた「そもそも」は、五央の家庭環境――私たちに比べてめちゃくちゃ裕福なこと――とかだろうか。桜森に居るのがおかしいくらいだもん。
 でもそうなっているのは五央の選択じゃなくって、そしてそれは夢もそうで。
 だから言いかけたのをふと立ち止まって考えられる、そしてそんな雰囲気をおくびにも出さない。そんなひーわはやっぱりすごいな。押し付けがましくない、なんなら誰にだって気付かれないような優しさ。そういうのがあるやつだから、私はずっとひーわのことが好きなんだ。
 一人でエモくなってなんだか恥ずかしくなった私は、残っていたレモンを一口まるっと口に放り込む。ん、なんかいつもより酸っぱい!
「ひかる、レモン当たりだったの? すんごい顔してる」
 夢がふふふ、と笑って、それから五央もひーわも私の苦悶の表情を見て笑った。
 毎日がずっと、こんなに単純でくだらなかったら良いのに。そうしたらきっと、みんなが何かにぶち当たっているとき、ただ努めて変わらない顔をして見守ることしか出来ない自分のことも、もう少し肯定してあげられるかも知れなかった。



「みなさーん、準備は良いですかー!」
 と一番なんの準備も要らない私が、ガイドさんのように手を上げ小声で、でも明るく大声のように問いかける。
「ひかる準備も何もないじゃん」
「ひかるには言われたくない」
「それはひかるの役割じゃない」
 と誰が誰だかわからないが口々に否定され、私は眉間に皺を寄せる。
「私が一番暇だから聞いたんじゃん!」
 は華麗にスルーされ、なんだかんだ普段の活動範囲が広く、一番土地勘のあるひーわが、「じゃあしゅっぱーつ!」と高らかに宣言し、その後に夢、そして五央と私が続いた。
 特に相談もなく、夢をちゃんと挟む辺り二人の優しさが出ている。夢が一人になりたかったら、川沿いまで行ってから自分でペースを調整すれば良い。でもそれまでは自転車に乗っているとはいえ一応夜道だし、落ち込んでいるなら一人にしないでおいてあげたい。

「この辺から車は来なくなるけど街灯減るし、ランナーとかも居るから気をつけてー!」
 と前方のひーわから大声がする。さっきまではちょこちょこ大型トラックが通っていたりしたからまだ耳が本調子ではないが、最後尾の私にもしっかり聞こえる運動部仕込みの大声に私は小さく笑う。
「はーーーーーーーーーーーーい!」
 ともし文字に表したら伸ばし棒何個分だろう、というテンションで返事をする夢。それに五央が笑っているのが背中が震えているのでわかる。これは五央、返事出来なそうだ、と今度は私が「はーーーーーーーーい!」と今年一番くらいの大声で返事をする。夢には敵わないけど結構な大声を出せたおかげか、五央の背中は大きくビクッと跳ねる。それが面白くって、私は自転車の後ろに乗るのに慣れたこともあって、片手を五央の腰から外しパーンッと背中を叩く。
「なんだよ」
「振り向かない! 安全運転して!」
 私が笑いながらそう言うと、「自分で漕げないくせによく言うよ」と不貞腐れたような声色がする。五央が声にこういう表情を乗せるのはなんだか珍しくて、私は悪口を言われているのにまた笑ってしまいそうになって、そっと唇を噛んだ。
 川沿いの道はサイクリングロードと化している一本道で、でこぼこなんかもなく後ろに乗っている分にも恐怖を感じることはなかった。車も来ないから川に映る夜景を見ながら走る余裕もある(もっとも私は運転していないが)。
「昼間のここの川って別に特別綺麗でもないけど、この時間だと汚いゴミとか手入れされてない枯れた草とかは全部暗くて見えなくって、ちらほらある街灯と遠くの家とかビルの明かりだけが見えて、なんか夜も良いな」
 と五央が言う。
「そうだね。あんまりここ来たことないけど、さっき写真見せてもらったときもそんなに綺麗なイメージなんてなかったもんね。でも今はなんか前の二人の自転車のライトと、街灯と、水面に映る明かりだけがゆらゆらしてて、なんか違う世界に来たみたい」
 私がそうぼんやりとした気持ちで感想を述べると、
「ひかるってときどき詩的だよな」
 と感情の読めない、ぼそっとした返事が返ってきた。
「褒めてる? 馬鹿にしてる?」
「どっちでもないかも。ただ思ったこと言っただけ」
 なんだそれ。そう言った私に五央は返事をしなかった。
 私たちは四人で居て、四人で同じ空気を纏っているのは確実なのに、その中に更にもっと小さな私と五央だけの空気を纏った部屋があって。更に言えば私と五央の空気の部屋のにも、私だけの空気の部屋もある。同じなのにちゃんと私たちは個で、でも同じなのだ。今までは同じで居るために個で居ることを捨てなきゃいけない関係もあったし、逆に個を失いたくなくて同じ空間に居てもどこか違う関係もあった。こうやって自分は自分のまま、でも自然に寄り添っていられる関係っていうのはきっとすごく貴重で、そうそうないものなんじゃないか。なんだかそんな気がする。
「ひかる、多分人来なそうだし、夢の隣で並んで走る?」
 私がぼうっとそんなことを考えていると、五央が言う。
「そだね。前後だと話しにくいもんね。ひーわに話しかけるにも、この距離だとすんごい大声出さないといけないし」
「じゃ、ちょっとスピード出すから。ちゃんと掴んで」
「うん」
 私は途中からなんとなく五央のシャツの裾だけをちょこんと握っていたのだけど、その手を一度緩め、また五央の腰へと回す。五央の身体は私の手より熱くて、おくら電動とはいえこうして後ろに乗っているだけの自分が少し申し訳なくなる。ごめんね、と出そうになるのを慌てて飲み込んで、いや、ここはこっちじゃないな、と私は「ありがとう」とだけ呟いた。その声は思ったよりずっとずっと小さくて、もしかしたら五央に聞こえないかも、でもそれはそれで良いや。そう思っていたのに、私たちの距離は近すぎたのだろう。「おう」と私の声より更に小さな声が私の手に響いてきて、なんだかすこしむず痒く、恥ずかしくなった。あっという間に私の手も五央の身体と同じくらいの温度になった気がしてそれが更に私を恥ずかしくさせるが、よく考えたら温かいものを触っている手が温かくなるのは当たり前か、と一人納得して、私はスピードが上がりさっきより強く当たる風を感じながら、心地よいな、と思った。

「ゆーめー!」
 と私はさっきよりかなり近付いた夢に声をかける。夢はハッとしたような雰囲気を出し、そして自転車のスピードを緩める。
「やばいね、夜のサイクリング。なんか私たち以外の人は居ないし気配もないし、景色も全然違う風に見えるし、知らない世界にでも来たみたい」
 そう言う夢はやっぱりどこか本調子じゃない、そんな気がする。でも話をしないことには……って言ったってこうやって並走で喋るにも限度があるしな、そんな風に思っていると、前方のひーわがブレーキをかける。どうした? と倣って私たちも自転車の速度を落とす。
「じゃーん、ここ、休憩ポイントね」
 とひーわが指差した先にはなぜかバス停みたいな簡素なベンチがあった。そしてこの川沿いの道を抜ける横道の少し先に、自販機の明かりも見える。なるほど。多分本当にここはウォーキングなんかをしている人のための休憩ポイントなのだろう。設置されたのがベンチが先か自販機が先かはわからないけど。
 私たちはベンチの周りに適当に自転車を停め、そうして一応しっかりと鍵を掛けたあと、ダラダラと体育のあとみたいな足取りで自販機へと向かう。一応ちゃんと財布を持ってきて良かった。コンビニくらいは寄るかな、とぼんやり思っていたのだ。
「お、ここモンスターあるやん、飲も」
 とひーわが二百円を入れて迷わずボタンを押す。
「リッチ~。っていうか寝れなくならない?」
 と夢。
「んー、まあまだ折り返してもいないから、しばらくは眠くならないほうが良いし大丈夫っしょ」
 とひーわは満足気に自販機からその縦長の缶を取り出す。
「俺普通にスポドリな気分だったけど、なんかこの見たことないやつ怖いな」
 と人差し指をゆらゆらと悩ませているのは五央。確かにポカリでもアクエリでもないスポドリはちょっとどんなものか想像がつかないので、買うのに勇気が要る。
「私はサイダーだな。駅のホームの自販以外でこのサイダー初めて見た」
 と夢は迷う五央の背中を飛び越えるように腕を伸ばし、私は初めて見るサイダーのボタンを迷わず押す。即決するってことは美味しいのだろうか? 一口ちょうだいってお願いしてみようかな。
 かくいう私は梅ジュースのボタンを押す。自販機でしか見たことのないものだが、案外美味しいのである。
「みんなすぐ決まるじゃん。ええい、俺もこの知らんスポドリ飲んでみよう」
 ガコン、とスポドリの落ちてくる音がして、五央が取り出し口に手をやる。こうして四人の手にはそれぞれの飲み物が握られた。
 それを確認して、ひーわが言う。
「よし、それじゃあ丑三つ時サイクリングに、かんぱーい!」
 かんぱーい! と勢いで私たちも続くが、正直何が乾杯なのかわからない。けれどなんだか言いようのない高揚感みたいなものに包まれて、自販機の明かりもイルミネーションなんじゃないかみたいな気持ちになってくる。
 とはいえ一口飲んで喉の渇きが癒やされると、「鍵かけてるとはいえ自転車のとこ戻ろうか」と急に冷静になったひーわが言い出したので、全くもってその通りだ、と私たちはまたダラダラと元来た道を歩いて行くこととなった。

 ごくごくナチュラルにベンチに私と夢が座り、五央とひーわは自転車にもたれかかっている。夢の話を聞くならこうだろうと自然にフォーメーションが出来ているあたり、短いようで結構深い私たちの関係が垣間見える。
 私は五央を見て、ひーわを見て、それから夢を見る。聞いて良い、と夢の横顔が言っている。
「ねえ夢、夏休み、なんかあった?」
 私はむしろ不自然な感じで聞く。明らかに普段のどうでもいい雑談ではないよ、というトーンで。夢を見る五央とひーわも同じだ。
「夏休みっていうかさ……。進路希望用紙、渡されたじゃん?」
「夏休み明けに出せーって言われたやつ?」
「そう」
 確かに夏休み前、初めての進路希望調査票を渡されたが、詳細は書けなくても良い、と米印で記載があったはずだ。うちの学校の生徒は大体が進学するから、みんな取り敢えず進学希望、とだけ書くものだと思っていたし、私はそうしている。五央もそう思ったようで、
「あれ別に進学って書いときゃ良いんじゃない? 夢、就職しないでしょ?」
 と首をかしげる。
「そうなんだけどさ、なんか考えちゃって。私、音大行ってピアノやりたいなって思ってたし、なんなら本当は音高受けて音大行ってーって考えてたんだよね」
「夢ってインフルで音高受けられなかったんだよね?」
「うん。なんかそれでこう……。もうどうしたって音高の人とは差がついちゃってるし。そうじゃなくても音大でピアノやっても、結局音楽で食べていける人なんて一握りで、よくて音楽科の教師とか幼稚園教諭とかの資格取って働く、みたいな人も多くてさ。なんか、物凄いお金をかけて音大に行って、私はそれだけの価値がある学びとか成長とか、就職とか出来るのかなって考えたら、日和っちゃってさ」
 音大に入れない可能性を考えないのが流石夢である。彼女は音高だって受けていたら絶対入れていたと思っている。それくらい、ピアノには人生かけて、真剣に愛を持って打ち込んで来ているのだ。夢は日本にたくさん居るであろう、ピアノを習っている、習っていたことのある人の中で、間違いなく上位の才能を持っている。でも音楽の世界って時には日本で一番だとしても駄目なくらい広い。上位の才能ごときじゃ打ち勝てない、神に愛されているようなものを持った人がこの世には間違いなく居る。そしてきっと夢は、自分にはそこまでの才能はないと思っているのだろう。
「好きだからもっと知りたい、じゃ駄目なの?」
 と突然、ひーわがぼそっと呟く。
「好きだから?」
「そう。だからさ俺、体育大行きたいんだよね。運動するのが好きだから。正直俺ってサッカー部の中でもそこそこって感じだし、そもそも桜森のサッカー部自体強くもないし、体育大行ってもプロになるとか自分がスポーツする側になるのは無理だと思う。でも好きだから自分の限界も知りたいし、本物に打ちのめされたい。あー駄目だった、ってやりきって悔いなく違う人生歩みたいじゃん」
 正直ひーわがここまで具体的に進路を考えていたなんて意外だった。でもそうか、打ちのめされて駄目だって思うことにも意義はある。傷付くけれど、あのときああしていればもしかしたら、なんて亡霊に囚われず、次の道へ進めるのは良いことだと思う。そう思い、私もひーわに続き話し始める。
「私はさ、夢やひーわみたいに、やりたいことってないんだ。だから多分適当に入れそうな大学入って、出来そうな仕事をやるんだと思う。でももしどこかで、あ、これやりたいって何かに気付いたときにさ、もう手遅れになってるかもしれないって怖いの。ほら、世の中には年齢制限があるものもいっぱいあるでしょ」
 世の中には大人しか出来ないものもある反面、若い人しか出来ないものもある。将来性がないと言われ大人は切り捨てられてしまう。私がもっともっと大人になってから出会ったものがそれだったら。挑戦すら出来なかったら、と思うと怖い。
「だからね、やりたいことがわかっててチャレンジ出来るなら、勝率とかは置いておいてやってみたら良いと思うの。私は夢がすごいピアノが好きってことしかわかんないから、こんなことしか言えないけど」
 私にはちょっとの才能もないから、夢のピアノは上手、ただそれしかわからない。たまに学校で弾いているところを見ると、お喋りするみたいに当たり前に指が動いて音が鳴ってリズムが出ていて、あー、本当に弾ける人ってこんな感じなんだ、と聴き入るというか見入ってしまう。でもきっとそんな人、音大にはごろごろ居るのだろう。
「なんかさ、もしかしたらちょっとズレてるかもしれないこと言って良い?」
 と聞き役に徹していた五央が、珍しく自信なさげに小さく手を挙げる。
「うん」
「あのさ、夢は今片想いしてて、こう脈あるようなないような……いやあないかな、なんて思いながらも好きで諦めきれなくて、て感じじゃん。でもそもそもまだフラれてないし、なんなら本当はフラれても迷惑かけなきゃひっそり好きで居る分には良いと思うし……じゃなくて、その、今まだ告白してフラれるタイミングでも、勝手に諦めるタイミングでもないと思うんだよね、俺は」
 五央にしては少し歯切れが悪い。でも夢は何かがわかったらしい。ほう、とでも言うような、面白がっているような、さっきまでとは違う明るい顔をしている。
「それはそう、私もそう思うよ、五央。そっか、今じゃないね。確かに。全然絶対今じゃない」
 夢はなんだか意味深にも取れるようにそう言うけれど、私さっぱり訳がわからずひーわにこっそり目配せをする。しかしこれについてはどうやらひーわもわかっていないようで、私と同じような表情をしている。
 それから夢は私をひーわと五央を順番に見ながら言う。
「確かに、好きなら負け戦かもしれなくてもチャレンジしたいね。絶対そういう人生のが楽しいもんな」
 夢はサイダーのペットボトルのキャップを開けながら、話を続ける。
「誰かへの迷惑とか余計な苦労とかを考えて自分の好きを諦めても、結局綺麗に蹴り付けられてない時点で絶対多かれ少なかれまた別の迷惑掛けちゃうと思うもん。もう好きだって思っちゃったらしょうがないんだよね」
 そう言ってサイダーがゴクゴクと喉を鳴らして飲む夢は、まるで恋バナでもしているような横顔だった。青春だ、と思わず胸がきゅーっと絞られるような気持ちになる。実際はもっと深い話をしているのに、なんだか不思議だ。
 私もそんな夢を見ながら梅ジュースを飲んで、あ、そういえば夢のサイダー一口貰いたいんだった、と不意に思い出す。
「ねえ夢、そのサイダー一口ちょうだい」
「良いよ~、はいどうぞ」
 夢から手渡されたサイダーは炭酸が目に沁みて、でもサイダーというよりはこの前夏祭りで飲んだラムネみたいな味がして、変なの、なんだかこの夏は一生忘れない、そんな気がした。



 それからしばらくして夢の家に向かい、夢はひっそりと、まるで泥棒でもするかのように自転車を戻す。
「よし、ミッションコンプリート! じゃあ悪いけどひーわ、帰りはお願いします」
「サッカー部で鍛えた健脚に任せてよ!」
 なんてやっている夢とひーわを見ながら、私はそっと五央に、
「また今来た道戻るし今度は電動じゃないし、大丈夫?」
 と訊ねる。
「嘗めすぎ」
「でも私、夢と違って軽くないし」
「その身長の割には軽いんじゃない? 比較してみたことないからわからんけど」
「まあ……確かに太ってはないよ」
 一応体型には気を使っている。多少は筋トレしたりするし、なにより学校があるときは、お昼に菓子パンを食べたりしないでお弁当を作っているし。
「そもそも俺、疲れてそうに見える?」
「見えないけど……。五央疲れても言わなそうじゃん」
「いや、言う」
「そうかなあ」
 五央ってなんだかんだ優しいしなあ、と思っていると、「行くよ?」と夢から声を掛けられる。まるで夢が運転手みたいなその雰囲気に、なんだか馬鹿馬鹿しくなって、「はあい」と私は気の抜けた返事を返す。
「じゃあ恐れ入りますが、帰りも何卒よろしくお願い致します!」
 と私が五央に手を合わせ五央の後ろに乗ると、
「承知致しました」
 と五央もふざけて敬語で返してきた。
 字面だけ見たらビジネス文書みたいなその言葉の並びが面白くって、私が思わず吹き出すと、五央もつられて笑ったのだろう、小さく前の背中が揺れた。
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ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。 好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。 それはもうモテなかった。 何をどうやってもモテなかった。 呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。 そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて―― モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!? 最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。 これはラブコメじゃない!――と <追記> 本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

アイドルと七人の子羊たち

くぼう無学
青春
 数多くのスターを輩出する 名門、リボルチオーネ高等学校。この学校には、『シャンデリア・ナイト』と呼ばれる、伝統行事があって、その行事とは、世界最大のシャンデリアの下で、世界最高のパフォーマンスを演じた学生たちが、次々に芸能界へ羽ばたいて行くという、夢の舞台。しかしその栄光の影で、この行事を開催できなかったクラスには、一切卒業を認めないという、厳しい校則もあった。金田たち三年C組は、開校以来 類を見ない落ちこぼれのクラスで、三年になった時点で この行事の開催の目途さえ立っていなかった。留年か、自主退学か、すでにあきらめモードのC組に 突如、人気絶頂 アイドル『倉木アイス』が、八木里子という架空の人物に扮して転校して来た。倉木の大ファンの金田は、その変装を見破れず、彼女をただの転校生として見ていた。そんな中 突然、校長からこの伝統行事の実行委員長に任命された金田は、同じく副委員長に任命された転校生と共に、しぶしぶシャンデリア・ナイト実行委員会を開くのだが、案の定、参加するクラスメートはほとんど無し。その場を冷笑して立ち去る九条修二郎。残された時間はあと一年、果たして金田は、開催をボイコットするクラスメートを説得し、卒業式までにシャンデリア・ナイトを開催できるのだろうか。そして、倉木アイスがこのクラスに転校して来た本当の理由とは。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

鍵の海で踊る兎

裏耕記
青春
君の演奏を聴いたから、僕の人生は変わった。でもそれは嬉しい変化だった。 普通の高校生活。 始まりは予定通りだった。 ちょっとしたキッカケ。ちょっとした勇気。 ほんの些細なキッカケは僕の人生を変えていく。 どこにでもある出来事に偶然出会えた物語。 高一になってからピアノなんて。 自分の中から否定する声が聞こえる。 それを上回るくらいに挑戦したい気持ちが溢れている。 彼女の演奏を聴いてしまったから。 この衝動を無視することなんて出来るはずもなかった。

俯く俺たちに告ぐ

青春
【第13回ドリーム小説大賞優秀賞受賞しました。有難う御座います!】 仕事に悩む翔には、唯一頼りにしている八代先輩がいた。 ある朝聞いたのは八代先輩の訃報。しかし、葬式の帰り、自分の部屋には八代先輩(幽霊)が! 幽霊になっても頼もしい先輩とともに、仕事を次々に突っ走り前を向くまでの青春社会人ストーリー。

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