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第33話 パーティーでRTA?
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二人を呼び出してもう一度注意を促す。
「ここでの戦闘は俺のプランにはない。二人とも武器をしまってくれ」
「戦わないのか? みんなで戦えばすぐだろう」
「そうよ。私たちが苦戦する相手じゃないわ」
「説明している時間が惜しい。とにかく言う事を聞いてくれ」
血気盛んな奴らだ。
早く戦わせろと目が訴えている。
だが、俺の表情が真剣だったからか、二人はとりあえず武器を収めてくれる。
二人に説明して欲しいと詰め寄られる。
もとよりそのつもりだったので、簡単に説明する。
「とりあえず低階層では戦わない」
「戦わない? 何故だ?」
「時間の無駄だからな」
低階層では戦わないと言ったのは半分嘘だ。
本当の事をいったら怒りかねんからな……。
二人ともダンジョンに関してのイメージが固まり過ぎているのだろう。
敵と戦わないという発想が無いみたいだ。
勝てる敵とは戦い、勝てない敵からは逃げる。
たしかに戦いの鉄則のようなものだが、第三の選択肢、勝てる時でも逃げるというのは意外に重要だ。
それは何もタイムアタックに限った事ではない。
でも今はそんな戦術論を語っている時ではないな。
指示を出し、その通り動いてさえくれれば俺には文句はなかった。
「まだまだ時間に余裕はあると思うが、話している時間が惜しい。とりあえず指示にしたがってくれればいい。もちろん指示を出すまで戦闘禁止」
二人は少し不満気だ。
マリスを見習って欲しいな、全く。
「大丈夫だ。お前たちの実力を発揮してもらう場面もある。とりあえず最初は俺の言う事を聞いてくれ」
出番があると言ったおかげか、二人はとりあえず納得してくれた。
「サラ。お前は普段からこのダンジョンに来ているんだろ?」
「ええ。それが何か?」
「じゃあ、サラが先頭な」
「いいけど。戦わないんでしょ? 一体どうするの?」
「そんなの……走って抜けるに決まってるだろ? とりあえず全員十階層まではマラソンな。もちろん武器はしまったままでだ」
全員は顔を見合わせた後、一斉に驚く。
先頭を走る予定のサラが当然の疑問を投げかけてくる。
「敵の攻撃を受けたら?」
「そのまま走るんだ」
「そのまま走るって……ダメージを受けたらどうするのよ?」
「大丈夫。この辺の階層で大ケガを負う人選にしたつもりは無い」
「それ、大丈夫とかそういう問題じゃないから」
「心配するな。回復薬は大量に持ってきた」
俺は自分の荷物をバシバシ叩いてサラにアピールする。
「えと……本気?」
俺は黙ったまま頷く。
サラは助けを求めるように、ルイとマリスの顔を見る。
だが二人は、自分が先頭じゃなかった事に安堵しているようで、サラをフォローするつもりはないようだ。
サラはしばらく抵抗していたが、ついに諦め先頭を走る事を了承し、渋々先頭をきって走り出す。
その後ろにルイ、その後ろにマリス、最後尾に俺という並び順だ。
全員で縦並びになり階段を目指して突っ切る。
「サラ」
「何よ?」
「もっと速く走れ」
「無茶言わないでよ!!」
俺にはジョギングペースに感じるが、サラはそれなりに本気で走っていたらしい。
残る二人もこれ以上飛ばすのは勘弁といった感じの表情を俺に向ける。
まあ、敏捷値だけは勝っているという事だろう。
「最初の部屋までは、左の壁寄りに走れ。部屋を抜けたら今度は右だ」
「……? わかったわ」
「なんで?」
疑問に思ったのか、マリスが聞いてくる。
もちろんサラも聞き耳を立てている。
「その方が敵の攻撃を受けにくい」
「なんでそんな事がわかるのよ?」
「調査の賜物だ……長話はやめよう。余計にスタミナを使うぞ」
全員その意見には賛成だったのか、その後は指示を出す俺以外の口数は少なくなった。
時折、俺以外のメンバーがダメージを受けるが回復を怠らず慎重に、かつスピーディーにダンジョンを進んで行く。
メンバーが優秀だった事も大きかったのだろう。
さして苦戦することなく、十階層までのマラソンが終了する。
「よし、五分休憩」
余程スタミナを消費していたのか全員が一斉に座りこむ。
俺はジョギングペースだった事もあって、体力にはまだ余裕がある。
ふむ。ここはこの後の展開を有利にするために、上下関係をはっきりとさせておくか……。
「ん? 皆もうへばったのか? 本当にだらしがないな」
マリスとルイは言い返す体力も惜しいと思ったのか、スタミナの無さを痛感したのかは知らないが、特に反応がない。
しかし、サラはプライドに触ったのか、息も絶え絶えに言い返してくる。
「カ、カイト。誰がバシムを倒してやったのか忘れたの?」
「はは、その節は世話になったな。じゃあどうしてもと言うなら休憩を五分追加してもいいぜ。とてもお強い冒険者の頼みだからな」
「何を!? 五分で十分に決まってるでしょ!」
ははは。本当に扱いやすい奴だな。
サラの言葉を聞いた他の二人はげんなりした表情をする。
おそらく五分追加に賛成だったのだろう。だがサラ自身が拒否したのだからしょうがないな。
「良く言った。じゃあ五分丁度で出発する」
俺の言葉を聞いたサラの表情には後悔の色が浮かんでいた。
――休憩を済ませ再び進み始める。
十五階層までは手順は変えない。ひたすら同じ方法で進む。ただ魔物が多少強くなっているので、回復は慎重に行った。
そして、多少時間はかかったもののなんとか、十五階層へ到達する。
再び休憩を取っていると、ルイからお褒め言葉を頂戴する。
「さすがだなカイト。お前の持っていた自信はきちんと実力に裏付けされていたものだったんだな。お前だけただの一撃も攻撃を受けていない」
まあ敏捷値のおかげだな。おそらく他のステータスはすべて負けてると思うが……。
だが増長しやすい俺は、気分良く会話に乗っかる。
「まあな……俺を超えるものはエレノアにはいないだろう。いや、世界を見渡してもいるかどうか」
「……結構言うわね」
マリスが微笑ましく俺の方を見るが、俺の言葉に異議を唱えたのはサラだ。
「笑わせないでよ。バシムに勝てないカイトが世界一の訳ないじゃない。寝言は寝てから言ってよね」
サラの言う事ももっともだが肩書だけはたしかに世界一だ。嘘じゃない。
「バシム?」
ルイが俺やサラに説明しろと、目で訴える。
それにサラが答える。
「エレノアの冒険者よ。カイトが絡まれてたのを私が助けてあげたの」
「ほう。カイトより強いとなると相当の使い手だろうな。今度勝負を申し込んでみるか……」
やめとけ。がっかりすると思うぞ。
俺は声に出さずに心の中で思ったが、あいつには怪我をさせられそうになったからな。
ルイが痛めつけてくれるのなら、あえて止める必要もないだろう。
休憩を終え再びダンジョンの奥へ歩みを進める。
十六階層からは、少し慎重に行く。
ここでミスると痛いからな。
先頭も、サラから俺に変わっている。
注意すべきポイントに辿り着いたので俺は皆に説明する。
「あそこにいる魔物は襲われると厄介だ動きも速い上に手ごわい、できれば存在を悟られずに抜けたい」
全員が素直に頷く。
もう三人は俺の言う事にいちいち反論したり、理由を問う事はなくなっていた。
言っても無駄だと思っているのか、説明されても理解できないのかは知らないが。
「あいつはこの辺りを一定のルートで回っている。そこにランダム性は無い。よってあいつが右の通路に行き、姿が見えなくなった瞬間にダッシュすれば、ギリギリ見つからずに間に合うはずだ。お前らの遅い足でもな……」
こう言ってムキになるのも、もはやサラぐらいのものだ。
俺は皆に合図を出すために、敵の動きを注視するが、背中からは不穏な会話が聞こえてくる。
「なんか俺、ダンジョンを攻略している気が全然しなくなってきたんだが……」
「……奇遇ね。私もよ」
「私も」
俺は、ダンジョン攻略とはこういうものだ! と声高に主張しようとしたが。きっと過半数の賛同は得られないだろうと考え直し、結局やめる事にした。
「ここでの戦闘は俺のプランにはない。二人とも武器をしまってくれ」
「戦わないのか? みんなで戦えばすぐだろう」
「そうよ。私たちが苦戦する相手じゃないわ」
「説明している時間が惜しい。とにかく言う事を聞いてくれ」
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早く戦わせろと目が訴えている。
だが、俺の表情が真剣だったからか、二人はとりあえず武器を収めてくれる。
二人に説明して欲しいと詰め寄られる。
もとよりそのつもりだったので、簡単に説明する。
「とりあえず低階層では戦わない」
「戦わない? 何故だ?」
「時間の無駄だからな」
低階層では戦わないと言ったのは半分嘘だ。
本当の事をいったら怒りかねんからな……。
二人ともダンジョンに関してのイメージが固まり過ぎているのだろう。
敵と戦わないという発想が無いみたいだ。
勝てる敵とは戦い、勝てない敵からは逃げる。
たしかに戦いの鉄則のようなものだが、第三の選択肢、勝てる時でも逃げるというのは意外に重要だ。
それは何もタイムアタックに限った事ではない。
でも今はそんな戦術論を語っている時ではないな。
指示を出し、その通り動いてさえくれれば俺には文句はなかった。
「まだまだ時間に余裕はあると思うが、話している時間が惜しい。とりあえず指示にしたがってくれればいい。もちろん指示を出すまで戦闘禁止」
二人は少し不満気だ。
マリスを見習って欲しいな、全く。
「大丈夫だ。お前たちの実力を発揮してもらう場面もある。とりあえず最初は俺の言う事を聞いてくれ」
出番があると言ったおかげか、二人はとりあえず納得してくれた。
「サラ。お前は普段からこのダンジョンに来ているんだろ?」
「ええ。それが何か?」
「じゃあ、サラが先頭な」
「いいけど。戦わないんでしょ? 一体どうするの?」
「そんなの……走って抜けるに決まってるだろ? とりあえず全員十階層まではマラソンな。もちろん武器はしまったままでだ」
全員は顔を見合わせた後、一斉に驚く。
先頭を走る予定のサラが当然の疑問を投げかけてくる。
「敵の攻撃を受けたら?」
「そのまま走るんだ」
「そのまま走るって……ダメージを受けたらどうするのよ?」
「大丈夫。この辺の階層で大ケガを負う人選にしたつもりは無い」
「それ、大丈夫とかそういう問題じゃないから」
「心配するな。回復薬は大量に持ってきた」
俺は自分の荷物をバシバシ叩いてサラにアピールする。
「えと……本気?」
俺は黙ったまま頷く。
サラは助けを求めるように、ルイとマリスの顔を見る。
だが二人は、自分が先頭じゃなかった事に安堵しているようで、サラをフォローするつもりはないようだ。
サラはしばらく抵抗していたが、ついに諦め先頭を走る事を了承し、渋々先頭をきって走り出す。
その後ろにルイ、その後ろにマリス、最後尾に俺という並び順だ。
全員で縦並びになり階段を目指して突っ切る。
「サラ」
「何よ?」
「もっと速く走れ」
「無茶言わないでよ!!」
俺にはジョギングペースに感じるが、サラはそれなりに本気で走っていたらしい。
残る二人もこれ以上飛ばすのは勘弁といった感じの表情を俺に向ける。
まあ、敏捷値だけは勝っているという事だろう。
「最初の部屋までは、左の壁寄りに走れ。部屋を抜けたら今度は右だ」
「……? わかったわ」
「なんで?」
疑問に思ったのか、マリスが聞いてくる。
もちろんサラも聞き耳を立てている。
「その方が敵の攻撃を受けにくい」
「なんでそんな事がわかるのよ?」
「調査の賜物だ……長話はやめよう。余計にスタミナを使うぞ」
全員その意見には賛成だったのか、その後は指示を出す俺以外の口数は少なくなった。
時折、俺以外のメンバーがダメージを受けるが回復を怠らず慎重に、かつスピーディーにダンジョンを進んで行く。
メンバーが優秀だった事も大きかったのだろう。
さして苦戦することなく、十階層までのマラソンが終了する。
「よし、五分休憩」
余程スタミナを消費していたのか全員が一斉に座りこむ。
俺はジョギングペースだった事もあって、体力にはまだ余裕がある。
ふむ。ここはこの後の展開を有利にするために、上下関係をはっきりとさせておくか……。
「ん? 皆もうへばったのか? 本当にだらしがないな」
マリスとルイは言い返す体力も惜しいと思ったのか、スタミナの無さを痛感したのかは知らないが、特に反応がない。
しかし、サラはプライドに触ったのか、息も絶え絶えに言い返してくる。
「カ、カイト。誰がバシムを倒してやったのか忘れたの?」
「はは、その節は世話になったな。じゃあどうしてもと言うなら休憩を五分追加してもいいぜ。とてもお強い冒険者の頼みだからな」
「何を!? 五分で十分に決まってるでしょ!」
ははは。本当に扱いやすい奴だな。
サラの言葉を聞いた他の二人はげんなりした表情をする。
おそらく五分追加に賛成だったのだろう。だがサラ自身が拒否したのだからしょうがないな。
「良く言った。じゃあ五分丁度で出発する」
俺の言葉を聞いたサラの表情には後悔の色が浮かんでいた。
――休憩を済ませ再び進み始める。
十五階層までは手順は変えない。ひたすら同じ方法で進む。ただ魔物が多少強くなっているので、回復は慎重に行った。
そして、多少時間はかかったもののなんとか、十五階層へ到達する。
再び休憩を取っていると、ルイからお褒め言葉を頂戴する。
「さすがだなカイト。お前の持っていた自信はきちんと実力に裏付けされていたものだったんだな。お前だけただの一撃も攻撃を受けていない」
まあ敏捷値のおかげだな。おそらく他のステータスはすべて負けてると思うが……。
だが増長しやすい俺は、気分良く会話に乗っかる。
「まあな……俺を超えるものはエレノアにはいないだろう。いや、世界を見渡してもいるかどうか」
「……結構言うわね」
マリスが微笑ましく俺の方を見るが、俺の言葉に異議を唱えたのはサラだ。
「笑わせないでよ。バシムに勝てないカイトが世界一の訳ないじゃない。寝言は寝てから言ってよね」
サラの言う事ももっともだが肩書だけはたしかに世界一だ。嘘じゃない。
「バシム?」
ルイが俺やサラに説明しろと、目で訴える。
それにサラが答える。
「エレノアの冒険者よ。カイトが絡まれてたのを私が助けてあげたの」
「ほう。カイトより強いとなると相当の使い手だろうな。今度勝負を申し込んでみるか……」
やめとけ。がっかりすると思うぞ。
俺は声に出さずに心の中で思ったが、あいつには怪我をさせられそうになったからな。
ルイが痛めつけてくれるのなら、あえて止める必要もないだろう。
休憩を終え再びダンジョンの奥へ歩みを進める。
十六階層からは、少し慎重に行く。
ここでミスると痛いからな。
先頭も、サラから俺に変わっている。
注意すべきポイントに辿り着いたので俺は皆に説明する。
「あそこにいる魔物は襲われると厄介だ動きも速い上に手ごわい、できれば存在を悟られずに抜けたい」
全員が素直に頷く。
もう三人は俺の言う事にいちいち反論したり、理由を問う事はなくなっていた。
言っても無駄だと思っているのか、説明されても理解できないのかは知らないが。
「あいつはこの辺りを一定のルートで回っている。そこにランダム性は無い。よってあいつが右の通路に行き、姿が見えなくなった瞬間にダッシュすれば、ギリギリ見つからずに間に合うはずだ。お前らの遅い足でもな……」
こう言ってムキになるのも、もはやサラぐらいのものだ。
俺は皆に合図を出すために、敵の動きを注視するが、背中からは不穏な会話が聞こえてくる。
「なんか俺、ダンジョンを攻略している気が全然しなくなってきたんだが……」
「……奇遇ね。私もよ」
「私も」
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