異世界ダンジョンでRTA

ユウリ

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第31話 ギルドでの再会

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ギルドに入ってきた人物は、俺の見知った人だった。

「エレノアランキング六位、マリス様がギルドに入られました」

マリスが六位?
丁度いい。
彼女の腕がたしかならパーティーメンバーには最適だろう。性格も申し分なさそうだ。
よく見ると旦那のルイも一緒だ。これは一気に揃うかもな。

早速声をかけようと近づくが、違和感に気付く。

マリスが呼ばれたのに、ルイはアナウンスされないのか?
雰囲気や物腰、その屈強な肉体からしてルイも相当できると思っていたんだがな。
まあ俺の見る目などたかが知れているとは思うが。

だが俺の疑問はあっさりと解消される。

「ほら、さっさと登録してきなさいよ」
「へいへい」

ルイは俺に気付く事無く、受付に向かって行く。

なるほど。まだ登録していないだけか。
そういえばこの国に来たばかりと言っていたな。

気を取り直して、マリスに挨拶する。

「また会ったな」
「……ああ! カイト。偶然だね」
「ああ、奇遇だな。今日はルイの登録か?」
「そうよ。あの人ほっとくといつまでも行かないんだもの。痺れを切らして連れて来たって訳」
「なるほどな」
「カイトは? 何か依頼でも受けに来たの?」
「いや、今日は人探しをな」

マリスは興味有りといった表情で俺に問いかける。

「へえ、一体誰を探しているの?」

さて、どう言ったものかな。
マリスは義理人情に厚いと思う。まだ知りあって間も無いがおそらく間違いない。
小細工は必要ないと思う。
真っすぐに熱い気持ちをぶつけるべきだろう。
俺はマリスの瞳をまっすぐに見つめる。

「実は……お前を探しに来たんだ」

俺はマリスの手を掴み、胸の前に持っていく。

「……え? え? 何言ってるの?」

まだ、何も話していないのにマリスは真っ赤になり、やけにうろたえてる。
だが俺もやめるつもりはない。

「マ、マリス……たのむ俺と……」
「……だ、駄目よ。私には旦那と、子……子供はいないけど……と、とにかく駄目よ」

何か小声でごにょごにょ言っているが、よく聞き取れない。
俺は気にせず告げる。

「頼む……俺と中級ダンジョンへ一緒に入ってくれ!」
「…………へっ?」
「ほう、おもしろそうだな。カイト……聞かせてくれよ」

俺の言葉に反応したのはいつの間に戻ったのか、マリスの旦那のルイだ。
一方のマリスはきょとんとしている。
シンプルな言葉だと思ったんだが、どうやらあまり伝わらなかったようだ。
まあ旦那の方に伝われば問題はない。

「馬鹿だなお前は……カイトがお前みたいなおばさん相手にする訳ないだろ?」
「誰がおばさんよ? 少なくとも二十代でおばさんと呼ばれたくは無いわ」
「……? なんの話だ?」
「い、いや。カイトには関係の無い話よ……」

マリスはそう言ってごまかすように愛想笑いを浮かべるが、ルイが俺の名前を出しているのに関係ないというのも無理がないか?

「そ、それより、カイト。今中級ダンジョンがどうとか言ってなかった?」

強引に話題を変えにくる。
まあ、本題に入れるのは俺としても望むところだ。

俺は二人に事の成り行きを説明して、一緒に行ってもらえないか頼んでみる。
もちろん俺個人の事に関しては伏せておく。
タイムアタックが流行っている等の話を織り交ぜ、ルイに熱く語る。

「へえ、この国はそんなのが流行っているのか? 面白そうだな」

さすがルイ、俺と同じく勝負する事が好きな人種のようだ。

「しかも、一位になると賞金も出る」
「ほう、それは宿暮らしの身としては助かるな……だが、勝てる算段は有るのか?」
「ある」
「……断言したな。根拠はあるのか?」
「俺がいるからな」

俺がそう言うと、ルイとマリスは顔を見合わせて笑う。

「おもしろい。たいした自信じゃないか」
「まあな」
「そこまで言うなら参加してもいいぞ。結果はどうあれ楽しめそうだからな。お前もいいだろ? マリス」
「ええ、面白そうね」

よし、話の早い二人で助かった。
あ、もう一人の事も伝えておかないと。

「ちなみに三人だけじゃない。もう一人メンバーがいる」
「ほう。どんな奴だ?」
「若い女冒険者だ。名前をサラと言う」
「わ、若い女!? そいつはいいな!」
「……あんた、鼻の下伸びてるけど……私がもっと伸ばしてあげましょうか?」

どうやって伸ばすのか非常に興味があるが、マリスの機嫌を損なうのはマズイ。
俺は強引に話題を変える。

「ちなみに二人は、中級ダンジョンに潜った経験は?」
「あるわよ。私たちの故郷のダンジョンは攻略済みよ。でもまあ中級ダンジョンの中での難易度としては低いところみたい。ポイントを確認したら基準のポイントは二千だったからね」

難易度は中級ダンジョンとしては下から二番目ということか。
それにしても気になる言い方だな。

「基準のポイント?」
「ええ、パーティーを組んでたら、その人数で基準のポイントを割るからね」

初耳だ。

「俺は聞いて無いんだが、マリス」
「俺もだ」

ルイが俺に賛同する。

「あ、あれ? 言ってなかったっけ? ごめんごめん。ってそもそもあんたたちが面倒だからって説明会に行かないのが悪いんでしょ!!」

マリスに逆ギレされる。まあ、言ってる事はもっともだが。

あまりそっち方面の細かい事情に詳しくない俺に一つの疑問が浮かぶ

「ポイントを割るにしても、そもそもどうやってパーティーを組んでいるかどうか判断するんだ?」
「それは簡単よ。攻略するにはボス部屋に入るでしょ? ボス部屋に別々に入るパーティーがいると思う?」
「なるほど。わかったよ。つまり攻略したかの判定はボス部屋で行われる。ということはその時部屋に一緒にいたらパーティーとして認識されるという事か?」
「正解。6人以上いたら攻略とはみなされないけどね」

なるほどな。
俺は今のおもしろそうな情報を吟味し、様々な状況を思い浮かべる。

こういうのはどうだ、パーティーを組んでダンジョンを進みボス部屋の前で別れる。そしてソロでボスを攻略する。
悪くは無い……。
だが結局は中級ダンジョンのボスを一人で倒す力量が必要だ。現実的じゃないな。

じゃあ、人を大量に連れて行って、ボスのいない帝都の中級ダンジョンに行く。そして全員に状況再現方式で……。
いや、ドラゴン相手にそれをやってくれる奴が果たしてどれだけいるだろうか?
ますます現実的じゃないな。
それに、そんなことしたらルカの逆鱗に触れるかもしれない。

くわばらくわばら。
俺は寒気を感じ一旦思考を止める。
システムの穴を突くのもRTAには割とある思考だ。
あまりにエグいと禁止になる事もあるが……。

まあ不正全般に対策が打ってある可能性もある。
暇なときに色々検証してみるか。

俺が考え事に浸っていると、マリスに現実へと引き戻される。

「……え……ねえってば!」
「あ、ああすまない。少しぼーっとしてた」
「逆にカイトの方はどうなのよ」
「何がだ?」
「何が……ってダンジョンよ。どの程度攻略した事があるの?」

それを聞くのか……。
まあ聞くだろうな。

なんて答えるべきだろうか。
まあいいか、深く考える必要もないだろう。

「俺の攻略したダンジョンは――
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