異世界ダンジョンでRTA

ユウリ

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第24話 訪問

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1位の表示を見た俺はその意外な結果に驚きを隠せない。

どういう事だ?
上位であろう事は先日の彼らの発言からも容易に想像がついたが、まさか1位だとは。

俺はさらに一番端に表示されている自分のポイント数を見て驚く。
そこには50000ポイントを優に超える数値が表示されている。

「50000? どういう事だ……たしか帝都の中級ダンジョン攻略で5000ポイントだった筈だ」

彼らの説明が間違っていたのだろうか?

疑問は解消しないが、とりあえず俺は続けて2位以下のポイントをチェックする事にした。
俺のポイントだけが異常なのか確かめたい。

2位の名前はシリウスか、当然ながら知らないな。
ポイントは10000を超えたあたりだ。
3位はユリという名前だ。ポイントは約9000。

こうして見ると俺のポイントの異常さが際立つ。
ギルドで説明を聞きたいな。
食事と城の探索を済ませたらギルドに行くか。

俺は早々に食事を済ませ、昨日さほど見て回れなかった城内の探索を開始する。

城内を歩き回ってみると、当たり前だが広い。

「さすがにやりすぎだったか……どう考えても1人で1年間も住む場所じゃ無いな」

半ば衝動的なものだった今回の城購入だが、俺は最終的に損する確率は低いと思っていた。
まあ、あくまで俺の予想だがな。結果はそのうち分かるだろう。

だが一晩たって冷静に考えてみると、いくら損する確率が低いといっても、さすがにやりすぎた感があるのは否めない。
そもそも1人で管理することさえままならないだろう。
誰かと暮らすと言ってもな。
さて、どうするかな。

俺は思考の闇へ落ちようとしていたが、不意に現実に引き戻される。

今、何か音がしたような。
俺は耳を澄ませて音を聞き取ろうとする。

音は城の入り口の方から聞こえてきている。
扉を叩く音の様だ。

まさか、昨日の今日で客か?
いや、その可能性は低いな。
そもそも俺がここにいるのを知っているのは、この城を購入するときに手続きしてくれたお店の店主だけだろう。

そう考えると、おそらくあの店主が何用かで訪ねてきたのだろう。
俺はそう結論づけ、とりあえず出迎える為に扉へ向かう。

しつこく叩かれる扉を開け放つ。
だがそこにいたのは俺の予想に反して、見知らぬ中年の男性だった。

誰だ? やけに立派な身なりをしている。一見すると偉い人の様にも見えるな。
後ろに視線をやるとさらに2名の姿が見えた。
こちらはお付きの者だろうか? まあとりあえず要件を聞いてみるか。

「なにか用か?」

俺の口調がぞんざいだった為か、少し複雑な表情に変化したが、すぐに気を取り直し要件を話しだす。

「失礼。門番が不在だった様なのでここまで来てしまいました……非礼を詫びます。私めは貴国の隣国であるアール王国の大臣を務める者。謁見を賜りたく参上致しました」
「謁見?」
「はい。そちらもご存じの事ですが……お恥ずかしながら我が国と貴国は隣国でありながらここ数十年殆ど交流がありませんでした」

なんだなんだ?
意味がわからない。
いきなり説明が始まったが、俺がこの国に来たのは昨日の事だ。
エレノアの事すらほとんど知らないのに他国の事を知っている筈も無い。

俺が混乱している事には気がついていないらしく、中年の男は気にせず言葉を続ける。

「ですが、今朝ギルドから発表された順位を確認しましたところ、我が王はそちらと手を結ぶべきとの結論を出しまして……それで互いの友好を深めるために私がここに参ったのです」

なるほど、つまり隣国にランキング1位の者、つまり俺が現れたから、牽制しに来た、もしくは本当に手を結びに来たといったところだろう。
それにしても、前に俺を襲った奴らもそうだが、情報が出回るのが速過ぎる。
一体どうやって俺がここに住んでいる事を割り出したのだろうか? 昨日の店主か?

俺が考え込んでいると、しびれを切らしたのか男が再び繰り返す。

「重ねてお願いしますが……是非、王と謁見の機会を!!」

王か、ランキング1位だから王って訳だな。つまり英語にするとキングだ。
たしかに城を手に入れたうえにランキング1位の俺には王を名乗る資格があるな。
この大臣なかなかできる。

俺は目の前の男に上機嫌で笑みを浮かべてやる。
相手はよくわからないといった表情をするが、まあいい。

「わかった。話を聞こう。ついて来い」
「おお!! ありがとうございます!」

俺は大臣、以下3名を城の中に案内する。
彼らは城の中に誰もいない事を疑問に思ったのか俺に問いかけてきた。

「人がいませんな? 何かあったのですか?」
「ああ。少しトラブルがあってな、ほとんどの者が出払っている」

もちろん城には他に誰も住んでいない事は俺が確認しているが、さすがにこんなでかい城に一人で住んでいると言うのもかっこ悪いので適当に答えておく。

俺は先程見つけた、謁見の間に見えなくもない部屋に、彼らを案内する。
奥にある椅子に腰かけ、彼らに話しかける。

「では自己紹介をしよう。俺がこの城の王であるカイトだ」

その言葉を聞いた彼らは一瞬呆けた表情をして、全く反応できない。

信用してないのか、びっくりしているだけか判断がつかないが、これを見せれば納得するだろう。
俺は懐に手を入れ薄いカード状の物を取りだす。
俺に城を売った店主曰く、このカードがこの城の所有者である事の証なんだとか。

大臣と名乗った男がカードを確かめようと近づいてきたので、俺は見やすい様に彼の方にカードを向けてやる。

「ほ、本物だ……」
「だろ」

俺は相手のびっくりした表情に満足してニヤリとする。

まあカードを見なければ判別できなかった事を考えると、彼らの情報も俺がここにいる事は掴んでても、顔までは分からなかった様だ。俺は世界中に面が割れている訳じゃない事を知り、ほっとする。

「ま、まさか王がここまで若いお方だとは……」

未だに驚きを隠せない大臣だったが、これでは一向に話が進まない。

「それで? 今日は何の用向きで来たんだ?」

俺は話を進めるべく問いかける。

大臣は俺の言葉に正気を取り戻したのか、そこからは勢い良く話し出す。


大臣の話は俺の予想の範疇だった。
どうやら純粋に俺と和平を進めたいらしい。
俺は攻める気なんて全く無かったのにな。第一、国とケンカして勝てるとはとても思えない。

彼の話を聞き終わり、特にこちらに不利になりそうな箇所も無かったので二つ返事で了承する。
というかむしろこちらは一人で向こうは国なのに、こちらの条件が良すぎるくらいに感じる。
まるでこちらの機嫌を取っているかの様だ。
あのランキングの効果なのだろうか?

「ときにカイト王、なにかお困りの事はありませんか?」

あれだけこちらに有利な条件を結んでおいて、さらに手助けがしたいらしい。
だが俺は、たしかに困り事が有るのを思い出し、試しに頼んでみる。

「さきほど大臣も見ただろうが、城の人手が少し足りなくてな……」
「……どういった人材をお求めでしょうか?」

どうやら本当に人材を出してくれるらしい。
まさしく渡りに船だ。一人では城の管理すらままならないと思っていたところだからな。

とりあえず理想の条件を言ってみるか。
そのうえで妥協点を探そう。

「とりあえず欲しいのは、最低限の教養を持つ者、家事も最低限こなせる事、戦闘の才能が少しは有る者、それと女性で頼む」

女である必要はなかったが、男でも良いと言ってむさ苦しいのが来ても嫌だしな。
年齢は特に指定しなかった。性格が良ければ年配でも構わないだろう。
戦闘力に関しては一緒にダンジョンに入れる様な人材がくれば、ラッキー程度に考えている。

大臣は即答しない。さすがに条件を付け過ぎたか?

「……女性ですか? もしかしてそれは『後宮』に……という事でよろしいのでしょうか?」

高級?
なんの事だ?

一瞬何の事かさっぱり分からなかった俺だが、すぐ理解する。
よく考えれば簡単な話だ。

女性の場合は高くつく、つまり『高給』になるという事だろう。
さすがにタダで人は借りられないらしい。
だが、王家推薦の人間なら戦闘の面でも期待できるかもしれない。

「いい人材がいればな」

とりあえず手持ちの金銭が寂しくなっていた俺はそう答えておく。
この世界での高給とはいったいどのくらいを指すのだろうか?
俺は少し不安になる。

「わかりました。 こちらには選り取り見取りの人材がおります。きっと気に入って頂けると確信しています!!」

やけにテンションが上がってるな。
そんなに一杯連れてきても大勢は雇えないぞと言いたかったが、あまりにもかっこ悪いのでやめておいた。多すぎた場合は適当に理由をつけて断ればいいだろう。

「これがうまくいけば、双方に強い絆が生まれますな」

絆?
それはどうだろう? ただ人を雇うだけで少し大袈裟過ぎる。
だが、あえて否定して相手の機嫌を損ねる事は無い。
俺は適当に返事をしておく。

「ではカイト王。一週間……いえ3日ください。必ずやとっておきの人材をお連れします!!」
「ああ。期待している」

大臣とその部下達は挨拶もそこそこに城から出て行く。

それにしても予期せぬ来客だったな。
とりあえずどんな人材を連れてきてくれるか楽しみだ。
高い金を払う価値のある奴だと良いんだが。

高い金で思い出したが、そういえば今の所持金はいくらだ?
昨日かなり散財したからゆとりはあまり無い筈だ。
正確な金額を把握しておくに越したことはない。

俺はステータスカードをチェックする。
すると、ぼんやりとした光が目に入る。

称号が表示されている位置が光っているのに気がつく。
そういえば、帝都のダンジョンを攻略した後に称号を見るのをずっと忘れていたな。

「どれどれ、何の称号が貰えたのかな?」

俺は称号を確かめるべく、発光している箇所に指で触れる。

するとそこには――
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