異世界ダンジョンでRTA

ユウリ

文字の大きさ
上 下
16 / 34

第16話 中級ダンジョン攻略へ

しおりを挟む
ギルドで中級ダンジョンに入れる様に手続きを終えた俺は、ロイスやアキーム達講習受講者との挨拶もそこそこに皆と別れる。
指導は割と好評だった様子だ。まあここのギルドに顔見知りも多数できた事は俺にとっても収穫だろう。

とりあえず明日には早速中級ダンジョンに潜る事に決めた俺は用意をしてから宿へ戻る。


翌日、俺は再びギルド向かう。
情報収集の為だ。
急遽レベル上げから、攻略に変更したからな。
どうしても必要な人手がいる。まあ要するに人探しだ。

ギルドに到着すると俺は職員に質問しようと周りを見渡す。
あの人がいいか。
俺は近くにいた中年男性の職員に声をかける。
おそらくベテランの方が適任だろうからな。

「すまないが聞きたい事があるんだ」
「ああ、カイトさんでしたね。昨日はお疲れ様です」

どうやら俺の事を知っているらしい。
講習を見ていたのだろうか?
まあ今はそんな事はどうでもいい、俺は早速聞きたい事を質問する。

「誰かこの近くにいる者で、帝都の中級ダンジョンを一番深く潜った人を紹介して欲しいんだが?」
「一番深くまで潜った人ですか? う~ん最近は奥まで行ける冒険者の方がなかなかいなくてねー」
「別に最近じゃなくてもなるべく深く潜った実績のある奴はいないか?」
「引退した人でも?」
「ああ、話を聞きたいだけだからな」

これは半分嘘だがまあ構わないだろう。

「そういうことならこの国の宮廷魔術師のタールというお方がたしかかなり深く潜った記録を持っていたと思いましたが……ただもう随分高齢だとか」

宮廷魔術師、肩書からして偉いんだろう。
俺の頼みを聞くかも微妙だ。そもそも会えるのかもわからない。
微妙な人選だな、他の人を当たるか。

そこまで考えたが、ふと思い出す。
そういえばロイスには貸しが有ったな。
すぐに返して貰うとするか。

おそらくロイスなら繋がりを持っているはず。
そう思った俺は職員に礼を言い、城に向かう事にした。

城の前に到着した俺は門に近づく。
俺の事を知っている門番だと話は早いが。
ちらっと二人いた門番の顔を確認する。
知らない顔だ。

まあだからといって尻込みする訳にもいかない。
説明すれば分かるだろう。
俺は門番に声をかける。

「すまない。少し頼みがあるんだが」
「はい? なんでしょうか」
「ロイスに取り次いで欲しい。カイトが来たと言えば分かると思う」

俺がロイスと呼んだ瞬間男の顔が怪訝な表情に変化する。

またか。
次来た時はロイス様と言った方がいいか?

「ロイスというのは騎士団長のロイス閣下の事でしょうか?」
「ああ。そいつで間違ってない」

俺がそいつ呼ばわりした事でさらに兵士の顔が不審な色を帯びる。
さすがに俺もうんざりしてきたが、その時別の兵士に話しかけられる。

「カイト様じゃありませんか?」
「ああ、そうだが」

俺はよくおぼえていないが前に来た時にいた兵士なのだろう。
なんせ俺の事を様よばわりするくらいだからな。

「やっぱりそうでしたか。今日はライカ様に会いに?」

なぜライカ?
俺は疑問に思ったが、ロイス、ライカ、おっさんの3人は友達と名乗ったからな、まあおかしくはないか。

「いや、今日はロイスに会いに来た。取り次ぎを頼む」
「わかりました。直ちに」

それまで俺の応対をしていた兵士が我慢ができずに尋ねる。

「小隊長この方は?」
「カイト様は閣下の友人だ。ライカ様やリック様もな」

それを聞いた兵士は驚いた表情を俺に向ける。
さすがにもう慣れたな。

俺はその兵士のリアクションを無視して、ロイスを待つ事にする。


「よお、カイト。昨日も会ったってのにまた随分早い再会だな。今日は何の用だ?」

しばらくすると、ロイスが門の所まで来てくれる。
不思議そうに俺の事を見る。
まあ昨日の今日だしな。

「悪いな。少し頼みがある」
「ハハハ、早速借りを返せということか。まあカイトには無茶な事頼んだからな……大抵の事は引き受けてもいいぜ。まさかこんなにはやく頼みごとをされるとは思っていなかったけどな」
「宮廷魔術師のタールって人いるだろ? 紹介してくないか?」
「あの爺さんか……なんでまた?」
「帝都の中級ダンジョンを深く潜った事があると聞いたんだ。とりあえず話を聞きたい」

ロイスは考え込むようなしぐさを見せ、言いにくそうに口を開く。

「……紹介するのはかまわないが、話を聞けるかはわからないぞ?」
「難しい性格なのか?」
「難しいというか……まあ会ってみればわかるよ。カイトなら気に入られるかもしれないし、じゃあ今から行くか?」
「今から会えるのか? だとしたら助かるな」

俺はロイスの案内を受けタールというじいさんの元へ向った。
それにしても短期間の内にかなりお城に出入りしているな。少し構造を覚えてしまいそうだ。

しばらく城の中を歩いてかなり大きい扉の前に案内される。

「たぶんあの爺さんはこの中にいるが、気難しい性格ではないから畏まらなくていいぞ。もっともカイトは初めからそんな気はないかもしれないけどな」

そんな事を言いながら扉を開けて中に入る。

部屋の中は一言で言うならば汚い。
本や何かの器具が散乱している。
そこで一人の老人が何やら作業をしている。
だがおかまいなしにロイスは老人へ声をかける。

「おい爺さん」
「ん? なんじゃロイスか。ワシは見ての通り手が離せん。用なら後にせい」
「まあ、そう言わないで。あそこにいるカイトがじいさんに聞きたい話があるみたいなんだ」
「カイト? 聞いた事ないのう」
「城の者じゃないからな。俺の個人的な友人だ」

その言葉に少し興味を惹かれたのか爺さんの視線がようやく俺の方を向いた。

「カイトだ。爺さんが昔中級ダンジョンを深く潜った事を小耳にはさんだんでな。話を聞かせてもらいたい」
「なに!! 中級ダンジョンだと!?」

じいさんは手に何かの器具を持ったまま前のめりに聞き返してくる。
なにやらすごい反応だな。

「じゃ……じゃあ俺はこれで戻るな?」

ロイスが何やら焦った表情でそう告げる。

「ん? もう行くのか?」

そう聞いた俺にロイスは俺にだけ聞こえるように近づいてきて

「あのじいさん、自分に興味持った事に関してだけは異様に話が長い。俺は巻き込まれるのはごめんだからな」
「なるほどな……わかった。とりあえず礼を言っておくよ」
「礼にはおよばないさ。借りがあったからな」

ロイスが部屋を退出する。

「で、ダンジョンについて聞きたい事とはなんじゃ? ワシが40層に到達した時の話か? あの時はすごかったぞ? 次から次へと襲いかかって来る敵をちぎっては投げ、ちぎっては……」

単刀直入に行くか。俺も爺さんの話を長々と聞く気は無い。

「爺さんが中級ダンジョンでかなり深くまで行った記録を持ってると聞いてな。できればそこに連れて行ってもらいたい」

一度行った階層へは魔法陣を使って簡単に行くことができる。
まあつまり1層づつ攻略するのが面倒で時間もかかるから一気にショートカットしてしまおうというのが俺の狙いだ。

爺さんは自分の話をやめ俺の話に耳を傾ける。

「連れて行ってどうするつもりじゃ? お主一人で攻略できる訳がないぞ?」

たしかに、そう思われても無理はないな。
さて、なんて答えるべきか。
俺は慎重に言葉を選ぶ。

「ん? なんでだ? あんなダンジョン長いだけで簡単だろ?」
「お前さん本気で言ってるのか?」
「ああ。まあ今日中にクリア可能だろうな。さすがに攻略にかかる時間までは現時点では分からないけどな」
「あのダンジョンはまだ誰も攻略した者などおらんのだぞ?」
「ああ知ってる。全く……この国の者はレベルが低いな。中級ダンジョンさえまともに攻略できないなんて」

さすがに爺さんもイラッときた様子だ。

「ほう、そこまで自信があるならワシもおぬしについて行こうかの」

一緒についてきてクリアできなかったら俺を笑い物にでもしようって事か?
もちろん俺にはクリアできる確信は無い。
まあどちらにしてもじいさんと一緒に行くという選択肢は無い。

「やめとけ爺さん。あんた現役を引退してるんだろ? 無理は体に毒だ。それは年寄りの冷や水ってやつだな」

わざと挑発的な言動をとる。

さらにカチンときた様子だ。まあ当然だが。

「そこまで言うなら連れて行ってやろう。但し、攻略が成功もしくは失敗どちらになってもワシに報告に来い。それくらいならできるじゃろう?」

攻略なんてできる筈がないと踏んでいるな。
さすがに気分を害したか。
攻略に成功したら寛大な心で謝る事にしよう。

だが結果的にこちらの望み通りの展開だな。

「わかった。成功、失敗に関わらず報告に来るよ」
「準備はできとるのか?」
「ああ、いつでも行ける」
「よし、じゃあ転移で連れて行ってやる」

転移が使えたか、流石は宮廷魔術師、移動の手間が省けたな。

じいさんの転移で移動を開始する。

気がつくとそこはもうダンジョンの中だった。

「爺さん。ここが昔に到達したっていう爺さんの最高記録の階層なのか?」
「う……うむ。そうじゃ」
「じゃあ、もうここでいい。帰っても大丈夫だ。ここまで連れて来てくれて感謝する」
「どうせすぐ逃げ帰って来るじゃろうて」
「ハハ、まあそうならないように祈っててくれよ」
「フン」

爺さんが転移で帰るのを見送る。


「さて……行くか」

前人未到の中級ダンジョン最深部に向かって俺は歩みを進めた――
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

ダークな乙女ゲーム世界で命を狙われてます

夢月 なぞる
ファンタジー
高2の春、時期はずれの転校生聖利音を目にしたあたしは、瞬間思い出した。前世だかなんなのか知らない記憶にこの世界は乙女ゲームの世界だと知る。しかも死亡フラグありのダークファンタジー要素を含んだ学園物だから青ざめた。攻略対象たちはまさかの人外の吸血鬼!ぎゃー、ありえねーっ!って、あたしってば主人公のルームメイトとかめちゃめちゃ死亡フラグたちまくりのキャラなんですけど!嘘でしょ!高校生で死亡とかありえない!ってなわけでせいぜい抗わせていただきます! ※内容は書籍版のダイジェストです。 とある事情で語り手が非常にうざいかつ読みにくいかつ分かりにくいかもしれませんが、ご了承ください。 ※本作の設定はウェブ版仕様です。黄土の双子、紅原の名前の呼び方などWEB版と書籍版とは内容がかなり異なります。ほぼ別物語としてご覧いただけると幸い。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

処理中です...