異世界ダンジョンでRTA

ユウリ

文字の大きさ
上 下
6 / 34

第6話 ギルドへの報告

しおりを挟む
俺は称号欄を見つめその異常に気がつくと、つい声を出してしまうが、誰も気にしていないようだ。
みんな熱心に自分のステータスカードを覗いている。

また増えてる……。
前回の初級ダンジョン攻略では称号を2個貰えたが今度は同時に3個だ。

『中級ダンジョン攻略者』 ステータス補正 精神 1段階上昇

『中級ダンジョン低レベル攻略者』 ステータス補正 筋力値 2段階上昇

『ミルダンジョン最速記録保持者(中級)』 ステータス補正 敏捷値 2段階上昇

低レベルで攻略すると偉業と認められるらしい。
なるほど……。
俺は二度とやりたくないけどな。

後、中級の最速記録も取得できたようだ。
まあ累計時間で最速が決まるなら、40階層からスタートした俺は反則みたいなもんだな……。
ラッキーだったと思っておこう……うん。

だけど結局はダンジョン最速記録保持者の方が補正値がでかいな…。
まあ状況を見て使い分けるか。

俺は最終的にレベルがどこまで上がったのか確認してなかった事を思い出し、早速見てみる事にする。

レベルは9まで上がっていた。
レベル2スタートと考えれば、大躍進だろうが俺は少しだけ不満だった。やはりボス戦で俺だけ経験値が稼げなかったのが痛かったな……。

痛いと言えば、まさか身代わりの指輪も全部使う事になろうとは……。
無くなった金額の大きさに眩暈がしたが、ある事に気が付き、ステータスカードのストレージの欄を確認する。

よっし! 思わず小さくガッツポーズをしてしまうが誰にも見咎められなかった様だ。
ストレージには金貨30枚分がチャージされていた。
助かった……。
これでしばらくはお金に困ることは無さそうだ。ダンジョンの神様に感謝だな。

俺はステータスカードから目を離し、皆を見渡す。

おっさんだけがステータスカードを見ていなかったので近づいて話しかける。

「ステータスカードのチェックはいいのか?」
「わしは以前中級ダンジョンを1度クリアした事があるんじゃよ」
「なるほどな……俺とおっさんだけが中級攻略済みだったわけか」

もはや意味のない設定だがとりあえずゴリ押す。理由は無い……ただなんとなくだ。

「それはそうとお前さん、どうするつもりじゃ?」

おっさんがなにやら小声で話しかけてくる。

「どうするとは?」
「さっきの事じゃ。エリザとその……あったじゃろ?」
「ああ、キスの事か。彼女……俺の事好きなのかな?」
「仮にそうだったらどうするんじゃ?」
「結婚を申し込む」

俺は即答する。

おっさんがあんぐりと口を開けている。
コブシが入りそうだな。

結婚はもちろん冗談だ。
おっさんに冗談である事を告げようとしたが……。

そこでロイスが声を上げる。

「おい、そろそろギルドに行かないか? 報告をしなきゃならん」

ロイスとライカとエリザはもうステータスカードの確認は終わった様だ。エリザは俺の方を見ている……。
後でちゃんと話した方がいいな……と俺は思った。

考え事をしていたら、もう俺以外のメンバーは集合していた。
俺も急いで合流する。

ギルドに到着した俺達は、拍手と歓声を持って迎えられた。

5年振りに攻略者が出てギルドも嬉しいのだろう。
中級以上のダンジョンで攻略者が出た場合は世界中のギルドに通達される。

そのことにより中級攻略を夢見たパーティーがこの街のギルドに多少なりとも集まって来るらしい。
まあたしかに誰も攻略したことのないダンジョンよりよっぽど可能性はあるな……。

「よくダンジョンを攻略してくれました。ギルドを代表して礼を言います」

教官がロイスに手を差し出してくる。

「いえ、こちらにも必要な事でしたので」

ロイスと教官ががっちり握手を交わした。

「それにまさか、お荷物を抱えてダンジョンを攻略するとは……」

教官がちらりと俺の方を見る。まあ言いたい事はわかるけどな……だけど一応教え子なのにその発言はどうなんだろう……。

「荷物?」

ロイスが何の事かわからないという風に考え込む。
そしてエリザの方を見た。

「さすがにそれは言葉が過ぎませんか?ギルド長」

おそらくロイスは勘違いしている。そして教官はギルド長だったのか……知らなかったな。
どうやらロイスの中では俺の事がお荷物とは認識できなかった様だ……。

ロイスの反応に教官は少し青くなる。
教官としてはレベル2の俺を連れて行って攻略した事を褒めたつもりだったのだろうが、ヤブヘビだった様だ。

教官がロイスに平謝りをして、何とか事無きを得た様だ。

ロイスと教官が話している間、俺にはギルドの冒険者達が話しかけてきた。

「おまえ、本当にダンジョンに入ったらしいな」
「どうやって生き残ったんだ?」
「絶対俺らを笑わせる為だけにやったんだと思ってたよ」

俺は彼らの相手を適当にすませ、ライカ達が待っている場所へ戻る。

ライカが俺に何か言いたそうに見ている。

「どうした?」
「彼らにはカイト殿に対する敬意が足りないんじゃないかと思ってな。まるで馬鹿にしてる様に感じた。彼らの中にカイト殿に勝てるような者がいるようには思えんが……」

あいつらのレベルはたしか10ちょいだった筈……うん称号がなければ普通に負けるだろうな。
称号の補正が有っても2、3人いたらかなり厳しくなるはずだ。

まあライカが納得する筈も無いので、適当に言っておく。

「たしかに奴らを俺1人でねじ伏せるのは簡単だ。だが俺はそれがいい事だとは思えない。今は、この街にいる以上緊急の討伐等も発生する事もあり得る。その時は、彼らと連携して事に当たらなければならない。余計な遺恨は無い方がいいさ……まあ奴らもなんだかんだ言っても困った時はいつも俺を頼ってくる。かわいい奴らさ」

最後に余計な一言を付け足す俺。
まさか聞かれてないよな?
キョロキョロ周りを見回す。

「そこまで考えていたのか……私の方が間違っていたようだ。カイト殿といるとこちらも学ぶ事が多いな」

「さすがカイト様です」

エリザが言う。
だが聞きなれない響きが有ったな。
様? いつの間に変わったんだ……? だけど俺は様ってガラじゃない。

少しエリザと話した方がいいな……。

「エリザ、少しこっちに来てくれるか?」
「え? はい、わかりました」

俺はエリザをギルドの外へ連れ出す。

さて……連れ出したはいいがなんて言っていいものかな。
俺が考えていると、ギルドからこっそりおっさんとライカがこちらを覗いているのが見えた。
あいつら……。
よく見るとロイスも来てるぞ、さっきまで教官と話してただろうが……。

だが呼び出してしまった以上腹を括って話す事にする。

「あのな……」

だが俺は言い淀む、なんて言えばいいんだ? キスの事を引っ張りだすのもなんか違う気がするが……。
しばらく俺が困っていると、エリザの方から……。

「私、実はわかってるんです……これから何の話をされるのか」

わかってる? 俺でさえ何を言うか決めかねているのに……。



「私、結婚の話お受け致します」



俺はおっさんに殺意を抱くまでに、それから数秒の時間を要したのだった――
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

ダークな乙女ゲーム世界で命を狙われてます

夢月 なぞる
ファンタジー
高2の春、時期はずれの転校生聖利音を目にしたあたしは、瞬間思い出した。前世だかなんなのか知らない記憶にこの世界は乙女ゲームの世界だと知る。しかも死亡フラグありのダークファンタジー要素を含んだ学園物だから青ざめた。攻略対象たちはまさかの人外の吸血鬼!ぎゃー、ありえねーっ!って、あたしってば主人公のルームメイトとかめちゃめちゃ死亡フラグたちまくりのキャラなんですけど!嘘でしょ!高校生で死亡とかありえない!ってなわけでせいぜい抗わせていただきます! ※内容は書籍版のダイジェストです。 とある事情で語り手が非常にうざいかつ読みにくいかつ分かりにくいかもしれませんが、ご了承ください。 ※本作の設定はウェブ版仕様です。黄土の双子、紅原の名前の呼び方などWEB版と書籍版とは内容がかなり異なります。ほぼ別物語としてご覧いただけると幸い。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...