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Careless Whisper
しおりを挟む「ふふっ、、山崎さん、夜景そんなに気に入った?嬉しいな、、、だけど、ここから本題。聞かせてもらおうかな。俺をゲイだと思った理由をさ、、、」
はい、きたこれ。別の意味の告白タイム。
「あ、、あのぅ、、どうかお気を悪くなさらず聞いてください、、、」
しどろもどろながらも私は話し始めるしかなかった。
事の発端は私の入社前、先輩が今の会社に転職してきて間もない頃の話しだそうだが、営業のT氏が、お客様の接待の流れで2丁目を訪れた時に、たまたま先輩を見かけたらしい。それらしき男性と一緒に「club J」というお店に入って行ったと、、、
ただそれだけの目撃談だったが、それ以来なぜか先輩を除いた社内の人々には先輩のゲイ説が定着してしまった。
と、、なるべく失礼の無いような表現で私の知るところを全て包み隠さず打ち明けた。
「え、それだけ?それだけでゲイ認定されちゃったんだ、、そうか~」
「それだけ、、、っていうか、先輩の雰囲気もちょっとは影響あるかなとは思いますけど、、、」
「え、ゲイの雰囲気あるってこと?」
「そ、そうじゃなくて、、あまり社内の人と必要以上に付き合わないっていうか、、プライベートがミステリアスな雰囲気って意味です」
「あ~それか。なぁなぁになるのが嫌で、今の会社では仕事とプライベートしっかり分けたかったんだよね。それが別の意味に取られちゃった、と、、、」
「はい、、そうみたいですね」
「ま、でも無理もないか、、二丁目で男同士でゲイバーに入ってくところ見たら、普通そう思うよね。あはははっっ」
「あの、、どうしてゲ、ゲイじゃないのにあのお店で働いてらっしゃるんですか?」
「ふふっ。知りたい?、、、よね?
でも、その前に乾杯しよっか?シャンパンも運ばれてきたところだし」
タイミングよくなのかどうかはさておき、シャンパンの入ったグラスが運ばれてきた。
テーブルに置かれたグラスの中で、弾ける気泡が一粒一粒ダイヤモンドのようにキラキラと輝いている。
「んじゃ、飲もっ!カンパーイ!」
「は、はいっ、カンパーイ!」
ロマンティックな気分も束の間、ここは居酒屋かっ!と突っ込みたくなるような乾杯である。
ま、そんな先輩の掴みどころの無いところもまた魅力なんだけれど、、、
「うん、美味いねこれ。シャンパンて滅多に飲まないけど、フルーティーで瑞々しくて、めっちゃ美味い!」
「はい、とっても美味しいです」
「よかった、、ちょうどよくフードも来たね~うゎ、マルゲリータめちゃウマそ!いただきます!ほら、山崎さんも食べてよ」
先輩はそう言って美味しそうにピザに齧りつき、まずは1ピース食べ終わると満足そうに微笑み、おもむろに事の経緯を話し始めたのだった。
実はあのお店の入っているビルのオーナーが先輩のお爺様で最上階に住んでおり、子供の頃からよくそこへ遊びに来ていたそうだ。
小学生になると、週末や夏休みなど、両親が共働きだったこともあり、東京郊外にある先輩の実家から1人で遊びに来ては、新宿駅前のゲーセンに入り浸っていたそうだ。なんて小学生!!
そんなこんなで、テナントとして入っていたゲイバーのお兄さん(?)達とも交流があったりして(オーナーの孫ということで大事にされていたらしい…どういう意味?)今のClub Jの店長もその頃からの知り合いで、人手が足りない時などに頼まれてバイトがてらお手伝いしているそうだ。
「なーんだ、そうだったんですね~。なかなかイレギュラーではあるけど、聞いてみたらなるほど~って、思っちゃいます。
それにしても、先輩がゲーセン好きの小学生だったなんて、そっちの方が驚きかも!」
「そうかなぁ。小学生の頃けっこう流行ってたんだよね、カード集めて対戦したりすんの。女の子は知らないか?」
「あ、女の子のもありましたよ!カード集めて遊ぶゲーム!着せ替えゲームでしたけど」
「あ、なんかそんなのあったね~うんうん、女の子のカードゲームあったあった!」
「わ~なんか懐かしいですね!」
それからお互いゲーム好きという事が分かり、子供の頃から今に至るまでハマったゲームの話で盛り上がったのだった。
「俺のゲイ疑惑の話から、まさかゲームの話でこんなに盛り上がるとは思ってもみなかったよ。ところでさ、さっき聞き忘れちゃったんだけど、よく今日あの店に俺がいるってわかったね」
「えっ、、お店のブログに出てますよ。毎月のスタッフの出勤情報。知らないんですか、、」
「何それ聞いてない⁉︎ちょマジ⁉︎」
「はい、、会社の噂で聞いたお店の名前“Club J”で検索したら、それらしきお店のホームページが見つかって、ブログの記事を見ていたら今月の出勤表って記事があるの見つけて、、実はちょこちょこチェックしてました、、」
「え!そうなの?てか俺の名前書いてあるの?」
「はい、、さすがにフルネームではないですけど、“ゆーや”ってひらがなで書いてあって、、で、それ見て、2/14出勤日になってたから、もうこの日に行くしかないって思いました」
「そうなんだ。それもすごいね、、」
「あ、、はい、、す、すみません、、」
「い、いや、謝らないで。そういう意味じゃなくて、、さ、、勇気いったろうなって、、どう?初めての2丁目の感想は?」
「そうですね、、思ったより普通だったっていうか、、、あ、そう言えば、先輩を待ってる時、二人組の男の人にこんなん貰っちゃいました!面白いですよねドラァグクイーンのおネエさんの写真!」
私はその四角いパッケージを勇んでバッグから取り出してテーブルに置いた。
「、、、、。」
(あれ?なんか反応薄いな、どして、、、?)
「山崎さん、、、これ中身見た?」
「い、いえ、まだ見てませんけど、、お店の宣伝とかの販促グッズですよね?」
先輩は“考える人”のポーズで5~6秒目を閉じた後、意を決したようにテーブルに置かれたその四角い封筒型のパッケージを手にした。
「開けていい?」
「ど、どうぞ、、」
先輩はパッケージを裏返して封を開ける。
「これ、、、販促グッズじゃないよ?」
「、、、、。」
やってしまった、、、中に入っていたのは男性用の避妊具、、そう、、コン、、ドームだった。
終わったなと思った。
しばし気まずい沈黙が流れた後、先輩は私の耳元に顔を寄せそっと囁いた。
「よかったらこれ、今夜使ってみない、、、」
つづく、、、
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