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Magical Mystery Tour
しおりを挟む「うえっっ、、、ええっ、、えっ、、ううぅっ、、えぅえっえっっ、、うぅぅ、、、」
混乱して頭も回らなければ泣いて呂律も回らない。
「ほら、もう泣き止んで。チョコもありがたく頂くから、、、」
先輩は、いかにもしょうがないなぁといった感じに私の頭を軽く撫でながら、私の手にしっかりと握られたままのチョコの包みを優しく抜き取った。
「これ、どこのチョコレート?」
「ぅうっ、、えぅうっ、、、わ、わだじがつ、作りました。チョコレートブラウニーです。 ぅえっ、、えっ、、、」
「へー、山崎さん作ったんだ。俺、チョコレートブラウニー好きなんだよね~ありがとう、食べるの楽しみ」
今度は違う涙が込み上げてくる。喜びの涙だ。
(なんだこれ。普通のバレンタインの展開になってるじゃないか。私の今までの悩みはなんだったの?)
「ねぇ、ここでちょっと待っててくれる?すぐ戻るから、ちょっと待ってて」
そう言うと先輩はお店の方へ急いで走って行ってしまった。
思いもよらない急な展開に呆然としつつも、もしかしたらこれはもしかするんじゃないか?などと更なる大ドンデン返しの予感が押し寄せる。
(いやいや、、都合のいい妄想はやめよう、、落ち着け私、、、それより、あんた顔!あんなに泣いて大丈夫なの?!)
心の声でハッと我に返り、慌ててバッグから手鏡を取り出して見た。
幸いマツエクが数本取れていただけでアイメイクの崩れもほぼ無くホッとした。
通常はマスカラ派の私なのだが、今日のためにマツエクサロンに行っていたのだ。振られると分かっていても、大好きな人に告白する時は綺麗な自分でいたかったから、、、
取れたマツエク取りに夢中になっていたら、突然目の前に何やら小さな四角いパッケージが差し出された。
びっくりして顔をあげると2人の男性が立っていてニコニコしながら「無料で配ってま~す。良かったらどうぞ~」とちょっとおネエさんぽい口調で言われたので、反射的にこちらも笑顔で「ありがとうございま~す」と返して受け取った。
けど、、、いったいコレは何だ???
よく見ると、パッケージにはさっきのお店で歌っていたようなドラァグクイーンの顔写真がプリントされていた。よく分からないけれど、二丁目記念品ということでまぁいっか。と、手鏡と共にポーチに入れバッグに仕舞った。
一人ポツンと路地裏に立っていると、すこし不安になってくる、、、、
(このまま先輩が戻って来なかったらどうしよう、、、)
心配も束の間、しばらくするとコートを羽織りすっかり帰り支度の先輩が路地の角を曲がってこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
私の元に向かって今、先輩が歩いてくる。ほんの少しの間なのに、そう思うだけで胸が高鳴る。
「待たせてごめん。店長に言って、今日はもう帰らせて貰う事にしたよ」
「えっ、大丈夫なんですか」
「うん、今日はバレンタインのイベントがあって、その手伝いで呼ばれたんだけど、思ったより人来なそうだから帰っていいってさ」
「そうですか、、、」
「うん、この前の週末でメインのバレンタインイベントは済ませちゃってるからね。今日は平日だしバレンタイン当日と言ってもお店的にはオマケみたいなもんだから」
「ふふっ。オマケ、、ですか。オマケでも来て良かったです。先輩に会えたし」
「そう、それ聞きたかったんだよ。どうして俺があの店で働いてるって分かったの?ちょっと詳しく聞きたいから、今からちょっと付き合って貰ってもいいよね」
そう言うなり先輩はまた私の手を取って歩き出したのだった。
「ど、どこに行くんですか?」
「ふふっ。秘密。到着するまで今から私語禁止」
しーっのポーズで人差し指を唇に当てて微笑みを浮かべる先輩。
あざと可愛いにも程がある。もうこのまま時が止まればいいとさえ思った。
路地を抜けしばらく歩いて新宿通りに出ると、先輩は手を挙げタクシーを止めた。
目的地はどこだろうと思っていると先輩はスマホを取り出し地図アプリに表示された目的地を運転手に見せる。
運転手は「ちょっと小さくて見えずらいな~」と言いながらも「あ~ここね、はい、わかりました」と言って走り始めた。
(どこに行くんだろう、、、)
結局目的地は分からなかったが、二人こうしてタクシーに乗っている。このまま異空間に迷い込んで、永遠にタクシーに乗り続けていたい、、、
つづく、、、
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