【R18 完結】Valentine Night 〜バレンタインナイト〜忘れられない甘い夜〜

麻璃央

文字の大きさ
上 下
2 / 7

Club J

しおりを挟む


彼の名は美馬祐弥。六本木のオフィスに勤める28歳、独身。




私の会社の先輩であり現在片思い中の相手。




そして、、ゲイである。




想っても想っても叶わない恋愛に終止符を打つべく、意を決して今夜、私はここに来たのだ。




中学生みたいだけどバレンタインデーの今日、想いを告げてこの恋を卒業する。そう心に決めて、、、




先輩にとっては迷惑な話かもしれないが、この膨れ上がった想いを今ここで全て燃やし尽くすしか私の気持ちの持って行き場は無いと思った。





それにしても、、、



初めて見るオフィス外での先輩の姿、、、



しかも洗い場で洗い物をしてる姿なんて、、、




時折、洗ったグラスを光にかざして曇りを確かめる。細部まで拘って仕事を怠らない、いかにも彼らしい仕草。



ワイシャツの袖を肘まで捲って露出した白い腕に浮き出た血管、ほどよい筋肉が目に眩しい、、、




(キャー!!たまらん何この私得でしかない画角!!)




そう心で絶叫し、無音カメラのシャッターを押す。



そう、しばしば私はスマホでサイトを見るふりをして、さりげなく先輩の写真を隠し撮りしていた。(先輩ごめんなさい)




マイアルバムの先輩ファイルには、そうして隠し撮った先輩の写真がもう1000枚近く溜まっている。(本当ごめんなさい)




(何してるのエリ!!この恋は今日で卒業するんでしょ!!いい加減にして!!




でも、、、卒業の記念に、、、今日で最後なんだからいいでしょう?



ほんとしょうがない子!!気は確かかしら?ほら、口からヨダレが垂れてるわよ!!




えっ、マジか⁈  )




などと、ひとりボケツッコミを脳内展開中のその時、ふと先輩が持っていたグラスから視線を逸らした。




唐突に目が合う。




「えっ!」




「えっ!」




お互い同じ表情、声こそ大音量のカラオケに掻き消されていたが、きっと声も一緒に出ていたに違いない。




「山崎さん、、どうして、、、」




聞こえなかったが読唇術で分かった。




私の存在に気付いた先輩はグラスを置き、クレオパトラの後ろを通ってカウンターからホールへ出て来たかと思うと足早に私の席まで辿り着いた。




「ごめん、外で話そう」




先輩は私の耳元でそう言うなり、私の手を取ってドアに向かった。




店から外に出て、それからしばらく歩き人通りの少ない路地を曲がった所でやっと先輩は立ち止まった。




「ごめん、いきなり連れ出しちゃって、、、
でも、、どうして、、あの店に?」



本当に困惑しているという表情で先輩は言った。




「ごめんなさい。先輩のプライバシー侵すような真似してしまって、、、」




「ううん、謝らなくていいんだ。ただ、、、どうしてって、、何故なのか、、、知りたいんだ、、」




どうしようもない気まずい空気の中で、、でも今しか無い、今でしょという声を聞いた気がした。




「バ、バレンタイン、、、だから、、、」




「へっ、、、???」



「バレンタインだからです。バレンタインのチョコ、、、先輩に渡したくて、、、だから私来たんです!!」




「、、、ん、、なんで?チョコなら会社で渡せばいいじゃない?」




先輩はひたすら驚いた様子で、棒立ちになり、全く訳が分からないといった表情を浮かべる。



そんな先輩の表情を見ていたら急に感情がどうしようもなく込み上げてきて、泣きそうになる、、、どうしよう、、、私、、、




「あの、、、義理チョコじゃなくて、本気なんです。本気の本名チョコ。入社して以来ずっと好きでした。

、、、でも、、、先輩は、、、ど、、同性の方が好きなんだって、、、つ、、つまり、、その、、ゲ、ゲ、ゲイの方だってお聞きして、、諦めなきゃとは思っていたんです、、、でも、、無理で、、

だから今日、直接お伝えして、その上で先輩にはっきりぶった斬ってもらおうと思ってきたんです!!

好きです先輩!!
でも今日で終わりにします!!!」




既に泣いていた。泣きながらバッグからゴソゴソとチョコを取り出し、震える手で先輩にチョコを差し出す。もう最悪だった。




視界は涙で曇り先輩の顔も見えない。




「、、ゲゲゲ、、、って、、、ふふっっ、、、ぶぁはははっっっ、、、はははっっっ」




いきなりの大爆笑。




なに、、なにが起こったの???なんで????



「ご、ごめん、、、山崎さん、、、ゲゲゲ、、ツボったわ、、、クックックッ、、、
ごめんホント、、泣かないで、、とりあえず、、」




涙で霞んでいても、先輩が必死で笑いを堪えようとしているのが分かった。



「あぁ、でも良かった、そうだったんだ。安心したぁ~あっははは、、、、」



それから大きく一回深呼吸して先輩は続けた。



「君の気持ちは嬉しいよ、ありがとう。
だけど、、、思い詰めてるところ申し訳ないけど、、、俺、、ゲイじゃ無いよ」




「、、、えっ、、、???」



なんだって?



なんだって?



「俺はストレート、二丁目的に言ったらノンケの男。なんなら、結構な女好きだけどね」



そう言うとポケットから取り出したハンカチで、私の涙を優しく拭ってくれたのだった。





つづく…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

高級娼婦×騎士

歌龍吟伶
恋愛
娼婦と騎士の、体から始まるお話。 全3話の短編です。 全話に性的な表現、性描写あり。 他所で知人限定公開していましたが、サービス終了との事でこちらに移しました。

続・上司に恋していいですか?

茜色
恋愛
営業課長、成瀬省吾(なるせ しょうご)が部下の椎名澪(しいな みお)と恋人同士になって早や半年。 会社ではコンビを組んで仕事に励み、休日はふたりきりで甘いひとときを過ごす。そんな充実した日々を送っているのだが、近ごろ澪の様子が少しおかしい。何も話そうとしない恋人の様子が気にかかる省吾だったが、そんな彼にも仕事上で大きな転機が訪れようとしていて・・・。 ☆『上司に恋していいですか?』の続編です。全6話です。前作ラストから半年後を描いた後日談となります。今回は男性側、省吾の視点となっています。 「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

優しい紳士はもう牙を隠さない

なかな悠桃
恋愛
密かに想いを寄せていた同僚の先輩にある出来事がきっかけで襲われてしまうヒロインの話です。

闘う二人の新婚初夜

宵の月
恋愛
   完結投稿。両片思いの拗らせ夫婦が、無意味に内なる己と闘うお話です。  メインサイトで短編形式で投稿していた作品を、リクエスト分も含めて前編・後編で投稿いたします。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

処理中です...