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Gay Town
しおりを挟む「クラブ、、、ジェイ、、、」
世界屈指のゲイタウン新宿二丁目。
初めて足を踏み入れる、その街並みに戸惑いながらも、Google Mapsを駆使してなんとか辿り着いた。
「J 」とだけ記された小さな銘板プレートが貼られたシャビーなドア。
恐る恐るレバーハンドルを押して開けると、その瞬間、大音量が私を迎えた。
「バレンタインデイ キィーイッス!!!
リボンをかけーてー!!!
シャララララ 素敵にキィーイッス!!!
シャララララ 素顔にキィーイッス!!!
ギャーハッハハハッッッッ、、、、」
奥のカウンターで髪を中世の貴婦人のように盛り上げ、メイクはクレオパトラのような所謂ドラァグクイーンと呼ばれるでのあろう、、男、、性、、、?と言っていいのだろうか? が、マイク片手に艶のある声で歌っている様子が目に飛び込んできた。
一瞬ひるむも、意を決して、一歩を踏み出す。
(どれだけの決意でここに来たと思ってるの、エリ。しっかりして!!)
心の中で自分を叱咤激励しつつ、私はゆっくりと進んで行った。
「いらっしゃいませ、初めてのお客様ですね」
すっと横から現れた、ウエイター?ウエイトレス?どちらとも形容し難い、だけど、とびきりに整った顔立ちの美しい店員に声をかけられる。
「あ、、は、はい、、すみません、、初めてです。すみません、、、」
「いや、、そんなに、謝らないでください。
ふふっ、、大丈夫ですよ、うちは一見さんお断りのお店じゃないですから」
ニッコリというよりも、クスクスといった感じに笑みを浮かべた美形店員に促されるまま、奥のテーブル席へ。
相変わらずマイクを握って大音量で歌うクレオパトラを横目に見つつ、カウンターより一段下がった暗めの照明が弱く照らす席に腰を下ろした。
スマホを取り出しスイッチを入れる。時間は19:00を少し過ぎていた。
店内には私を含めてお客はまだ数名しかおらず、その殆どは常連なのだろう、クレオパトラを囲むカウンター席に集まっていた。
お客の他には先程のウエイターを含む3名の店員と、カウンター奥の洗い場でグラスを洗い続けている厨房スタッフが1名。
そう、その洗い場の彼こそ、私が今夜ここに来た目的。
ドアを開けて大音量に身体中覆われる中、カウンターの隅でうつむきながら作業する彼を見た瞬間、すぐに分かった。
だって、つい数時間前まで、同じ職場のオフィスで一緒に仕事をしていたのだから…
つづく…
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