【R18 完結】Love Cocktail 〜ラブカクテル〜 イケメンバーテンの裏メニューをどうぞ〜

麻璃央

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Rooftop Bar

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最上階でエレベーターを降りると、正面に真っ白なエントランスドアが現れた。




少し緊張しつつドアを開ける。




店内はドアと同じく白一色で統一されており、カウンターからは「いらっしゃいませ」と優しい声でマスターが出迎えてくれた。




陶器のような白い肌。黒髪が更にその肌の美しさを引き立てている。




笑うとなくなってしまうようなタレ気味の瞳。口角がきゅっとあがった赤い唇。




一瞬女の子かなと見間違えてしまうほどの美貌だが、それに不釣り合いなほど低音の甘い声。



なんなんだこれは?




「性的倒錯」




咄嗟にそんな四文字熟語が脳裏に浮かぶ。




泉鏡花、はたまた澁澤龍彦的世界の扉を開けてしまったのかと錯覚してしまうような瞬間。




人工的に造られた完璧な美の標本。またはアンドロイド。




マスターの美貌は不思議なセクシャリティ倒錯の世界へと私を誘う。




「お好きな席にどうぞ」




私以外まだ誰もいない店内。テラス席で暮れゆく空を眺めながら例のカクテルを楽しもうという当初の目的は呆気なく却下され、私はカウンターへと向かった。





「ここ、いいですか?」カウンターの椅子を引きつつ尋ねると




にっこりと笑みを浮かべながら、、




「ダメ」




まさかの答えが返ってきた。




(えっっ?ちょっ、お好きな席にどうぞって今言ったよね?言ったよね?)




「んっふふっ。ウソ。いいですよ、どうぞおかけ下さい」




悪戯っぽく笑いながら、キュッと上がった広角の隣に美しいえくぼを作りマスターはそう答えた。




「え、、あ、、、い、いいんですか、、」




気の利いた返しも出来ないまま、困惑しつつ返す私。




「だってお客様、本当はテラスの夕陽を見に来られたんでしょう?違います?」




(うっっ。見破られてたかー。そりゃそうよね。こんな季節外れに来る客なんていないもんね、きっと)



「えへっ、、バレました?」



内心焦りつつも、ここは開き直って素直に白状した。



「夕陽より綺麗な僕の顔。近くで見たくなっちゃったんでしょ?違います?」




「は??」




「フフッ。だって顔にそう書いてある」




天使のような笑顔で悪魔のように真髄をついてくる、、、




(ななな、なにこの人、、、でも、嫌いじゃないこういうの、、)




鳩が豆鉄砲喰らったような顔で無言でいるしかできない私、、、




「ごめんなさい。フフッ。




ちょっと意地悪だね僕。だってお客様があんまり可愛いから、つい悪い癖。許してください。




さて、、と、ご注文は、、




カクテルのマジックアワーでよろしいですか?」





「えっ、、はっはい、それでお願いします」




「かしこまりました」




軽く会釈をした後、シェーカーを取り出したかと思うと砂時計のような形のメジャーカップにリキュールを注ぎ入れていく。




全ての所作が流れるように美しい。




シェーカーを振る動作は、ともすると仰々しくなってしまいがちだが、彼のそれは至って自然で軽やかで、そのいい意味での主張の無さに、ますます好感を抱いてしまうのだった。




うっとりと眺めているうちに、目の前にはいつしか冷えたグラスが置かれ、美しいサファイアブルーのカクテルが注がれていく。




「お待たせ致しました。カクテル・マジックアワーです。



まずはこのままお召あがりいただき、オリジナルの色とお味をお楽しみください。」



そう言うと次に小さなグラスを差し出し、、



「そしてその後、こちらのマジックリキュールを注いでみてください」



小さくウィンクをしながら微笑みかけてくる。



(こんなんアイドルじゃなきゃ許されない仕草だろっ!!似合いすぎて困るわっ!!)



心の声がこだましたが、外見では冷静を装い、、



「綺麗な色ですね。いただきます」



と、まずは一口飲んでみる。



ベルガモットのようなハーブの香りと共に爽やかなジンの辛味が効いている大人の味わい。



「スッキリとしていて、まるで海風のようなお味ですね」



思ったままを伝えたら、とても嬉しそうな表情で、、




「ありがとうございます。それをイメージして作りました」




そう言ってまたにっこりと微笑む。エクボが眩しい微笑み王子ヨン様と呼びたい。などど思いつつ、、二口目を味わっていると、ヨン様、じゃなかった、マスターがカウンターから出てきた。どうやら私の席に向かってくるようだ。




(な、なに???)




「ほかにお客様が来る様子もないし、どうぞよかったら外のテラスで僕と一緒に夕陽を見ながら、、、はどうですか?」



「へっ??」



グラスに口を付けたまま思わず変な声が出てしまう。



「ふふっっ、、グラスお持ちします。どうぞあちらへ」



そういうとマスターは私の手からグラスを取り上げ、「さぁ」と言って私の背中を押した。

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