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4月 鈴蘭
第2話
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そんな変態画家な樹先生は、俺の顔と全身をじっくりと眺めて微妙な表情をしている。すごく何か言いたげだな~
「この格好、気になります?」
「それは勿論。君の神秘的な紫の瞳と日に照らされると紫に見える美しい御髪を見れないなんて残念なことこの上ないからね。あぁ、それに、くっきりと入った二重まで無くして…二つ縦に並んだ泣き黒子が色っぽかったのにそれも消してしまったのかい?なんて勿体無いんだ…茶髪に茶目…とても平凡だ…」
度の入ってない丸メガネを中指で押し上げていつものように笑う。視界にチラチラと映る髪の色は焦げ茶で、本来の色とは違い新鮮だ。見にくいけど。
「いい感じに平凡でしょ?ストーカーにぶっすり刺された後ですし、暫くは目立たず穏やかな日々が欲しいな!と思い変装してみました。これで気配を消してガリ勉キャラとして一年くらいはやっていこうかなって」
「君のしなやかな体つきもセーターで隠してしまうんだね…あぁ、細い腰が見えない…」
樹先生は徐に立ち上がり俺の正面に来ると自身の顎に手を当てて考えるように俺の体を見つめる。そんな樹先生の手を俺は握って、導くように自分の体に誘う。
「全然聞いてませんね、樹先生。でもよぉ~~く考えてください。このセーターを脱いだ下にある体を想像してみてくださいよ」
自分の腰のあたりに彼の手を当てて、目を細めながら彼を見る。するとたちまち瞳は光り輝き、頬は赤く染まっていく。
「ね、俺の体はどうですか?」
挑発的な笑みを浮かべながら、囁くようにそういえば、彼は殊更興奮したようで勢いのまま抱きつかれてしまった。
体に巻きついた彼の手は、何ともいやらしい手つきで俺の体を弄っていく。
「素晴らしいよ、依夜。あぁ、何というエロスが秘められているのだろう…よし、依夜、そのうちモデルを頼むよ。今すぐにとはいかないけれど、この学園での依夜をキャンバスに収めないと僕は気が狂ってしまう…いや、もう既に狂っているのだろうね。本当に君は、人を狂わせる天才だよ」
「ん、良いですけど、ご褒美くださいね?俺、マカロン食べたいです、マカロン」
熱を帯びた彼の甘い声に脳が痺れるような感覚に陥る。このまま流されてみたい、なんて願望を無理矢理轢き潰して、愛撫を連想させるような手を軽くつねる。甘く官能的な雰囲気を消した樹先生は、柔らかく微笑み体を離した。
人を狂わせる天才。よく言われる言葉だ。俺と関わる人間は例外なく狂っていく。ストーカーの子だってそうだ。俺が狂わせてしまった。
欲しい時に、欲しい言葉を、欲しい感情に浸らせ、欲しい表情を纏わせながら溺れる位に与えられる。その言葉は酷く甘く、時には染み込んでいくように、時には痺れるように、時には包み込むように、様々な変化を見せる。そんな変幻自在なお前はまるで毒で薬だ。
と言われたのは、俺を引き取ってくれた保護者であるニルスさん、俺は兄として慕っているのでニィさんと呼んでいる人に出会って少ししてからだったかな。
深く意識している訳でもない、狂わせようとも思ってもいない。ただ俺は、誰かにとっての救世主だとか聖母だとか神だとか、そんな唯一無二の存在になって、深く愛し愛されたいだけ。たまに責められるけど、それのどこが悪いのか俺には全く分からないし、俺としては狂ってしまえるなんて羨ましい限りだ。俺はたった一人を狂える程に愛せはしないから。
「さて、そろそろ学園の説明をしようか」
「あぁ、呼ばれたのってそう言う…」
「君に会いたかったのもあるけれどね」
沈んでいた思考が樹先生によって引き戻される。軽く返事をすると彼は慣れたようにウィンクをキメてから、応接用のソファに座るよう促された。
それから談笑しつつ説明されたのは、事前に知っていた事を補足するようなものが多かった。
この学園は閉鎖的な監獄のようなもので、それはもう自由が少ない。そんな所に思春期の男子達を詰め込んだ結果、同性愛者や両性愛者、ゲイやバイが多く在籍してしまったという。
しかも、見目のいい生徒にはファンクラブの様なもの、通称親衛隊という組織が存在していて親衛対象に悪影響を与える人物は制裁という名のいじめや暴行が行われるという。全ての親衛隊がそうではないらしいが、過激な親衛隊の方が規模が大きく、それらが今の親衛隊のイメージになっているんだと。
もちろんそんな物が我が物顔で学園にいては秩序が乱れまくる。それを正すのがこの学園の二大権力の一つ、風紀委員会。風紀の乱れを正したり、制裁に合った生徒の保護や学園内で起こる問題を取り締まっている。停学や退学の判断までもが風紀委員に委ねられているらしい。そんな風紀委員会は生徒会の監視もまた活動に含まれているんだとか。
生徒会は風紀委員会と対をなす権力。こちらは学園の企画運営を行なっていて、備品管理や各部活の部費の配分、学園行事の運営も彼等の役割なんだと。学園の校則もまた彼らが決める事ができるらしく、そんな権力を持った彼らを監視する為に風紀委員会は存在するという。
風紀委員会も生徒会もどちらも決めるのは投票、しかも抱きたい抱かれたいランキングによる物で、これらにランクインした生徒から成績や出席日数、家柄などを考慮して決められるという。
説明はざっとこんな感じだ。うん、一つツッコんでおきたい。
それなんて王道学園?
「この格好、気になります?」
「それは勿論。君の神秘的な紫の瞳と日に照らされると紫に見える美しい御髪を見れないなんて残念なことこの上ないからね。あぁ、それに、くっきりと入った二重まで無くして…二つ縦に並んだ泣き黒子が色っぽかったのにそれも消してしまったのかい?なんて勿体無いんだ…茶髪に茶目…とても平凡だ…」
度の入ってない丸メガネを中指で押し上げていつものように笑う。視界にチラチラと映る髪の色は焦げ茶で、本来の色とは違い新鮮だ。見にくいけど。
「いい感じに平凡でしょ?ストーカーにぶっすり刺された後ですし、暫くは目立たず穏やかな日々が欲しいな!と思い変装してみました。これで気配を消してガリ勉キャラとして一年くらいはやっていこうかなって」
「君のしなやかな体つきもセーターで隠してしまうんだね…あぁ、細い腰が見えない…」
樹先生は徐に立ち上がり俺の正面に来ると自身の顎に手を当てて考えるように俺の体を見つめる。そんな樹先生の手を俺は握って、導くように自分の体に誘う。
「全然聞いてませんね、樹先生。でもよぉ~~く考えてください。このセーターを脱いだ下にある体を想像してみてくださいよ」
自分の腰のあたりに彼の手を当てて、目を細めながら彼を見る。するとたちまち瞳は光り輝き、頬は赤く染まっていく。
「ね、俺の体はどうですか?」
挑発的な笑みを浮かべながら、囁くようにそういえば、彼は殊更興奮したようで勢いのまま抱きつかれてしまった。
体に巻きついた彼の手は、何ともいやらしい手つきで俺の体を弄っていく。
「素晴らしいよ、依夜。あぁ、何というエロスが秘められているのだろう…よし、依夜、そのうちモデルを頼むよ。今すぐにとはいかないけれど、この学園での依夜をキャンバスに収めないと僕は気が狂ってしまう…いや、もう既に狂っているのだろうね。本当に君は、人を狂わせる天才だよ」
「ん、良いですけど、ご褒美くださいね?俺、マカロン食べたいです、マカロン」
熱を帯びた彼の甘い声に脳が痺れるような感覚に陥る。このまま流されてみたい、なんて願望を無理矢理轢き潰して、愛撫を連想させるような手を軽くつねる。甘く官能的な雰囲気を消した樹先生は、柔らかく微笑み体を離した。
人を狂わせる天才。よく言われる言葉だ。俺と関わる人間は例外なく狂っていく。ストーカーの子だってそうだ。俺が狂わせてしまった。
欲しい時に、欲しい言葉を、欲しい感情に浸らせ、欲しい表情を纏わせながら溺れる位に与えられる。その言葉は酷く甘く、時には染み込んでいくように、時には痺れるように、時には包み込むように、様々な変化を見せる。そんな変幻自在なお前はまるで毒で薬だ。
と言われたのは、俺を引き取ってくれた保護者であるニルスさん、俺は兄として慕っているのでニィさんと呼んでいる人に出会って少ししてからだったかな。
深く意識している訳でもない、狂わせようとも思ってもいない。ただ俺は、誰かにとっての救世主だとか聖母だとか神だとか、そんな唯一無二の存在になって、深く愛し愛されたいだけ。たまに責められるけど、それのどこが悪いのか俺には全く分からないし、俺としては狂ってしまえるなんて羨ましい限りだ。俺はたった一人を狂える程に愛せはしないから。
「さて、そろそろ学園の説明をしようか」
「あぁ、呼ばれたのってそう言う…」
「君に会いたかったのもあるけれどね」
沈んでいた思考が樹先生によって引き戻される。軽く返事をすると彼は慣れたようにウィンクをキメてから、応接用のソファに座るよう促された。
それから談笑しつつ説明されたのは、事前に知っていた事を補足するようなものが多かった。
この学園は閉鎖的な監獄のようなもので、それはもう自由が少ない。そんな所に思春期の男子達を詰め込んだ結果、同性愛者や両性愛者、ゲイやバイが多く在籍してしまったという。
しかも、見目のいい生徒にはファンクラブの様なもの、通称親衛隊という組織が存在していて親衛対象に悪影響を与える人物は制裁という名のいじめや暴行が行われるという。全ての親衛隊がそうではないらしいが、過激な親衛隊の方が規模が大きく、それらが今の親衛隊のイメージになっているんだと。
もちろんそんな物が我が物顔で学園にいては秩序が乱れまくる。それを正すのがこの学園の二大権力の一つ、風紀委員会。風紀の乱れを正したり、制裁に合った生徒の保護や学園内で起こる問題を取り締まっている。停学や退学の判断までもが風紀委員に委ねられているらしい。そんな風紀委員会は生徒会の監視もまた活動に含まれているんだとか。
生徒会は風紀委員会と対をなす権力。こちらは学園の企画運営を行なっていて、備品管理や各部活の部費の配分、学園行事の運営も彼等の役割なんだと。学園の校則もまた彼らが決める事ができるらしく、そんな権力を持った彼らを監視する為に風紀委員会は存在するという。
風紀委員会も生徒会もどちらも決めるのは投票、しかも抱きたい抱かれたいランキングによる物で、これらにランクインした生徒から成績や出席日数、家柄などを考慮して決められるという。
説明はざっとこんな感じだ。うん、一つツッコんでおきたい。
それなんて王道学園?
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