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二歳児も交えた人生ゲーム
しおりを挟む盤ゲームに備え付けられていたおもちゃのお札と車型の駒を均等に配るなり、理一が、
「うわあ!お金!?」
理一がテーブルにある自分に配られたお金に目を輝かせている。
「言っておくけど、このおもちゃ専用のお金だからな?」
「えっ、にせさつ?」
俺も陽平くんもむせた。
「何処でそんな知識を....」
「すみません、テレビとかで変な事、覚えちゃうんです」
「あー、なるほど....」
二歳児が参加の人生ゲームはなかなかハードだ。
俺がサイコロを振り、駒を進めると、いきなり犬のうんこを踏んでクリーニング代。
陽平くんは宝くじが当たり、みんなに寿司を奢り、互いに金を支払った。
「りふじんだね、じんせいって」
「...お前は本当に二歳児か?」
思わずツッコむと、
「うん、二歳。サイコロ振るねえ」
と、理一がサイコロを振り、
「理一も金払え」
「そうだ、理一もマイナス」
俺と陽平くんが茶々を入れる中、理一がマスを進むと、
「読めない。読んで?」
「どれどれ」
理一の止まったマスを見ると、株で儲けやがった。
理一に株の説明を求められたが、適当にはぐらかし省いた。めんどくさいから。
三人の中で真っ先に着いた職業選択のマスで、俺は今と同じく会社員。
「夢を見させてくれー!」
ついそう叫ぶと、陽平くんは大笑いし、俺の膝に移動して座っている理一は真剣な眼差しで、いちー、にー、と自分のおもちゃのお札を数えている。
続いて陽平くんがサイコロを振り、駒を進めると、同じく職業選択のマスだ。
「えーっ、マジかー」
「パパ、なにー?なにー?」
「サッカー選手だって」
「へー、パパ、サッカーするの?」
俺と陽平くんは同時に爆笑した。
「ゲームの中でね。ほら、次、理一だよ」
「うん!」
理一がサイコロを振り、マスを進めた。
「おー!やるな、理一!」
「アイドルかー」
「えーっ、アイドルー!?」
理一は不服そうだ。
「なんだ、嫌か?アイドル。なかなかなれないぞ?」
「うん。だって、僕、ゆーちゅーばーになりたいもん」
俺以上に父親である陽平くんの顔が険しかった。
「...なんでまたYouTuberなんだ?理一」
「んー?ゆうきくんもけいたくんもなるって言ってたから」
「人の意見に振り回されたらダメだ、理一」
陽平くんが言い聞かせている中、俺はサイコロを振る。
「恋人が出来た、みんな、ほらお金ー」
「えーっ、まことちゃん、こいびと?パパかなあ?」
おもちゃのお札を悠々と渡しながら理一が呟き、再び、俺と陽平くんをむせさせた。
その後も陽平くんは階段から落ち、怪我をしたり、落し物の財布を交番に届けて褒められたり、俺と同じく恋人が出来たり。
案の定、
「まことちゃんかなあ」
と、俺の膝の上に座る理一が小さな手で優雅にお金を差し出し。
理一も犬のうんこ踏んだり、パパラッチに撮られて一時期、人気に影が出来たり、傘を忘れて土砂降りに遭い風邪を引いたが、川で溺れてる人を助けて表彰されたり、CDがミリオンヒット飛ばしたり、紆余曲折ながら、案外、調子良く進んでいる。
恋人が出来たマスで、
「あー、れいなちゃんかな」
「れいなちゃんかもな」
と、俺と陽平くんが野次を飛ばすとわかりやすく顔を赤くし、
「だったらいいな」
と呟き、可愛い面も見せたが、あまりに俺が悲惨なマスに止まりすぎ、お金がない状態になると、
「...まことちゃん、大丈夫?お金足りる?」
と、二歳児に心配され、
「僕、お金、貸してあげようか?」
本気で心配した面持ちでそう言われて、
「いや、いい、大丈夫だ。なんとかなる」
そう断る羽目になるとは複雑な気分だ。
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