154 / 155
巡りゆく季節
しおりを挟む俺と俊也、涼太と豊、四人でイルミネーションが彩る街路樹を歩く。
涼太の左手首には今も尚、豊からプレゼントされた小さな貝殻がポイントのブレスレット。
俺の左手首には俊也からプレゼントされた小さな星が輝く華奢なブレスレットが揺れる。
秋が過ぎ、肌寒い冬。
昨年、涼太や豊との歯車が狂い始めた冬だ。
けれど春に俺は俊也と出逢い、狂った歯車は原状回復どころか俺たちを深い絆に導いた。
クリスマスイブはみんなでショッピングを楽しみ、プレゼント交換する前にイルミネーションを見ることになった。
豊に至っては、
「去年はさ、涼太。一緒に樹のクリスマスプレゼント選びに付き合ってもらって。
俺は樹のプレゼントばかり考えて。
お前へのプレゼントを選びもしなかったな、今更だけど」
真ん丸な瞳で苦笑する豊を見上げていた涼太は、
「...それは...俺も同じだし」
変わらず涼太は頬を膨らませ、そっぽを向いて怒っているような拗ねたような様子だけど。
単なる照れくささからだと全員わかってる。
「ほら」
豊が涼太にプレゼントしたのは手袋。
涼太はマフラーだった。
俺へのプレゼントする予定だったデザインとは異なったものらしいけど。
どうやら去年、二人はそれらを俺にプレゼントする予定だったんらしい。
そんな二人を俺と俊也は微笑ましく見守った。
四人でイルミネーションを眺めた後は以前、俊也が俺を連れて行ってくれた三ツ星ホテルのレストラン。
涼太は窓越しからの夜景に食入り、
「う、わ...めちゃくちゃ綺麗...。彰人も喜びそう。ね?豊」
「だな」
久しぶりに会ったウェイターの坂口さんは、
「お久しぶりです、樹さま、俊也さま」
「俺の名前を覚えてくれていてくれたんですね、嬉しいです!ありがとうございます」
にこ、と坂口さんは返事の代わりに微笑んでくれた。
俺もまだナイフやフォークを上手く使いこせはしないけど、俊也がフォローしてくれて、安心して食事を楽しんだ。
涼太も手間取っていたけれど、豊が、
「ほら、貸してみ」
涼太の皿を取り、食べやすいように切り分けてあげていた。
イブはダブルデートだけど明日のクリスマスはそれぞれ、二人きりで過ごす予定だ。
俊也の右手もしばらくのリハビリの後、すっかり完治した。
ピアノのコンクールを辞退しなければいけなくなったことも。
「ピアノだけに限らずだけど。
焦らなくてもまた秋は来るし。同じ季節は来ても前の年より、より良い季節になるかどうかは自分次第だと思うから」
食事の合間、俊也は微笑を浮かべた。
「そうだね。四季を楽しみながら...もっともっと幸せを感じていたい」
肩を竦め照れ笑う俺に俊也が優しい瞳で頷いた。
坂口さんが用意していてくれたクリスマスケーキをみんなで食べた。幸せなクリスマスイブ。
13
お気に入りに追加
664
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる