もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
141 / 155

涼太side

しおりを挟む

不意に目が覚めた。

少し離れた隣では豊はぐっすり眠っていて、ベッドの下の2つ並んだ1つの布団には樹と俊也が眠っている。

手持ち無沙汰でベッドから起き上がった。

みんなを起こす訳にもいかないし、かといって、リビングのある一階に勝手に降りづらい。

豊のお父さんは仕事かもしれないけど、多分、お母さんがいる筈だし...。

昔から豊の家では人見知りになってしまうから...。

壁時計を見上げたら朝の10時過ぎだった。

と、突然、締め切っていたドアが開き、彰人が顔を覗かせた。

「涼太くーん!朝ごはんだって!さっきも来たけど、みんな寝てたからまた来た!」

思わず笑顔を返し、彰人に歩み寄る。

「そっか。ありがとう、彰人。みんなを起こさなきゃね。彰人はもう食べた?朝ごはん」 

彰人がぶんぶんと首を横に振る。

「ううん!みんなと食べたい、て、食べてない!お兄ちゃーん!起きて!朝ごはんー!」

んー、と横になったまま、豊がくぐもった声を上げた。

「んー...何時?彰人...」

「10時過ぎだよ、豊」

「あー...起きてたんか、涼太」

「うん、さっきだけど。樹たちも起こさなきゃね」

そうして、2人も起き、みんなそれぞれ顔を洗い、歯を磨き、豊のお母さんの待つリビングへ。

ダイニングキッチンに彰人の分も含め、5人ぶんの朝食が用意されていた。

炊きたてのごはんにわかめと豆腐、葱のお味噌汁、玉子焼き、焼き鮭、ほうれん草のお浸しに茄子の煮浸し。

「えーっ。パンが良かったなあ、僕」

彰人が可愛い声を上げた。

「わがまま言っちゃダメだよ、彰人」

彰人を窘めた。

「すみません、お手数をお掛けしてしまって」

俊也は5人ぶんという量に恐縮しているみたいだ。

「いいのいいの。お代わりもあるからたくさん食べてね」

全員で、いただきます、と朝食をご馳走になった。

「にしても、どうする?今日」

樹が切り出した。

「僕、涼太くんと遊びたい!」

「こら。お兄ちゃんたちの邪魔しちゃダメよ、彰人」

ふふ、と笑んだ。

「大丈夫です。夏休みの宿題は終わったの?彰人」

「んー、まだちょっと」

「豊兄ちゃんに宿題を見てもらったら遊ぼうか」

「...宿題、しなきゃダメ?」

上目遣いで口を尖らせて彰人が小さく聞いてきた。

「うん。宿題を済ませてからなら、彰人が好きな遊びしよ?」

「...わかった」

不意に、樹の視線を感じた。

「本当だね。彰人くん、涼太に懐いてるね」

「え?うん、かな?」

豊が嬉しそうな柔らかい眼差しで口元を綻ばせて見つめていて...なんだか照れくさい。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

処理中です...