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涼太side
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樹の部屋で二人きりで夏休みの宿題をこなしながら。
樹の表情、たまに大丈夫?てくらい、ぽわん、としてもいるけど、どことなくアンニュイな物思いにふける感じもある。
「....で。樹の頼りがいある優しい王子様も来るんでしょ?」
「え。んー」
昼前から樹の家で食事をご馳走になり宿題したり、夜からは近所での夏祭り。
俺と樹や豊は幼馴染でわりと家も近いけど、俊也は違う。
「....昼頃はね、俊也、顔合わせなんだって。なんか、ほら、婚約者と...その、両親もいらっしゃるとかで、はっきり断る、て言ってた、けど。ちょっと不安」
「ああ...なるほどね...」
樹がなるべくポジティブでいたいから、二人きりの夜を、多分、情熱的で甘い夜に現実逃避したい、て気持ちもわかる気がする。
「....まあ、なんとなく。俊也なら大丈夫かな、て気がするけどな」
「うん....。あ、でも豊は?」
「あー...。彰人に勉強、教えてやって、て言われたみたいで。後で来るとは思うよ」
不安そうな樹に敢えて微笑んでみせた。
「....もしかしたら、俊也、豊には話してる、かな....」
「....なんのこと?」
「んー....。俊也、海外の大学に進学とかどうって話してくれて。俊也はピアノやりたいみたい。だけど、こう海外で世界観?視野が広がるかな、とか、語学も学べるし、て。それで、涼太たちもどうかな、て言ってて」
「....海外?」
「うん。俊也と豊、なんだろ。馬が合ってる感じするし、豊には話してるかな、....涼太は聞いてない?」
しばらく、思考を巡らせた。
「....どうしよ。俺、進路とか全然、考えてなかった。....俊也、て凄いよね。まだ高1なのに、将来とか未来だとか考えててさ」
「ね、俺もびっくりした。でも、俊也の言う通り、もしかしたら、二人にもいい機会なのかも...とか思う。豊から聞いてはないんだね、涼太」
「うん...」
「焦らなくていいと思うけど、豊は涼太を引っ張っていってるな、て見ていて伝わるし、凄く。大切にしてるんだなぁ、て。涼太のこと」
くすぐったい...な。
確かに最近の豊、凄く優しいし、笑顔を向けてくれる。
俺を見守る温かい眼差し、愛おしい、みたいな瞳。
「....俺、自分に自信がなかった、ずっと」
樹の視線を感じながら、テーブルの上の参考書に目線を落とす。
ふふ、と可愛らしく樹が笑う。
「でも、幸せなんでしょ?伝わってくる。最近の涼太を見ると」
「....まあ、でも豊からはさ。樹や俊也と比較しなくていい。お前はお前だし、代わりは居ないし、て...」
「....そりゃそうだよ。涼太には涼太の良さがあるもん」
「....俺のいいとこ?」
目を丸くする俺に樹は無邪気な笑顔を見せた。
「うん。涼太の照れてるのにキレる感じ?俺には真似できないし」
「....なにそれ。喜べない、けど、俺」
プブッ、て樹がまた笑う。
「それ。照れてる感じするのにキレる涼太さ。なんて言うか...ツンデレ?俺、涼太のそういうとこ、嫌いじゃないよ。なんかほのぼのするというか」
....そう言われたら、嫌な気分、じゃないな...。
でも...。
「....俺、ツンデレ?」
「うん。涼太は自覚ないかもだけど。豊もそういうところが好きになったんだろうなぁ、て感じする。俺も涼太のツンデレ、好きだし」
「....ありがとう?て言っていいのかわからない....」
「まぁ、二人だけの秘密、てことで」
「う、うん...。でも、海外とか考えたことなかったけど...」
「そこは。豊がいずれ話してくれるんじゃないかな...。もちろん、無理強いはしないし、したくないけど。
ゆっくり二人で話し合って考えたらいいよ」
樹の可愛らしい笑顔。
でも、なんだろ。
無邪気な笑顔なのに、説得力もある。
....俊也の影響、かな。
「....夏祭り、楽しみだね」
「うん。あ、そうそう。涼太は浴衣とか着る?
うちの母さんがさ、涼太くんもどうか、て話してた。俺の以前、着てたのがあるから」
「...樹はどうするの?」
「うーん、俊也も浴衣、着てくるみたいだし。
それにせっかくの夏祭りだし。
形から入るのもいいかな、て思うから、俺も着ようかな、とか...」
「...なに?」
「んー...俊也の浴衣姿、きっと素敵だろうな、て。
だから、俺も俊也と並んでさ、俊也に釣り合えるようになれたらいいな。
どんなのが似合うかなぁ、とか模索しちゃう...」
はにかんだ樹の笑顔が...眩しい。
四人揃っての夏祭り。楽しみだな...。
....俊也も婚約者やその両親との顔合わせ、上手くいけばいいな。
はっきり断る、て樹には力強くそう言ったらしいけど。
樹の為なら体を開く俊也のことだし、樹も感情表現が本当に豊かにもなった。
「....きっと。俊也なら大丈夫、そんな気もする。
まぁ...俺は豊とは安心はするんだけど。
二人みたいに逐一、ドキドキやイチャイチャ、出来ないのは父親の件だけじゃなく、小学校の低学年から知ってる間柄だから、てのも多分、あるかも...。
もしかしたら」
「...そっか、なるほど。...確かに幼馴染の二人と違って、俺と俊也は知り合って、出会って間もないし...
そういうのもあるのかな。
でも涼太が自然に豊に笑顔を向けてるのを見るとね、なんだかほのぼのするんだよね」
嬉しそうに微笑む樹に、伝えたい、な。
勇気を出して、伝えたい...。
「....ありがと。樹」
樹は俺を見つめ、微笑んだ。
ああ...俺、樹を好きになって良かったな。
一時期、樹の優しさや怒らない樹に甘えてたりもしたけど。
ううん。
樹だけじゃない。
豊だけでもなく、俊也とも出逢え、本当に、本当に、良かったな...。
思うず、俺も自然と笑みが溢れた。
樹の表情、たまに大丈夫?てくらい、ぽわん、としてもいるけど、どことなくアンニュイな物思いにふける感じもある。
「....で。樹の頼りがいある優しい王子様も来るんでしょ?」
「え。んー」
昼前から樹の家で食事をご馳走になり宿題したり、夜からは近所での夏祭り。
俺と樹や豊は幼馴染でわりと家も近いけど、俊也は違う。
「....昼頃はね、俊也、顔合わせなんだって。なんか、ほら、婚約者と...その、両親もいらっしゃるとかで、はっきり断る、て言ってた、けど。ちょっと不安」
「ああ...なるほどね...」
樹がなるべくポジティブでいたいから、二人きりの夜を、多分、情熱的で甘い夜に現実逃避したい、て気持ちもわかる気がする。
「....まあ、なんとなく。俊也なら大丈夫かな、て気がするけどな」
「うん....。あ、でも豊は?」
「あー...。彰人に勉強、教えてやって、て言われたみたいで。後で来るとは思うよ」
不安そうな樹に敢えて微笑んでみせた。
「....もしかしたら、俊也、豊には話してる、かな....」
「....なんのこと?」
「んー....。俊也、海外の大学に進学とかどうって話してくれて。俊也はピアノやりたいみたい。だけど、こう海外で世界観?視野が広がるかな、とか、語学も学べるし、て。それで、涼太たちもどうかな、て言ってて」
「....海外?」
「うん。俊也と豊、なんだろ。馬が合ってる感じするし、豊には話してるかな、....涼太は聞いてない?」
しばらく、思考を巡らせた。
「....どうしよ。俺、進路とか全然、考えてなかった。....俊也、て凄いよね。まだ高1なのに、将来とか未来だとか考えててさ」
「ね、俺もびっくりした。でも、俊也の言う通り、もしかしたら、二人にもいい機会なのかも...とか思う。豊から聞いてはないんだね、涼太」
「うん...」
「焦らなくていいと思うけど、豊は涼太を引っ張っていってるな、て見ていて伝わるし、凄く。大切にしてるんだなぁ、て。涼太のこと」
くすぐったい...な。
確かに最近の豊、凄く優しいし、笑顔を向けてくれる。
俺を見守る温かい眼差し、愛おしい、みたいな瞳。
「....俺、自分に自信がなかった、ずっと」
樹の視線を感じながら、テーブルの上の参考書に目線を落とす。
ふふ、と可愛らしく樹が笑う。
「でも、幸せなんでしょ?伝わってくる。最近の涼太を見ると」
「....まあ、でも豊からはさ。樹や俊也と比較しなくていい。お前はお前だし、代わりは居ないし、て...」
「....そりゃそうだよ。涼太には涼太の良さがあるもん」
「....俺のいいとこ?」
目を丸くする俺に樹は無邪気な笑顔を見せた。
「うん。涼太の照れてるのにキレる感じ?俺には真似できないし」
「....なにそれ。喜べない、けど、俺」
プブッ、て樹がまた笑う。
「それ。照れてる感じするのにキレる涼太さ。なんて言うか...ツンデレ?俺、涼太のそういうとこ、嫌いじゃないよ。なんかほのぼのするというか」
....そう言われたら、嫌な気分、じゃないな...。
でも...。
「....俺、ツンデレ?」
「うん。涼太は自覚ないかもだけど。豊もそういうところが好きになったんだろうなぁ、て感じする。俺も涼太のツンデレ、好きだし」
「....ありがとう?て言っていいのかわからない....」
「まぁ、二人だけの秘密、てことで」
「う、うん...。でも、海外とか考えたことなかったけど...」
「そこは。豊がいずれ話してくれるんじゃないかな...。もちろん、無理強いはしないし、したくないけど。
ゆっくり二人で話し合って考えたらいいよ」
樹の可愛らしい笑顔。
でも、なんだろ。
無邪気な笑顔なのに、説得力もある。
....俊也の影響、かな。
「....夏祭り、楽しみだね」
「うん。あ、そうそう。涼太は浴衣とか着る?
うちの母さんがさ、涼太くんもどうか、て話してた。俺の以前、着てたのがあるから」
「...樹はどうするの?」
「うーん、俊也も浴衣、着てくるみたいだし。
それにせっかくの夏祭りだし。
形から入るのもいいかな、て思うから、俺も着ようかな、とか...」
「...なに?」
「んー...俊也の浴衣姿、きっと素敵だろうな、て。
だから、俺も俊也と並んでさ、俊也に釣り合えるようになれたらいいな。
どんなのが似合うかなぁ、とか模索しちゃう...」
はにかんだ樹の笑顔が...眩しい。
四人揃っての夏祭り。楽しみだな...。
....俊也も婚約者やその両親との顔合わせ、上手くいけばいいな。
はっきり断る、て樹には力強くそう言ったらしいけど。
樹の為なら体を開く俊也のことだし、樹も感情表現が本当に豊かにもなった。
「....きっと。俊也なら大丈夫、そんな気もする。
まぁ...俺は豊とは安心はするんだけど。
二人みたいに逐一、ドキドキやイチャイチャ、出来ないのは父親の件だけじゃなく、小学校の低学年から知ってる間柄だから、てのも多分、あるかも...。
もしかしたら」
「...そっか、なるほど。...確かに幼馴染の二人と違って、俺と俊也は知り合って、出会って間もないし...
そういうのもあるのかな。
でも涼太が自然に豊に笑顔を向けてるのを見るとね、なんだかほのぼのするんだよね」
嬉しそうに微笑む樹に、伝えたい、な。
勇気を出して、伝えたい...。
「....ありがと。樹」
樹は俺を見つめ、微笑んだ。
ああ...俺、樹を好きになって良かったな。
一時期、樹の優しさや怒らない樹に甘えてたりもしたけど。
ううん。
樹だけじゃない。
豊だけでもなく、俊也とも出逢え、本当に、本当に、良かったな...。
思うず、俺も自然と笑みが溢れた。
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