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誇らしい...俺にとっても宝物みたいな彼氏
しおりを挟む不意に膝に置いた手の甲に重ねられていた俊也の手のひらが俺の手を唐突に力強く握り締めてきた。
思わず、咄嗟に俊也を見上げたら俊也の思いがけない真剣な眼差しとぶつかった。
「....涼太の件なんだけど。樹は涼太が心配?」
「そりゃそうだよ...。父親から虐待だとか...
その...強要されてた、とか、その...性的なこと...。俺も涼太と同じオメガだけど...想像もつかないけど...嫌だもん、絶対...」
「....まあ、だよな、俺も。俺がもしオメガだとしても、今のままだとしても。
父親に虐待だけじゃない、無理やり体の関係、だとか、耐えれないし。
俺も父親との関係、良くないしさ、昔から。だから余計に俺も耐えられないかな、なんとなくだけど」
何かを思い出しているようなテーブルの一点を見つめたままの俊也の瞳に。
瞬きもせず、遠い眼差しながら力強さを秘めた、俊也のそんな瞳に釘付けになった。
「ただ、さ。樹が同情して涼太の前で泣いたりするようなら、ね。
俺は樹には話せない。
樹が涼太に同情して泣いたり苦しんだら。
きっと、涼太は尚更、苦しむと思うから。
いや、違うな、互いに苦しむから。
....ここだけの話し、なんだけど」
俊也の冷静な声色に集中し、耳を傾ける。
「豊も泣いたみたいでさ。涼太にとっては真実を知られて泣かれたくないかな、と思うんだよね...。
きっと、豊だけじゃない、誰にも。
でもさ、特に樹には....。なんとなく...」
テーブルの一点を見つめていた俊也の瞳が視線を外し、俺に向けられた。
穏やかな、いつもの優しく愛おしい俊也の眼差し...。
「樹には、さ。俺も笑っていて欲しいし。
涼太もそうなんだと思うよ、理由は違うんだけど。
樹は優しいから、怒ったりしないじゃん?
以前、怒ることが疲れる、て俺にもそう言ったし」
穏やかに口元を綻ばせて....
きっと俺を気遣って...。
「樹は、さ」
俊也は微笑みながら俺の手を再び優しく包み込み、
「想像すらさせたなくないから、だから話していいのかわからない。涼太も望んでいるかわからない。けど、多分、互いに苦しむかな、て感じるからね、確認」
....優しいな、本当に、俊也、て....優しい人なんだな....。
俺に...気遣って、微笑んで、俺の緊張や不安を解すかのような穏やかで純粋な眼差しで。
俺を見つめて....確認だなんて。
「涼太にとっては優しくて穏やかな性格の樹が好きになって甘えてもいて。
そんな樹にだけね、甘えられたのかな、て。
だから樹に気づかせたくなかったのかもしれないな、て思うし...
樹は涼太と同じオメガでもあるし...それに昔、涼太は樹が好きだった訳だし。
だから、涼太の前で万が一、樹が泣いたら...どうなのかな、て俺も戸惑っていてね、実は」
「....いつか、話して、くれる、かな....?
今は無理でも...涼太の前で...俺、泣いてしまうかも、しれないかな、わからないけど...
なんとなく....豊が泣いたんだとしたら俺も、もしかしたら泣くかも...しれない、かな...」
正直、父親にそんなこと、され続けたら...俺はどうだろう、て考えもしたけど。
投げやりになるかな、人見知りみたいになるかな。
正直、俺には検討もつかなくて。
ただ辛くて悔しいかな、怖いかな、くらいしかわからなかった。
「だから、さ。樹は涼太に明るく接していて?見守ってあげる、みたいなさ。
豊と俺で決着、付けるから、絶対に。ね?」
優しい眼差しで、言い聞かせるみたいに口元を綻ばせながら、俊也は俺の不安を掻き消すようにそう言ってくれた。
....俺だけじゃなくて、ようやく親友になれた、涼太と俺の今やこれからの関係すら、きっと心配して...。
「....うん。ありがとう、俊也...」
好きだ、な....。
凄く、凄く。
痛感する....時間の流れと共に。
月日が経つごとに増していく...
俊也への好きだ、て思い。
大切にしたい、大切にされているんだな、て気づかされていく...。
誰かのために懸命に考えて頑張る、そんな俊也が俺は好きだ。
本当に、本当に、大好きで仕方ない...。
俺の頬が綻ぶと、俊也も優しい笑みをくれた。
本当に、敵わないなあ。
俺の大好きな。俺にとっても宝物みたいな、俊也はそんな彼氏。
誇らしいな....なんだか暖かくなって穏やかな優しい気持ちに溢れてた。
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