もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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したい、な.....

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....俺、ファッションに疎いから。
恥ずかしいけど、妹の夏美にコーディネートしてもらった。

「なに?デート?わかった!お兄ちゃんの彼氏がびっくりして惚れなおす!みたいなの頑張ってみよ」

偶然、ファッション雑誌読んでた夏美はそう言って。

「んー、お兄ちゃんは白とか淡い紫やピンクとか似合うかなあ、小さいし、華奢、ていうか」

....妹にそんなこと言われるのかなり複雑だったけど。

「てか、お兄ちゃん、ファッション疎かったのに服、増えた?彼氏さんの影響?」

....俊也が、その、彼氏が見立ててくれて、一緒に買いに行ったから....なんて妹には、ちょっと...ううん、かなり話しづらい。

「....うん、まあ、そんな感じかな...」 

そうして。

俺は映画館の暗闇の中、一緒に映画を観てる。

「難しい話しもいいけどさ、たまにはラブストーリーやコメディなんかどう?ホラーは、なんか違うかな、でも樹が怖がって....」

「なに?」

「え?あ、いや、怖がらせたくはないんだけど。樹、怖がって手、握ってくるかな、とか。お化け屋敷とかも...怖がって欲しくはないんだけど、抱きついてくれるなら...ありなのかな、て思って」

考え考え、淡々とそう電話で俊也は話すけど、....そんなこと言われたら俺、俺めちゃくちゃ照れくさいというか....。

映画館の中、たまにスクリーンの光に照らされる隣に座る黒髪に戻った俊也の横顔はとても綺麗だな、て思う。

んだけど....
結局、ラブストーリーを観ながら貝殻繋ぎで手を握られて。

ちょこちょこ俊也は顔を寄せ耳元で、

「....ね、今のシーンいいよね、樹はどう?凄くない?」

「わ、俺、ここ凄い好き。樹は?」

「あ、ここ泣きそ。凄いね、なんか」

耳元で逐一、囁くし、耳に息がかかって....くすぐったい。

手まで握ってる....貝殻繋ぎで力強く、そして優しく握りしめられていて....

顔だけじゃなく全身が熱くて、硬直して、映画に集中できない....。

こんなの初めてで、なんというか....。

チラ、と俊也を見たら、ん?て感じで目があった。

優しい瞳に吸い込まれそう....。

「あ、あの....しゅ、俊也、あの、ね....」

辿々しくも俊也に呟いた。

優しい俊也は言葉の続きを微かに微笑んで待ってくれている....。

「あ、あの....その、しゅ、俊也は....平気....なの?お、俺、その....」

きょとん、とした眼差しを見つめながら....。

「あ、あの、ね、その....し、したい、ような....感じで、俺....」

しばらく俊也は放心状態みたいにぼんやり俺を眺めてたけど、ああ、て感じで。

「....ごめん、気づけなくて。行こうか」

伝わった...かな、俊也が優しく手を引いてくれ、映画の最中だけど連れ出してくれた。

でも...着いた先は館内のトイレ。

「俺、扉の向こうで待ってるから」

ち、違う、んだけど...そういう意味じゃなくて....。

い、言えない、俊也と...セックスしたいんだけど、て意味、だったんだけど....。

トイレの個室で1人、扉に背中を預け、照れくさすぎて熱くて堪らない顔を両手で覆う....。

扉のたった1枚の壁の向こうには俊也がいる、んだけど....さすがに初めてがここは、な....。

....俺、なに考えてるんだろ....
は、恥ずかしい。

尚更、丸くなり誰もいない、見てもいないのに、俺は顔を両手で覆って蹲った。

でも、扉の前で待ってくれてる、てなんか俊也らしいというか、優しいな、やっぱり俊也....。

優しい。すっごく好き....。上手く伝えたいのに難しいな...。

少し頬が緩む。

豊は焦らなくて良くない?て言ったっけ、とか、俊也は宝物みたいに俺を思ってるとか。

涼太もコテージで。
俊也が抱き締めたり軽いキスしかしてくれない、て相談したら、涼太は、ぽかん、として爆笑されたな...なんて思い出したから。
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