117 / 155
箸を落としそうな家族団欒の夜
しおりを挟む俊也と夕飯までずっと電話で喋ってた。
お父さんは有名な病院の院長でお母さんは有名なお菓子メーカーの企業の孫だとかで、やっぱり俊也、てお金持ちのおぼっちゃまなんだな、てそう感じた。
「今日、母さんが食事、作ってくれるらしいんだ!父さんは会食で遅いし、なにがいい?てリクエストしてくれて、迷ってるんだよね。和食、洋食....?悩むなあ。樹は今日の夕飯はなに?」
凄く嬉しそうに俊也はそう言って。
普段は家政婦さんが食事を作るみたいだけど、俊也はお母さんの作る食事が好きなんだな、て凄く伝わった。
以前、フランス料理のフルコースが嫌い、て言ってたのを不意に思い出したりもした。
難しい話しが多いし、て。
そういえば、以前、連れて行ってくれた三ツ星ホテルの高級なレストランもフォアグラや和牛のステーキやエスカルゴやら凄かった。
確かスープからとか決まりがあったはずだけど、俊也、纏めて持ってきてもらってたな...。
まだ16だというのに俊也は慣れていて、カッコよくて、でも俺がフォークを誤って落としたとき、本当に逃げ出したくなったけど、俊也も、顔見知りらしいウェイターの方もとても優しくしてくれて....。
うちは本当にごくごく有り触れた一般家庭で、ある意味、俺って家庭環境、恵まれてるんだな、て痛感した...。
「父さんに話す前に、直接、樹に話したい。会いたいな...なるべく早く」
俊也がそう言ってくれて、めちゃくちゃ嬉しかった。
「今日は多分、父さん、会食だから遅いから、顔を合わせはしないけど、今日はちょっと無理だから...明日、会える?なにか、観たい映画とかある?樹は映画、好きだから。
なにか観たいのあるなら俺も観たいな。
樹と観たあの映画、面白かったし」
明るくて優しい笑顔が浮かぶ声....。
本当に俊也は優しくて思いやりがある人なんだな、てつくづく思う。
俺をそう気遣ってくれる、いつも。
ロミオとジュリエットみたいに寮を抜け出しての夕飯も、いつも、なにが食べたい?て尋ねてくれて....。
「お兄ちゃん。お兄ちゃん、てば!」
「ん?なに?夏美」
両親、妹、家族での食事の最中だった。
「ずーっと、お兄ちゃん、にやにやしてる、いいことあった?」
「に、にやにや...?してた?嘘」
うわ、恥ずかしい...。
まだ中2の妹に気づかれそうで。
「あれ?」
ダイニングテーブルの隣に座る夏美が左手首を見つめ、箸を止めた。
「そんなブレスレット、してたっけ。めっちゃ綺麗...!何処で買ったの!?」
いきなり左手首を掴まれて凝視され、焦る。
恋人に貰いました.....?
い、言えない....。
は、恥ずかしい、さすがに妹には....両親までいる、てのに。
「んー?ホントね。幾らしたの?....待って、それ、シルバー?プラチナかしら....」
夏美に釣られ、母さんにまでブレスレットを凝視された...。
「....ダイヤモンドじゃない?これ。ガラスじゃなさそうね....どうしたの、これ」
「だ、ダイヤモンド....?プラチナ....?」
確かに俊也はプラチナカードを持ってたけど...え?
「こ、これ、て、高い、の、かな....?」
母さんがキョトンとなって、しばらく無言のままだ....。
「....そりゃ、もしかしたら数万か下手したら数十万か、もっとするのかしら....プラチナにダイヤモンドだもの」
箸を落としそうになった。
「婚約でもしたの?お兄ちゃん」
夏美、黙って...お願いだから....。
母さんがびっくりしてるから....。
俺もだけど。
「....ちゃんとしっかりお礼言うんだぞ?そして、今度、連れて来なさい」
あ、多分、母さんだけではなく父さんにもバレた...。
「....うん」
隣の夏美におちょくられそう、と思った、けど。
「良かったね、お兄ちゃん!私も会ってみたい!イケメン!?ねえ、お兄ちゃん!」
....夏美に会わせたくないけどな....。
夏美、可愛いから...。妹だけど。
シスコンのつもりはないけど。
俊也、綺麗な顔、してるし、手足も長いし、アイドルが大好きな夏美、キャーキャー言いそう....。
嫉妬とかじゃないけど、多分。
照れくさい....かも。
24
お気に入りに追加
664
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる