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大好きだからこの恋を終わらせたい...
しおりを挟むああ、豊を泣かせてる...
俺を抱き竦め、豊が苦しんでる。
肩越しに...豊は俺を抱き締め、泣いていて互いに表情がわからない。
俺は微かに笑って、そして泣きそうだ。
....この恋を、終わらせよう。
豊が、好きだから。だから、豊には幸せになって、欲しいから。
終わらせよう...。
「....そんなに...抱き締めないで、汚いから、俺。触らないで、ごめんね」
「....汚くなんか、ない、だろ....」
「....汚いよ、俺...。だって、だって、俺、さ、父親とセックス、してたんだよ?中学んとき、数えきれないくらい...してたんだよ」
ああ、終わる、この恋が、終わる。
涙が頬を伝う。泣きたくなんてないのに。
笑ってたら楽なのに。
昔みたく泣き疲れたくない、のに。
「....話したく、なかった、んだ、けど....」
「だったら無理に話さなくていい」
「ううん...言わなきゃ。こんな俺、本当は豊には不釣り合いで...ううん、誰とも、本当は...」
瞼を閉じた。
息を思いきり吸い込んで、豊の香りを吸い込んで、呼吸を整えた。
「....俺、父親の子供が出来たことがあるんだよ」
豊が硬直したのがわかった。
「....今、なんて、言った....?」
「....二回、違うな、三回?俺、父親の子供が出来ちゃって、そして中絶した。そして、凄く嫌なのに大嫌いなのに、体は感じた。汚いでしょ?俺」
「....お前が...望んだのか?お前から誘惑したのか?父親を。子供を...父親の子供を....違うだろ?お前はレイプされてたんだよ。体は感じた?でもそんな自分がお前は嫌だったんだろう?違うか?」
目を見開いた。
「....どうして...わかるの」
「お前から誘惑したり、子供を望んでたんなら、寮のある高校ばかり探さないし、選ばないだろ。俺が最初に志望してたとこも寮があった」
ようやく豊は俺を離した。
豊の真剣な眼差しから目が離せない....。
驚愕で、目が....。
「....自宅にいたら...父親が、いたら...嫌だ、から」
「汚いのはお前じゃない。お前の父親だ。お前は汚くない。笑顔も気持ち悪くなんてない。お前の父親の笑顔が気持ち悪い。俺はそう感じる」
声が...出てこない。
豊が呆然としてる俺に微笑んだ。
「幸せになろう、俺と。過去は捨てて。幸せになろう。上書きしよう、お前の嫌な過去。俺が塗り替えるから」
....豊の、優しい眼差しが...微笑みが...。
「....終わらせる、はず、だった、のに。嫌われる、て、豊は、俺を嫌うだろうな、て、思った、のに」
「いっぱい笑っていっぱい泣け。俺と一緒に。俺もそうするから、だから、もう1人で泣くな。無理して笑うな。自由になれ。俺と一緒に楽しく過ごそう?お前が好きだから。もう苦しむな、お前が苦しんだら、俺も苦しいよ」
....本当に、本当に。
豊は、豊って奴は。
樹とおんなじだ。
優しい。真面目で正直で....こんなに好きになるなんて。
涙が止まらない。
そんなこと、言われたら...。
別れられない。
別れたくなんてなかったけど、本当は...。
また、豊は抱き締めるから...豊のTシャツが俺の涙で濡れて。
でも、とても、とても嬉しかった。
「こんな俺を、受け入れてくれて、ありがとう....豊」
「こんな、なんて要らない。そんなお前でいいんだ。涼太が好きだよ。代わりはいない。比較しなくていい。樹とも俊也とも。
涼太は涼太のままでいい。俺がお前を幸せにするから、必ず。もう二度と1人で傷ついて苦しめないように。必ず」
豊の優しい腕の中で、俺も安らぎを感じ瞼を閉じた。
豊の香りに包まれて、そして大好きなその背中に腕を回し強く、強く抱き締めた。
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