もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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それぞれの分岐点

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「えーっ!俊也、髪!」

俺の部屋に集合したが、涼太は目をまん丸にして黒髪の俊也を指差し、驚愕の声を上げた。

「へえ。いいじゃん。」

豊は静かにそう微笑み、俊也は照れくさそうで、そんな俊也や涼太と豊の異なった反応に俺の頬は綻んだ。

それぞれの夏休みの話題になった。

「お前、うちに泊まれよ、涼太」

テーブルを囲む中、僅かな距離を置いて座る涼太に豊がそう話し、唖然として思わず豊を見つめた。

「は!?やだし!なに考えてんの、豊」

「なに、て...父親は?出張でいないのか?」

その言葉で、ようやく豊は涼太が受けていた父親からの性的虐待の心配だと、遅ればせながら気がついた。

涼太は一瞬、何度か瞬きを繰り返した後、視線を手元に逸らした。

「...わからない。けど、大丈夫....自分でなんとかしなきゃだし....」

「なんでだよ!俺じゃ頼りにならないか?」

「違う...終わらせられるのは自分しかいないから...だから...」

暫しの間を起き、豊は涼太の肩に手を置いた。

「...なにかあったらすぐに連絡しろよ、急いで駆け付ける」

「俺も!俺も近所だし、一人で解決しようとしないで、俺たちも頼って欲しい」

慌てて、俺が豊に続けると、微かに涼太が笑みを浮かべた。
どこか儚げな切ない微笑だった。

「....うん」

「俊也も実家なんだよな?」

「ああ。俺も自由になる為に頑張ってくるよ」

俊也が豊に笑ってみせ、

「二人の言う通り、一人で解決しようとすんなよ?少しでもいい、お前の頼りになりたいんだよ、みんな」

涼太は真摯に俊也の話しを聞いた後、力強く頷いた。

「....俊也も心配だけど、涼太も心配....」

俊也と二人きりになり、ようやく本音を切り出した。

「だな...。涼太の父親が出張行ってくれてることを願うな」

「うん....」

「樹」

「ん?」

互いに膝を抱えて並んで座っていたが、顔を上げるとすぐに俊也が小さなキスをくれた。

「樹もなにかあったらすぐに連絡しろよ?」

「うん。俊也もね」

そうして、再度、どちらからともなく唇を合わせた。
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