もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
91 / 155

3

しおりを挟む

「....今更だけど、小一の時の約束。忘れててごめんね、涼太」

不意に隣に立つ小さな樹が困惑した顔で謝った。

「や、その事はもう....」

「涼太はさ、今、好きな人とか....いないの?」

尋ねられて、心臓が飛び出すんじゃないかと思った。

「涼太が前に言った。後悔先に立たずだよ、て...涼太がいてくれて、俺は俊也と知り合えた。幸せだよ、でも欲張りになる。もっと幸せになりたいし、幸せにしたい。俊也を。涼太はそういう人いないの?」

後悔先に立たず、か。
....図らずも、俊也の抱え込んでいた過去を思い出した。
片思いしていた、女の子が自殺した、あの事件。
そして、あの速報...。

人って永遠なんかじゃないんだ、て俊也が一番に知っていて。そして、気づかせてくれた。

何故か隣に立つ豊を見上げてしまう。

泣いたばかりの多分、変な顔を見られてる...ダサい俺。

「お、俺は....」

は、恥ずかしい。

体の関係もあった、てのに。
それを思い出したら、また恥ずかしくて、顔を覆いたくなる。

「....顔隠して尻隠さず、だな」

「....うるさいよ」

顔を覆っていた手を外し、すうっと息を吸い込み、

「....俺、凄く変で。なんで今更、て思うのに、豊といると調子狂う....」

あー、思わず、ぶすくれる俺。可愛くないな。
樹みたいにいつもにこにこ出来たらいいのに。

「....俺も。あんなに嫌いだった筈なのに、なんか可愛いなあ、て思う...変なんだよな。いつもブレスレット付けてくれてて嬉しいな、て思ったり。...さっきの冗談は本当。好きだよ、涼太」

....豊の笑顔が眩しい。
でも。

「....い、樹や俊也がいるところで言わないでよ、は、恥ずかしい!」

途端、みんなが爆笑した。

「すっげ、茹でダコみたいに顔真っ赤。照れてるのか怒ってるのか、わかんねー」

「もう!照れてるんだよ、俊也」

「ふ、二人もちょっと黙ってー!」

俺は思わず、その場で蹲り再び顔を覆うと、またみんなに爆笑された。

「で?眠り姫。返事は?」

「....よ、よろしくお願いします....」

変わらずしゃがみ込んだまま、消え入るような声がやっと出た。

「俺さ、友達、ていた事ないんだけど。こんな感じかな?」

不意に俊也が微かに笑った声で言った。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

処理中です...