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花火
しおりを挟む夜まではみんなでコテージに置いてあったUNOやトランプをして過ごした。
絶対にテレビは付けない。
そして夜。
軽装な俺たちは花火をたくさん持って、再びコテージの外へ向かう。
山沿いにあるってだけあり、真夏なのに夜は涼しくて心地良い。
この夏、初めての花火。
「めっちゃ綺麗。ね、俊也」
「うん」
暗がりを彩る花火を互いに持ち、笑顔になる。
涼太や豊も、
「わっ、綺麗」
「夏って感じするなー」
二人とも楽しそう。
「樹がさ、あの中華料理屋で言い出してくれて良かった。星が見たいって」
「星....」
「うん」
手持ち花火が終わり、ふと空を見上げると、満天の星空の下にいた。
「花火だけじゃない、星空まで綺麗...」
「だな。みんなさ、あのニュース知って、気を使ってくれたんだろ?」
「....知ってたんだ、俊也」
再び、隣に同じように座り込んだ俊也が真新しい花火に火をつけた。
花火が彩る俊也の横顔は綺麗な微笑だった。
「俺、テレビ観ないし、そもそも部屋にないからさ、わからなかったんだけど、母親から連絡があって。父さんの病院で事故があって、女優さんが亡くなって。病院も自宅もマスコミがたくさん湧いてて大変だから、暫く自宅には戻ってこないように、てのと、学校までマスコミが来たりはしないだろうけど...なんか心配されて。似てるから、て」
「うん....」
あの女優さんの件は、当初は自殺と報道されたものの、遺書もなく、自殺とは断定できないとして、転落事故に変わっていることも知った。
「お母さんも...俊也のこと、心配してるんだね」
「だね。あの家で唯一、俺を心配してくれてるのは母さんかも。それと学校では樹や涼太、豊」
「うん」
消えそうになった手持ち花火の先から火を貰い、俺も真新しい花火を手に持った。
「みんなに感謝したいな」
「このコテージとかで、充分だよ。バーベキューも美味しかったし」
俺と俊也は見つめ合い、そして、互いに微笑んだ。
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