もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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ふと、隣の豊を見ると、曲に合わせながら、たまに鼻歌を歌う横顔。

仄かな穏やかな笑顔を見つめた。

....豊は馬鹿がつくくらい真面目で。そんな豊に付け入り、俺は豊を騙した。

「涼太?どした?」

俺の視線に気づき、豊が丸い目で俺を向く。

「な、なんか眠くなってきたー!トイレも行きたいし!おやすみ、豊」

「え?うん。おやすみ、涼太」

慌てて、ヘッドフォンを外し、階段を駆け上がる。

一旦、トイレに入り、手を翳すと水が出る、センサー式の水道から冷たい水で顔を洗った。

そして、鏡の中の俺の顔を見上げた。

「....めっちゃ、だっさ。俺」

樹と俊也のように、俺は幸せになんてなれない。

豊どころか、俊也も樹まで騙した俺に資格なんてない。

あるのは天罰だけ。
その天罰は何故か、まだ来ないけど...。

みんなといると楽しくて、つい、笑顔になる。
楽しんじゃいけないのに、笑顔になっちゃ、いけないのに。

ふかふかな真っ白なタオルで顔を拭いた。

「....頑張って寝なきゃ」

そうして、俺はまた部屋に戻り、しばらくはベッドの隅に座り、窓からぼんやり夜空を見上げた。
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