もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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複雑な気持ち

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夕飯は涼太を交え、三人で食堂で食べた。

献立は天ぷらの盛り合わせ、牛肉と糸こんにゃくの炒め物、レタスとキュウリ、コーンのサラダ、お吸い物、白米。

隣の俊也は正面の涼太と笑顔で会話しながら、食事してる。

涼太が苦手、て言っていたのに....。

「へー、涼太もあの映画、知ってんの?」

耳に飛び込んで来た俊也の問いに俺は箸が止まった。

「あー、うん。DVD買った」

「良かったよな、あの映画」

「そうだね、でも、なんか難しすぎて、疲れちゃった。悪くはなかったんだけど」

瞬きを繰り返す。

イマイチだったよねー、と俺の買ったDVDを涼太はその場で放り投げたはず。

....まあまあ、てこと、だったのかな....。
でも、映画館で観なくて良かったね、て言ってた、映画館、確かに安くはないけど...。

違和感を覚えた。

「樹、原作の小説にハマってて。な?」

「え。う、うん...」

「へー!そうなんだ。読んでみたいかも!」

俺は驚愕の丸い目で涼太を見た。
涼太は普通に笑顔。

「い、いいけど...」

「あ、でも、返却が近いからさ。樹、涼太に貸してあげなよ」

「え」

「涼太、読みたいんだろ?悪いけど、返却もお願いしていい?」

「うん、いいよ。あ、俺、ちょっとお水、お代わりしてこよ。二人は?」

「俺はいいよ。樹は?」

「....俺も大丈夫」

席を外した涼太はコップを持ち、返却口の近くにあるサーバーに向かって歩いて行った。

「....樹」

「....なに?」

「夜。中庭に来て」 

「中庭に?」

「うん、渡したい物があって」

「渡したい物....?」

その後、そっと、俺の皿に俊也のまだ手つかずだった海老の天ぷらが置かれた。
真っ先に海老の天ぷらは食べていたから、また戻ってきたかのよう。

すぐに水のお代わりを持って、涼太が戻り、座った。

その後も、俊也と涼太の会話は弾み、俺はたまに俊也から話しをふられ、答えながら、1人、黙々と食事を摂った。
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