もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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いざ、テーブルでお会計。

「ご馳走様。凄く美味しかった」

「左様ですか、失礼ですが...お名前は?」

「あ...葉山樹、です」

「お食事は如何だったでしょうか」

「は、はい...俊也にも話したんですが、初めて食べる味がたくさんでびっくりしましたけど、美味しかったです、とても」

「左様ですか。何事も経験ですからね」 

にっこり、優しく坂口さんが微笑んでくれた。

経験....か。
そんな考え方もあるんだ。

坂口さんと会話している間に、俊也は財布からカードを差し出した。

「お預かり致します」

また、ぺこり、と頭を下げ、坂口さんがその場を離れる。

「....カード、持ってるんだ」

「ああ、うん。母親がさ、コンシェルジュのサービスも付いてたりするし、持たせてるんだ、プラチナカード」

思考が停止した。

「....プラチナカード...コンシェルジュ...?」

プラチナ、てアクセサリーとか、そんなイメージしか無かった。

「まあ、便利屋さんみたいなもん。使った事はないんだけどさ」

暫くすると、カードを返却に坂口さんが戻り、

「ありがとう、行こっ、樹」

「う、うん....」

俺たちの姿が見えなくなるまで、入り口かつ出口で、頭を下げて見送る坂口さんを見ながら、エレベーターが上がって来るのを待った。

「次、何処、行く?樹」 

「え...えっと...カラオケとか?」

思いついたので口にしたが、俊也は困惑した表情になった。

「....大丈夫かな、俺」

「あ、カラオケ、苦手?」

「ううん、行ったことがなくて。恥かかせないかな、樹に。仕組みとかよくわからない、てか、全然」

苦笑する俊也に唖然となった。

「....カラオケが嫌いなのかと思った」

「行く機会がなくて。でも、歌、歌うところなんだよね?俺、音痴だし、てか、あんま、歌、知らないからなあ」

なんだか、俊也と住む世界のレベルが違うことに今更、痛感した。
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