もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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窓際の席に案内され、思わず、夜景に見蕩れた。

「....綺麗」

「でしょ」

テーブルにレモン水がそれぞれの前に置かれ、

「ありがとう」

と、俊也はウェイターに笑顔を見せた。

「今日のオススメで。前菜とかいいから、纏めて持ってきて」

「かしこまりました」

深々と割と年配なウェイターは俊也に頭を下げた。

丸い目をする俺に俊也は邪気のない笑顔を見せた。

「特別な夜、て...どういう意味?」

「ああ...そうだな、人魚姫の涙を拭う夜?違うか、人魚姫を自由にする、そのお祝いと....単純に樹と一緒にいたいから」

真っ直ぐな俊也の瞳は穏やかで。
不思議と目が離せない。

「....人魚姫の涙....人魚姫を自由に....でも、人魚姫って人間になれなくって泡にされちゃうんじゃなかった?」

「そう。でも、泡にはさせない。だから、自由にさせるんだよ、人魚姫の呪縛をといて」

吸い込まれそうな俊也の瞳が、不意に夜景が広がる窓に移る。

「綺麗だよね、でも、人工的。全部、星だったらいいのに」

釣られて、俺も夜景を見る。

「....これが、全部、星なら...なんか、俊也ってロマンチストだね」

「そう?本ばっか読んでるからかな」

俊也がまた屈託ない笑顔になった。
俊也が笑うと俺まで笑顔になる。

暫くすると、料理が運ばれてきた。

「フォアグラの和牛ステーキ、俊也様のお好きなミディアムで焼き上げました。鴨のコンフィ、エスカルゴ、ブイヤベースは魚介類だけでなく、俊也様がお好みかと野菜もふんだんに使用致しました、カルパッチョは今朝、揚がったばかりの鯛を使用し....」

「説明はもういいよ、ありがとう、坂口さん。ところで、お味噌汁とサラダ、てお願いできる?無理ならいいけど」

坂口さん、て言うらしい。
俊也に笑顔を見せた。

「もちろんでございます」

「料理長の松井さん、とても美味しい料理、作ってくれるから、つい。無理、言ってごめんね」

「いえ、育ち盛りですから、健康的で素晴らしいと思います。伝えてまいりますので、一旦、失礼致します」

また深々と坂口さんは俊也に頭を下げた。

「食べよ、樹」

「う、うん」

笑顔の俊也になんとか笑顔を取り繕ったけど...見たこともない料理の数々に緊張し、目を奪われた。
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