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しおりを挟むふと、カップを持ったまま、樹は思案するように斜め上を向いた。
「どした?」
「んー?待たせてる間、相手の人、暇を持て余してたりしないかなあ、て。だから、近くにカフェがあれば入って時間潰してて、て言おうかなあ、あ、ゲーセンもありだね」
にっこりと樹は俺を見て微笑んだ。
予想外の答えに樹を見つめた。
「なに?駄目だった?」
「....いや、悪くはないんだけど...優しすぎるな、樹」
「....そんな事ないよ?」
「で、もしカフェで時間潰してもらってる間さ、たまにLINEしたりして、相手気遣って、着いたらお前がお勘定、払うんじゃない?」
「うん...そうしたい、駄目?」
俺は顎を抑え、思案した。
「ううん....たださ、寝坊して、遅刻したのは確かに悪いよ?でも、そんなに樹がしてやる必要は無くない?」
樹がきょとん、となった。
「でも、大事な待ち合わせだもん...俺が悪いんだから、それくらい...」
「樹、優しいのはいいことだけど。その樹の純粋さを利用したり、騙されたり、てことも有り得るよ。樹、以前よりは減ったけど、謝る癖もある、たまには怒ることも大事」
「....怒る」
「あんま、怒んない?」
「うん....あ、でも、たまに。バス乗ってて、渋滞して、なかなか進まなかったりすると、イラッてする事ある....でもさ、怒っても、渋滞が無くなる訳じゃないし、疲れるし」
「怒ると疲れる?」
「うん」
「謝ってるときは?疲れない」
「うん、慣れてるからかな?」
また、樹は斜め上を向いて、たまに小首を傾げ、答えた。
「樹」
「ん?」
「喜怒哀楽があって、それでいいんだよ。そんなもんだから、人間って。でも...樹、なんか不思議だな....」
それ以上、掘り下げ無かった。
笑っている樹を見ていたいから。
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