もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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「凄い、意外だね、俊也が本好きとか」

本棚に並ぶ背表紙を眺め、たまに手に取りながら背後に座る俊也に言う。

「良く言われる。樹はどっちかといえば映画派っぽいな」

「うん。でも、本も面白そう...あ、これ、知ってる」

「どれ?」

俺の背後に俊也が立ち、その近さに思わず、動悸が早くなる。

「ああ、ベストセラーになった奴な」

「....うん。テレビで紹介されてた」

不意に沈黙。
暫くし、俊也が空気を割った。

「....良く、テレビ観るの?樹」

「テレビ?んー...あんま観ないかも。面白そうなドラマはたまに録画したり...あ、特番の映画とか」

思わず微笑んで振り返り、俊也を見ると目が合った。

「....そっか、良かった。でも、樹らしいな」

「え?そ、そう?」

....良かった、て、なんだろう....。

「その本、読みたかったら借りてっていいよ、ただ、ティッシュは必須」

「....ティッシュ?」

「相当、泣けるからさ、俺、ティッシュ一箱無くなるくらい泣きながら読んだもん」

「えーっ、俊也が?」

「悪いか」

突然、脇腹をくすぐられ、身を捩った。

「や、や、くすぐったいって!」

泣きそうになりながら笑いが止まらない俺を面白がり、くすぐりまくる俊也。

「も、もう、やめて、辛い」

「辛い?」

「うん、笑い止まんないんだもん」

笑いながら、目尻の涙を指で拭う。

「じゃ、これも借りてっていい?」

「いいよ」

そうして、二冊の本を借り、俺は自室に戻った。
自然と頬を緩ませながら...。

「よいしょっと」

一旦、キッチンに立ち、温かい紅茶を淹れて、カップをテーブルに置いてから、読書を開始。

まずは昨夜、俊也と観た映画の原作の小説から....。

たまにカップの紅茶で喉を潤しながら、小説を読んだ。

俊也の説明通り、若干、映画とは違う。
けど、それはそれで、また面白い。

気がつけば夢中でページを捲り、目を走らせていた。

と、不意に部屋のドアがノックされた。

「あ、もしかして、俊也かな」

すっくと立ち上がりドアを開けると、そこに居たのは俊也では無かった。
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