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愛しい時間
しおりを挟む一旦、部屋に戻り、シャワーを浴び、私服に着替えて、俊也の部屋へ向かう為に廊下を歩く。
初めて、俊也の部屋に行く...。
なんだか、緊張するし、でも楽しみな感じもある。
「手ぶらで良かったかな、購買部でなんか買って来てたら良かったかな」
再び、購買部に行くのもなんだし、俺は少し肩を落とした。
俊也の部屋の扉の前で、一度、深呼吸してからノックした。
オシャレなセットアップを着た笑顔の俊也が出迎えてくれ、釣られて、俺も笑顔を返す。
「コピーの手伝い、お疲れさん、樹」
「ありがと...手ぶらでごめんね?」
不思議そうに俊也が俺を向く。
「手土産忘れました、て奴?アホか。変な気、遣うなよ」
俊也に爆笑され、
「なに飲む?ミネラルウォーター、コーヒー、オレンジにコーラ、あ、ミルクティー買い忘れてたな」
「ミルクティー?」
「好きなのかな、と思って」
「ああ、うん、でも、ジンジャーエールとミルクティーだったら、ミルクティーがいい、て感じだから...オレンジがいい」
「オッケ」
思わず、俊也の部屋を見渡した。
大きな本棚に本がひしめき合ってる。
「....凄い本だね」
「ん?これでもだいぶ、減らした方」
「へえ...」
ありがと、とオレンジジュースの入ったコップを受け取り口をつけた。
緊張して、喉が乾いてたから、グイグイ飲んだ。
「お代わり、自由にいいから」
俊也がオレンジジュースの大きな瓶をテーブルに置いた。
「ところで、見せたいもの、て?」
小首を傾げながらコップを持ち、尋ねると俊也が待ってました、とばかりに微笑んだ。
「じゃーん!これ」
俊也が差し出した書籍のタイトルを目で追うなり、
「え!これ、昨日、観た映画の!?」
「そ、原作。さっき、図書館で偶然見かけてさ。チラッと読んだんだけど、映画より奥が深いし、映画にないシーンもあったよ」
「読みたい!」
食い入る俺に、俊也は嬉しそうな笑顔を見せた。
「最初、樹に貸すな、読み終わったら教えて」
「いいの?」
「いいの。でも、ネタバレは禁止な」
「うん!」
たった本、一冊かもしれない。
だけど、俺と俊也の距離を急速に縮めてくれた。
愛しい時間が過ぎていく。
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