もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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「こんな話し、告白前にしたくなかったんだけど...樹もさ、優しいから、きっと困惑して悩むと思うんだ。好きな人いるのに、てさ....」 

「....樹の性格なら確かにそうかもしれないな....」

「....豊、辛いよね、ね、気晴らし行かない?」

「気晴らし?」

「うん、カラオケでもさ」

やっぱり持つべきものは友、て奴かな、と互いに笑顔を見せた。

まさか、涼太は偽りの笑顔だなんて思いもよらなかった。

「ここ、カラオケも出来るらしいよ?」

そう言って、涼太が指差したのはラブホだった。

「は?なに考えてんの、お前」

「気晴らしって言ったじゃん?エッチしたらさ、気が楽になるかもよ?」

ニコッと涼太は微笑んだが、気乗りしなかった。

「お前、経験あんの?」

「経験?ないよ?」

「いいの?俺で」

「うん。豊がいい」

人がいないのを見計らって涼太が俺の手に指を絡めてきた。

ラブホで涼太とぎこちないセックス。

友人として好きではある涼太と...たまにその現実に思考がたぐり寄せられる。

「どしたの?豊」

「いや....お前、俺のこと、好きなの?」

「へ?う、うん。好きだよ」

ぎこちない涼太の笑顔に一瞬、疑問が浮かんだ。

「いつから?」

「あー、いつだっけ、忘れた」

「なんだよ、それ...てか、お前を抱いてもやっぱ、俺、樹が好きだよ...思い知らされる、お前を抱くと....」

「だったら!」 

涼太が満面の笑みで身を乗り出した。

「樹を忘れちゃうくらいエッチしよ!?どうせ叶わない恋なんだから、早く忘れて次、行こ!豊」

溌剌とした涼太が不思議だった。

俺のことが好きだと涼太はぎこちなく言い、俺は涼太を抱いても樹を忘れられない、と言っているのに....なんで、涼太は笑顔でいれるんだ...?

当時の俺は涼太の手のひらの上で1人、馬鹿みたいに涼太の言われるがまま、樹を見ると抱きたくなる衝動を涼太に託した。

樹も交え、勉強会のあの晩も、すぐ傍にいる樹に勝手にドキドキして、触れたくて、触れられなくて。

樹を思いながら涼太を抱いた....。
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