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しおりを挟むいざ、豊を部屋へ招き入れたものの...何を話したらいいのかわからない。
「あ、なんか飲む?豊....」
「や、いいよ、気を遣わなくて。入学して初めて入ったな、樹の部屋」
「....あんま、まじまじ見ないで」
「作りは同じなのに、やっぱ、樹の部屋、て感じ....あ」
豊の視線を辿ると、テーブルの隅に置いたままだった映画のDVD。
「樹、買ったんだ?もう観た?」
「まだだけど...前、3人で観る約束してたよね、映画館で」
「だったな...なあ、一緒、観ない?」
「え?」
「まだ、樹、観てないんだろ?俺もまだだしさ」
豊は勝手にDVDのケースを開け、セットし始めた。
「え、ちょっと待って、豊....」
慌てて俺はリモコンで一時停止にした。
「映画観に来たの?」
「....そうじゃないけど」
長い沈黙が息苦しい。
あんなに好きだったのに、豊との時間がこんなに苦しいなんて...。
「....あの時、俺が寝つけていたら、違ってたのかな?」
豊は答えなかった。
「それとも、起きた方が良かったのかな、でも、なんて切り出せば良かったかな...どう思う?豊」
「....俺さ、ずっと樹が好きだった。小学校の頃かな、意識しだしたの。中学になって、もっと樹が好きになって...涼太に相談した」
「....うん」
それは俺も同じだ。
「最初はさ、応援してくれてた。頑張りなよってさ。でも、いざ、告白しようと思っていた前夜にさ、涼太から言われたんだ。樹、好きな人いるんだって、諦めた方がいいよ、樹の性格から、絶対、悩むと思うし、て」
俺はテーブルに視線を落としたまま、豊の話しを聞いた。
「俺、すっかり真に受けて。失恋した気分になって、勝手に落ち込んで....それで」
「もういい」
豊の話しを遮った。
「それ以上、聞きたくない。涼太を悪者にもしたくない」
「....そういうとこなんだよな」
「....なにが?」
俺が顔を上げると、久しぶりに豊と目が合った。
去年まで、あんなにドキドキした豊の瞳なはずなのに、全くドキドキしない。
寧ろ、冷静な自分がいた。
「樹を独り占めしたくなる。可愛くて、優しくて、純粋で....」
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