もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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学校から寮に戻り、シャワーを浴びて間もなくして、

「樹、飯行こうぜ」

俊也が部屋を訪れた。

明日、明後日は土日で俊也は実家、金曜の夜。

俊也は食堂ではなく、中庭に続く重いドアを開けた。

「どこ行くの?俊也」

「いいから」

そうして、俊也は俺の手を引くと、一旦離し、寮を囲うブロック塀に飛び乗った。

「あ、危ないよ、俊也。それに門限....」

「ほら、掴まれ、樹」

差し出された手を握る。

「力弱えな、樹」

ぐっ、と俊也が引きずり上げ、二人でブロック塀の上。

「先、降りるから、俺に飛び乗れ」

ひょい、と潔く、俊也はブロック塀からアスファルトに着地したものの、高所恐怖症でおろおろする俺。

「ほら、ちゃんと支えてやるから降りて来い」

何度か深呼吸して、ブロック塀から飛び降りると、俊也が受け止めてくれた。

俊也の胸の中....。
不意に顔を上げると、俊也の優しい笑顔があった。

初めて俊也にドキドキした。
その瞬間、自分に嫌気がさした。

去年までは豊にドキドキしてた癖に。

「難しい顔して、どした?」

「え?ううん....」

俊也がニコッと微笑んだ。

「腹減った、なに食いたい?樹」

「え....外で食べるの?」

「毎日、寮の食事じゃ飽きるし、気分転換も大事」

俊也と並んで歩き出す。

俊也の行動力に改めて感心した。
俺には絶対、真似できない。

俊也がいるから、見ることのできる、夜の寮の外。

「俺の好きな店でもいい?」

「うん。この辺、詳しくないし、俊也に任せる」

俊也は小さな年季の入った感じの中華料理屋に入った。

「あら、俊也くん。また寮、抜け出したの?」

お店のおばちゃんとも顔見知りなんだ....。

「うん。てか、今日はツレも一緒」

おばちゃんは俺を目に留めると、

「いらっしゃい、何君?」

「あ、樹です。俊也くんと仲良くさせて頂いてます」

途端、俊也もおばちゃんも同時に一瞬、固まり、そして、同時に爆笑された。

「お前、それ、交際してます、て相手の親に挨拶する奴じゃね?」

「確かに、おばちゃんもそう思っちゃった」

俺は突然、恥ずかしくなり、真っ赤になった。
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