もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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桜が咲き始めた頃の出逢い。

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卒業式。

涼太とも豊とも、さよならだ。

「じゃあ、またね」

と涼太が手を振った。

豊も、

「またな」

と微笑んだ。

ようやく、呪縛から逃れられるかな。

涼太を責めることはしなかった。
あんなに仲良かったから、怖かったのかもしれない。

自然と離れていくのが一番、と俺は勝手に解釈した。

それが災いをもたらした。

晴れ晴れとした気持ちの高校の入学式。

離れ離れになるよう企てたつもりなのに、涼太と豊の姿があったからだ。

目を疑った。

「....豊の高校、受験したんじゃなかったの、涼太...。それに、豊も...せっかく頭いいのに、なんで....」

「えーっ、だって、樹がいなきゃつまんないじゃん」

「俺も親からうるさく言われたけどさ、こっちの方が部活も充実してるから、とか、テキトー言ってさ」

涼太も豊も笑顔だが、俺は頭ん中、真っ白だ。

「....意味がわからない」

「え?」

涼太が丸い目をし、呟いた俺を見た。

「....ごめん!」

俺は2人を置き去りにし、立ち去った、俯いたままだったせいで壁に額がぶつかった。

「....いってーな、チビ」

はっ、と顔を上げると、忌々しそうに俺を見下ろす、同じ制服ながら金髪の男子だ。

「す、すみません...」

「ちゃんと前、見て歩けよ、チビ。....じゃねーか、前を見て走れ?」

突然、難しそうな顔になり、小首を傾げる姿に小さく吹き出してしまった。

途端、

「笑うんじゃねーよ、チビ」

ようやく、162cmになったものの、チビには違いない。

「すみません」

慌てて頭を下げると、今度は笑われた。

「なんで怒んねーの?チビって言われて」

「え....だって、その...チビだから」

ふーん、と彼は俺の顔をまじまじと見つめた。

「謝ってばっかじゃ疲れない?たまには怒りなよ。ケースバイケースだけどさ」

きょとんとしたままの俺に続けた。

「俺、古閑俊也、1年。お前は?」

「....葉山樹、1年です」

プフ、と俊也が笑う。

「タメ口で良くね?同い年だっつーのに」

「え、あ、確かに、ですね」

これが俊也との出会いだった。
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