もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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休み時間、俺は1人、職員室にいた。

担任に志望校を変えたい旨を話す為。

2人と違う、自分の偏差値と大差のない、私立。

「まあ、お前の親御さんとも話さないとだけど、了解。にしても、どうした?張り切ってたろ?」

俺は苦笑いで済ませた。

暫くし、豊に呼び出された。

廊下の隅、

「樹、なんで志望校、変えたんだよ」

思わず、顔を伏せた。

たまに唇を見ては瞳を見ては、勝手にキュンキュンしていた自分が馬鹿みたいだ。

「樹」

豊が俺の肩に手を置いた。

咄嗟にその手を振り払った。
体が無意識に震えたから。

「樹?どうした?」

俺の顔を覗き込んでくる、大好きだったはずの豊の顔、今は背けたくなる。

「あっ!樹、いたー!探したよ!」

小走りに駆け寄ってくる涼太を見るなり、俺は豊を押しやり、その場を逃げた。

豊とも涼太とも話したくない。
顔すら見れない。

それからも涼太も豊も学校で俺に話しかけてくる。

卒業を間近に、2人を避けていたが、

「3人でさ、カラオケ行こっ、樹。豊も誘って」

気乗りはしなかったけど、集まるのはこれで最後、と、俺は了承した。

そして、土曜。

待ち合わせし、以前、3人で良く行ったカラオケBOXの一室にいる。

「樹、なに入れる?」
「樹、なに飲む?」

気を使ってくれているのか、2人がやたら聞いてくる。

俺を真ん中に左側に豊、右側に涼太がいる。

卒業したら、2人とは別の高校なんだし、と俺も気が楽だ。

「樹、いい香り。シャンプーなに使ってる?」

突然、隣の豊が俺の髪に顔を寄せ、尋ねてきた。

「すっげ、サラサラだし」

指で髪を掬われ、その瞬間、涼太が俺の肩を抱き、

「嗅いだり勝手に髪の毛、触ったり、やめてよ、変態」

ジェラシーを感じたのか涼太に引き寄せられる。

「変態ってなんだよ、失礼な」

「樹は純粋なんですー、下手に触ったりしないでくださいー、穢れちゃうからー」

「...まあ、それは認めるけど」

涼太に肩を抱かれたまま、固まった。

俺が純粋....?

「ほら、樹の好きな曲、入れといた!聞かせてよ、樹の美声」

満面の笑みで涼太からマイクを渡され、頭の中、クエスチョンマークを飛び散らせながら歌いきると2人から拍手された。

「やっぱ、樹の歌声、いいな」

「耳、塞いでてよ、豊」

「なんでだよ」

....やっぱり、2人、仲良いんだな。
痴話喧嘩みたい。

3人でいるのに、俺の孤独は耐えないまま、カラオケは終了した。
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