1人のαと2人のΩ

ミヒロ

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キッチンには拓磨の父が立っている。

拓磨の母は、書斎から幾つかの絵本を書斎から探し、結月に手渡した。

「良かったら、咲夜くんに読み聞かせしてあげて」

「あ、ありがとうございます、あ、あの」

「ん?」

「その、とても理想的なご夫婦ですね」

「そう?」

「はい」

「んー、私達には当たり前な事でよくわからないのだけど...お互いを尊重しているのは昔からね。高校から付き合っているから付き合いも長くて、お互い、良く知っているし」

「高校から!?」

「知り合ったのは中学なんだけどね」

拓磨の母がにっこり笑った。

「結月くんと穂高くんも、きっといい夫夫になるわ」

「あ、ありがとうございます...」

40代とは思えない美しさを持つ拓磨の母に結月は照れた。

「おはよう...」

拓磨と史哉が起きてきた。

「おはよう、拓磨、史哉くん。優磨はまだ寝てるのかしら、全く」

「遅くまで一緒にワイン飲んでたし、仕方ねーよ」

「あら、そうなの?二日酔いかしら」

拓磨と優磨もいつの間にか、一緒に酒を飲み交わす程、仲良くなっていた。

「出来たぞー」

「拓磨、悪いけど、優磨を起こして来てちょうだい」

「はいはい」

フランスパンを1本、購入してきた、という拓磨の父は、ガーリックトースト、シチュー、スクランブルエッグ、サラダ、という朝食を作った。

「幾らでもお代わりしていいからな。シチューとガーリックトースト、ああ、サラダも」

「いただきます」

ガーリックトーストを齧ると、サクサクしていて、風味も抜群で、とても美味しかった。

シチューはまだ肌寒い中、体を芯から温めてくれる。

「俺と史哉はこれから出かけるけど、結月はどうする?」

「んー...僕は咲夜と遊びたいし、大丈夫です」

「買ってきて欲しい物もない?」

史哉に尋ねられた。

「遠慮しなくていいよ」

「特に...」

「そっか、わかった」

と言いながら、ケーキでも買って来そうね、と拓磨の母はやり取りを見ながら微笑んだ。
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